美術モデルと山の手事情社

ちかごろ新しく副業をはじめました。

美術モデル

というお仕事です。
その仕事をしている子が
私の裸をみて


やれますよー


と言った一言を真に受けてはじめたのですが
山の手事情社時代の稽古を思い出してなりません。


ほんとうに、嫌なかんじです


いうなれば
二拍子という稽古があります。
それはある感情を心にたたえたまま
彫像のようにポーヅを
ポンポンとかえていくのですが
美術モデルは

20分間

そのままです。
5分休憩して20分間ポーヅ
基本的にはそれを繰り返します。
それなら楽なポーズをとればよいのですが
山の手事情社の刷り込みのせいで
なにかおもしろい形はないものか
また同じような形になっていないか
という思考が
どうしてもはたらいてしまい
稽古より甘くしたつもりの

こんなていどポーヅ

それが酷いありさまです。
20分を乗りきるには過酷すぎました。

安田め
こんなことを私に仕込みやがって

心の中で、
辞めたところの劇団主宰者に悪態をついてしまいます。

ただ幸いなのは感情はたたえなくてもよく
顔の表情もつくる必要がないことです。
そこはまったくの素ではないですが
ほぼ素です。


まあ、良しとしよう


そうおもっていたところ
とある学校の先生に


ふだん何をしていますか？


そのように問われ


役者です


答えると
ちょっと考えた先生は


じゃあ喜怒哀楽でお願いします


山の手の稽古そのものじゃないか・・・


とは心のなかの台詞です。
ちなみに表からでた台詞は


それくらいいいですよ


にこやかに、平然と、言ってみました。

そうして通常の稽古以上に
すべての毛細血管がぷちぷちする気がしました。

今後は表情を作りすぎるのは本当にやめようと思いました。

長い時間同じポーヅでいるとさまざまなことを考えます。
いま身体のバランスはどこでとっているのか
途中で腕の位置や表情がかわっていないか

そして劇団員にもやらせてみたい、とか。

まあ、私としては稽古でしたら遠慮しておきますが。

浅草のお土産といえば

仕事先の人が


浅草のおみやげー
みなさんで食べてください


といって
お土産の袋を置いて
先に帰りました。
私は


せんべいかなぁ
まんじゅうかなぁ
かみなりおこしかなぁ


なんておもって
仕事おわりに袋をあけると


東京ばなな



あ、あさくさって、東京ばなな・・・？


少し疑問符がよぎりましたが
おいしくいただきました。



浅草のおみやげには東京ばなな。

ということで

仕事先が更衣室のロッカーを新しくしました。

ということで新しいロッカーになるまえに
制服と仕事用の靴は残しておきますが
私物は排除されるのでキレイにしてくだいと言われたので

むしろ要らないゴミや私物をほうりこんでおきました。


するとロッカーの中身はみごとキレイになり
靴しかありませんでした。


制服は洗濯にだしたようです。
それはそれでべつにかまわなかったのですが
ベルトが消失しておりました。

確かにベルトは私物ではありますが
仕事道具です。
自費です。
ズボンはぶかぶかです。

ということで店長に
この事と次第を
丁寧に
そして
殺気をまじえつつ申しました。

店長いわく


あれ～ちゃんと確認したんだけど～


私は
捨てたな、こいつ
とおもいながら


どうしてくれるんですか


問いかけてみると


店長→いくらしたの？

私→１０００円

店長→ちょっと待って


財布をだして１０００円を手渡されました。
私は心の内で

言ってみるものだなぁ
５００円のベルトだったのになぁ
ありがたいなぁ

とつぶやきました。


そうして家に帰って
ベルトを買いに行くのも面倒だなぁ

と

押入れをあさってみると
色違いの同じベルトがありました。

ということで私はそれを使用することにしました。

ウェイティングリスト

ずいぶん前のお話です。

飲食店では満席になったとき
お待ちいただくお客様のお名前と人数を用紙に書きます。
お客様に書いていただくお店や
店員のほうで聞いて書くお店など
いろいろありますが
私の仕事先ではお客様にお名前と人数を聞いて
こちらで順次書いていきます。
そうして席が空き次第
順番にお名前を呼んでご案内します。

よくある話ではあると思います。

そんなよくある
満席になるほど忙しかった日のことです。

お待ちいただいているお客様が数組できあがりました。
店長が入口でお客様をあしらっていたのですが
他のお客様に呼ばれて入口を離れました。
そうしたところへ
空いた席の用意がととのえた私が入口へ来て
お待ちいただいているお客様のお名前をお呼びしようと思い
用紙に書いてある名前の欄をみると


カップル


と書いてありました。

私は
どのように
お呼びすればよいのか
どのような
特徴をもっているカップルなのか
どうして
名前がカップルになってしまったのか
少し逡巡したものの
とりあえず入口をみると
カップルは１組だけでした。

私は店長に対してこう思いました。


運のいいひと


そこへ店長がもどってきたので
私はにこやかに
そして無言で


カップル


という字を指で軽くたたきました。
店長は子供がいたずらをしてバレたときのように
はにかんだ微笑みをしました。
いい歳をしたおじさんにそんな顔をみせられても


うれしくありません。


それはそれとして
さすがに

カップル様

ともお呼びできないので
目の前に立って声をかけ
席にご案内いたしました。

席の御予約

飲み屋でのお仕事のことです。



お客様が入店してきたので


いらっしゃいませー


と出迎えたところ


予約したいんですけど


入店をしてきたお客様がおっしゃるので
メモ用紙をとりだし


いつですか？


尋ねると


今日です


わかりました
何時でしょう？


お客様は


今です


なにを言っているのか私にはよくわかりませんでした。
いったい私はなにを試されているのだろうかと思いながら


今というのは・・・今、入りますか？


お客様は小さく


あ・・・、


と息をもらすと


はい


と答えます。
私は素直な方でよかったと胸をなでおろし
お客様を席へご案内致しました。


何秒後であろうと空席あらば
ご予約を承る所存です。

私の給与

先月の中旬あたり。

蕎麦屋のバイトをはじめてから
三回目の給料の受け渡しです。

ここは給料袋に入れられたお金を直接手渡しされます。


若い社員さんから

一応自分でも確認しておいて
違ってたらその日のうちに言わないと
社長がうるさいから

初回の時に言われていたので
とりあえずチェックはしております。

そうはいっても過去様々なバイトをしてきましたが
そうそう間違えるようなことはなかったので
あと2～3回自分でチェックしたらそのままでよいかな
と思っていました。

しかしそうは問屋が卸さないのです。


今回渡された給与明細とお金をみてみると

10時間マイナス
そのうえ交通費無し

ずいぶんな間違え方をするものだと
若い社員さんに即刻訴えると


えー？ちゃんと見ましたぁ？


そう言って手書きの出勤表と給与明細を見比べます。
確かに私の主張が正しいことが証明されると


すみません…

一言言ってから


昨日も他の人のが間違ってて言いづらいんだよなぁ


ひとりごちです。
私は


知ったことか


心のなかで思うと同時に
まさかというおもいが湧き起こり
若い社員さんに一言伺います。


事務員とかそういった人はいるんですか？


すると彼は


社長がやってますよ


そうかぁ
社長がやってるのかぁ


私はおもいます。


社長も一人でいろいろやって大変です


そうして仕事後に
若い社員さんが差額分をレジからだして
私に渡します。

そこで社長が


石原、往復の交通費おしえて


これで私の交通費を教えるのは三度めです。
この様子だと毎月聞かれそうな気がしました。

そろそろ

昼のバイトが蕎麦屋にまわされてから
約一ヶ月経ちました。

初日
蕎麦屋の社長がシフトやなんかの
もろもろのことを話すようなことを言っていたので
早めに行ったらまだ社長はおらず
店長と名乗る人がいたが
入社して三日めでなにもわからないと言い
蕎麦を打っていた調理人は溜息をもらしながら
ほとんど身動きもとれず
死人のようになっており
誰もが私を不審の目で見るばかりでした。

どうやら私が今日来ることは知らされていないようです。

出勤の時間になっても社長は来ません。
とりあえず社長が来るまで座って待っててと言われ待ちます。
出勤時間から20分後。
やっと現れた社長は

あれっ？今日からだっけ？

おっしゃります。
そうしてなにも話し合うこともなく一ヶ月が経ったのですが
やっと時給や交通費、給料の支払い方法などを聞けました。
それまで忙しい時間にしか来ないので
話を聞くチャンスがなかったのです。
なぜか社長のほうからは何も言ってこなかったもので。
そろそろ私も聞いておかねばならぬかと様子をうかがっておりました。

蕎麦屋の社長は
仕事ができるようになったらすぐに時給はあがるから
と言っておりましたが
私をこの蕎麦屋に放り投げた中華屋の社長も
同じことを言って時給はあがらなかったので
期待はせずにいようと思います。

食の奴隷

昼間のバイト先は中華屋さんです。
私はそこで
どうもいいように扱われています。

最初はふつうにやっていたのですが
去年末から姉妹店へまわされ
とおもったらまた戻され
すると今度はまたまわされ。

めんどうくさいが
それくらいはあることかとおもっていたら
今月から蕎麦屋へ。

中華屋の社長の友人の蕎麦屋の社長のところへ。

人身売買され中です。

私は
次の賄いは蕎麦かぁ
といまから想いを馳せています。

もらいもの

三月初旬
バイト先の中国人が旧正月から帰ってきました。
彼はお土産のお菓子を買い
さらに缶コーヒーをひとりひとりに買ってくれました。
なんて良い人なのでしょう。

彼とは帰りの電車が一駅だけいっしょなのですが
帰りしな


石原さんにだけ別にお土産です


と言って蚕のような
糸がもわもわしたような
お菓子をいただきました。

なぜか彼に好かれています。

私も彼もホモではありません。

さて私は帰ってからその品を見てみると


20121207


という番号を発見しました。

2012年12月7日？
まさか賞味期限が。
そんな馬鹿な。

不吉な予感が満載です。
よく調べようと周辺を詳しく拝見します。

生産日期（年/月/日）

と横にあります。


あー　作った日かぁ


少し安心です。
それにしても一年以上経っているけど
大丈夫かしらとおもっていると

日付の下に


保？期　：　12？月


？は中国語だったので
ここに正確な漢字を記載できませんが
どう考えても


保存期間12ヵ月


としか思えません。
現在2013年3月。
彼は

すごくおいしいですよー

と嬉しそうに言っておりました。
どうしたものか。
いかんともしがたいです。
私はいまだにそのお菓子の封を
あけていません。

いつ

あけようか

なぁ

4日だけ

昼間のバイト先でのことです。

先月
店長に


ごめんなさい
来月の石原さんのシフトは4日だけです


と言われ
私はそろそろここのバイト先とも
さようならだなとおもいました。

そうして今月4日に出勤して
今日は誰がいるのだろうかと
シフト表を見ると

私の出勤がありません。

まわりにいた
バイトの人や社員や社長に確認してみても
私の出勤日ではありませんでした。

店長に文句を言おうにも
この日は休みになっております。
社長は私に言いました。


店長に文句を言って


私は


あーーーー


ってなりました。
そして出勤日を確認して
その日は帰りました。

翌朝

バイト先から着信がありました。
きっと店長です。
私がでないでいると
留守番電話を残していきました。


石原さん、出勤日の確認です。
今月の石原さんの出勤は4日だけです。
また電話します。


私はそれを聞いて

もしや

と、とある疑念が生じました。

その日の夜
またもや店長から電話です。
私はとりあえず電話にはでません。
留守番電話を聞きます。


もしかしたら石原さん勘違いしてるのではないでしょうか。
今月の石原さんの出勤は○日、○日、○日、○日の4日だけです。
2月4日と間違えたんじゃないでしょうか。
出勤日を確認したいのでこの留守電を聞いたら連絡ください。


私は

とりあえず謝れ

そうおもいました。


来月の出勤は「よっかだけ」です


と言われたら
2月4日だけ
たった1日だけの出勤だと思ってしまう
私がいけないのでしょうか。

「4日だけ」と「4日間だけ」では

大きく違うと私は思うのです。
私は返信をせずに翌日出勤すると
店長に言いました。


ふざけんなと思いました。
留守電聞いたら謝りもしないし。


すると店長は笑いながら

ごめんごめん
4日間って言えばよかったのかな

とおっしゃります。
私は次のバイト先はどこにしようかなぁ
とおもいました。