ビヤホールとはいえ日本酒はおいてある

夜にビヤホールらしきところで
バイトをしているわけですが
久しぶりにいったりすると
新人のバイトくんがいたりいなかったりします。


そのなかの一人に中島くんという
大学生の男の子がいたとします。
というかいます。
彼は店長に


つかえない


と言われながら
厳しく言われたりやさしく諭されたりして
がんばっております。

ある日

店長が


あいつ自分でオーダーをうけて
すぐにもどってきたとおもったら
自分のだしたオーダーのチケットを長々と見てから
ドリンクをつくったのに
作り忘れてるのはおかしいだろ
おまけにビールを先にいれるし


と困ったもんだと言葉をもらしておりました。
私は確かにそれはそうだとおもいつつも
そのときはちょうど暇ですし
あんまり言わなくてもと
彼をフォローはしておきました。

彼が入ってから1～2ヶ月だったような気もするもので。


それから数分後
彼は私のところにとことこやってきて



「れいしゅ」ってなんですか？



と聞いてきました。
私はすぐに日本酒の冷たいのを思いおこしましたが
常識的に考えて飲み屋でバイトして
しかも彼はお酒は飲むらしいし
あえて冷酒ってなに？と聞いてくるのも
おかしな話
冷酒ではないのかな？と判断した私は
他になにかあるのだろうかと思案してしまいました。

ところが私には「れいしゅ」と言われて
ほかにおもい浮かぶ単語がみつからないので



日本酒の冷たいのを「冷酒」とも言うけど、それ？



と聞きかえしました。
すると彼は


あっ　そうかもしれません


と答えるので
お客さんに確認しにいってもらいました。
そうしてまた私のところにもどってきた彼は
ちょっとすっきりした顔をして


日本酒の冷たいのでした


と。

私はおもわず




おまえは何者だーー！



とさけんでしまいました。
そこへちょうど入ってきた店長がビクッとからだをふるわせ
私たちのほうをチラッと見たものの
そのまま客席のあるホールへでていきました。
彼はわかってんだかわかってないんだかよくわからない顔をして


すみません


と一言。
私も私で
なにをさけんでいるのだ
しかしおもわずでる台詞とはこうことか
と考えてふと
疑問がひとつわきでてきたので彼に



ここに入ってからどのくらい経つの？



と聞いてみました。
じっさいのところどうなのか
私は知りません。
彼は返答します。



えーと・・・もうすぐ6ヶ月くらいです。



私は

半年かぁ
半年もいるのになぁ

とおもいました。