日常においての珍語

仕事です。
葬儀の花屋さんにはいりました。


その日は
20代中頃の女の人が担当でした。

トラックに
花や道具を積んで
出発です。

今回は高速をつかっても
1時間30分はかかる遠隔地におもむきます。


私は運転はしません。


会社をでると
担当の彼女は
会社の文句を言いはじめました。
私は派遣できているので
同調しすぎるのも
かといって
諭すのも
どうかとおもいながら
話に乗ったり乗らなかったりです。

すると
私の相槌が功を奏したのか
彼女はますます文句をつのらせ

うちの社のやつらは頭が悪い

と言って



クソが

カスめ



口からこぼれます。
お上品な私は
映画やお芝居のなかでしかきいたことのない言葉に
感心しながら

クソ
カス

をかみしめます。

信号でとまって


クソがぁ
カスどもがぁ


高速でとばしながらも


クソっ
カスッ


トラックを走らせながら
助手席にいる私のほうをむいて


うちカスばっかりだから


そして前をむいてくれとおもう私。



憤懣やるかたなく愚痴がでるのは誰しもありますが
日常会話にこうも

カス

という言葉が連呼されるのは
ひじょうに新鮮でした。

日ごろ聞くカスといえば
たまにですが


天かすです。


私の日常において

クソカスは未だ聞きおぼえがありません。





そんな彼女に
どんな映画が好きかきいたところ


ファンタジー


との答えをいただきました。

私は


ファンタジーっていいですよねぇ


といった返答をした次第です。

目をあわせたら

大震災の影響で
都知事選はやっていないのかとおもわれるほど
しめやかにおこなわれました。
そのうっぷんを晴らすためか
のどぼとを過ぎたのか
区議選はだいぶさわがしいです。
道をあるけば立候補者。
たいした繁殖力です。


そんななか
私が自転車でバイト先にむかっていると
曲がり角から例の声が
スピーカーをとおしてきこえます。
私はちょっと離れて
やりすごそうとおもいました。

そうしてでてきたのは
自転車が三台
その後ろに
選挙カーが一台です。

目をあわせたら・・・やられる

そうおもって
通りすぎようとしたとき
先頭の自転車のノボリが視界にはいりました。
ノボリには


本人


と二文字。
大きく書かれています。
私はふいをくらい
おもわずふきだしてしまいました。

と同時に

私は本人さんと目があいます。
とっさに会釈をする私。
そこへすかさず



ありがとうございます！



追うようにスピーカーから



ありがとうございます！



逃げだしたい私


けれどもう一度会釈をする私



視線をそらして
けっしてふりむくまいと
自転車をこいでいきました。

ここのところの事情

最近のことです。



パソコンをあつかっている会社

IT

と申せばよいのか
そういったところにつとめている友人が
年棒20％さしひかえられたそうです。
地震の影響です。
その影響は彼の妻にもひびいています。
地震が恐いと言って

ひとり

実家の姫路に隠居して一月経ちます。
東京にプレートがある以上
地震はつきものです。

震災別居は

永年つづくかもしれません。





別居といえば
山の手事情社の研修生のころの同期が
去年結婚したのですが
いまだに同居せず
結婚と同時に別居中です。
その彼もそろそろ妻らしき人と
いっしょに住むようです。
彼の妻は上尾で働いていたのですが
結婚して私の友人と住むために
東京勤務を希望していたようです。
そうしていよいよ転勤が決まって


牛久


彼の家は小金井です。
東京は小金井から茨城の牛久へ。


遠距離ワークで半同居


二人で過ごす時間はかぎられているようです。





遠距離ワークといえば
同じく山の手事情社同期のもうひとりの友人は
小金井の彼の妻とは逆に
仕事場まで
自転車で30分
電車で15分
くらいの近距離に
マンションを購入しました。
場所は白金高輪です。
どれだけ小金持ちぶりをしているのか
つい先日
初めて彼の家をおとずれました。


外観

やけに高い

入口

エントランスには

受付嬢

と

ミニショップと書かれた購買所

そこを抜けた1階には

シアタールーム

＆

メールルーム


エレベーターは4つあります。

ふたつは20階まで
もうふたつは21階から35階まで


私は


折れる
こんな細長いの
折れる


心のなかで耳かきを想像しました。


彼の部屋は11階です。

床はカーペット
廊下は深として静か
ホテルにきているようでした。


その日


私は彼の部屋に泊まりました。
ウォーターベッドは
腰にやさしいことがわかりました。




最近のことです。

facebook

去年のことです。


声優やったり
役者やったり
演出とか脚本とか
やりながら
鉄拳さんとか鳥肌実さんとか育てだり
桜塚やっくんにスケバン恐子というキャラを提供したり
芸能活動をはげんでいるIKKANさんから


facebook


のご案内をいただきました。

なんだかよくわからないまま
登録してみたのですが
私の認識としては


mixiのようなもの


という判断をくだしました。
やりかたもよくわからない上
面倒くさそうなので
解除しようとおもったところ
やりかたがわかりません。

ときどき

あいさつや
友達リクエストみたいなのが届いたよ
といったメールがきます。

facebookはもうやる気が
海抜2000Mくらいなので
見もせずにそのまま削除しているのですが
そんな私の地盤沈下した心持ちを知らずに
お友達になろうとリクエストをおくるお友達に


申し訳ないなぁ


とおもって
やはり削除します。


facebookを解除できる日を
胸にいだき


呪いのfacebookと命名します。

支援物資

私の研修生のときの担当である
ブッチこと岩淵さんは
今回おこった東北大地震時
宮城県下にて演劇ワークショップを
展開中でした。

避難所に数日居候してから
東京に帰還できたわけなのですが
さくじつ
その岩淵さんがあちらの方々から
支援物資の要請をうけました。
メールにて送られてきた
欲しいものリストに書かれた物資を
山の手事情社劇団員と関係者一同で
送ることになりました。


そこで本日
稽古があるので
私はいくつかの物資を
稽古場にもっていったところ
まだ収集するための箱が用意されてなかったので
空いているおおきなクリアーボックスに入れ
Ａ４判の白紙の紙におおきく



「支援物ッち」



と書いて貼っておきました。

それからしばらくして
劇団員がぼろぼろやってきました。

岩淵さんもやってきます。


すると


岩淵さんはクリアーボックスのおいてある部屋にいき
うろちょろしだしました。
これから集まる支援物資を保管できるものはないか
物色している模様です。
けれどもすぐに
支援物ッちボックスを発見。
岩淵さんは観察します。
私は横目で見ます。
そうして
見ないふりをしてとおりすぎました。


稽古がおわると

安田さんがなにか報告などある人いますか
なければこれで解散します

というようなことを言うと
岩淵さんは元気よく

はい

と手をあげました。

支援物資のご協力のお願いのことでした。

岩淵さんは


倉庫に支援ぶっちと
書かれたクリヤボックスがあるので
そこににいれてください


と言いました。

みんなは笑いました。

果たして岩淵さんは
私が書いたことを
知っていたかどうか
わかりません。


けれども私は


犯人は私です


無言のままに懺悔しました。