いしころにっき

石原石子の日記です

店内素通り事件

2017-02-25 19:56:30 | 知らないひと
仕事にいく途中のことです。
時間がそこまであぶないわけでもなかったのですが
なんとなく
すこし近道をしようと
洋服屋のなかを素通りしました。

そのときに

ちょっとお洒落な柄のコートをマネキンが着ているなぁ
いったい値段はいくらだろう

そうおもって
手をかけたところ
マネキンが振り向きました。

それはお客さんでした。
性別は男性のようです。

お互いにドキッとして
顔を見合わせ

私は


すみません、間違えました


言葉を発してそそくさとその場から遠ざかりました。


常日頃から気をつけて過ごそうとおもっているのに
次回から
マネキンと人間を間違えないように
しないといけません。

近況です

2016-09-01 14:03:28 | 知らないひと
さいきんの話をします。


お能の稽古にいく道すがら
強風が吹きつけ
おじさんが私の体にもたれかけました。

いろいろとふんばりました。


おじさん・・・


腰がヤバイ期間に
なんとかしようとさまざまなことをしました。
そのひとつとして
都内にある温泉銭湯にいきました。

中身が黒湯と黄金湯の2つの温泉からなる銭湯です。

もちろん料金も普通の銭湯と同じです。
気に入ったのと腰のために通います。

私は黒湯と黄金湯を交互に入浴します。
黄金湯に入ったとき
真正面に恰幅のよいおじさんが温泉につかっていました。
私はおじさんと正対しています。
視線を合わせるとはずかしいので
すこしズラします。
それでもおじさんは視界にはいります。
きっとおじさんも私のことが目にはいっているはずです。

ま、それくらいはよくあることと
気にしないでいると
おじさんはおもむろに

鼻をほじくりました。

そして
ほじくられたものを黄金湯に溶かしていきます。

このお湯はおじさんの鼻くそ成分で成り立っているかのように
まるで日々の業務をこなすかのように
私などいないかのように

三度

くりかえし

でていきました。

その数日後
私の腰はよくなりました。



療養・・・


今回のはなんだかいろんなことがひどかったです。
突如発生した頭痛からの
腰痛からの
耳鼻科。

最後は耳に膜ができたような感覚になり収束をむかえました。

現在はすべての機能がもとどおりになったのですが
耳が不安だったので耳鼻科にいきました。

知り合いの方に良い耳鼻科として
教えていただいたところにいったのですが
ものすごい静寂と待ち人ひとり。

院内はとても清潔だったのですがなんだか侘しいです。

名前を呼ばれて入室すると
ゆったりと落ち着いて丁寧で
やさしい感じの女性の先生でした。
先生にいままでの経緯を説明して
もう治ったのですが不安なので念のためきました
というようなこと伝えると
両耳の中を覗かれ
聴覚の検査をするのでこちらにと
小型の電話ボックスのようなところに閉じこめられました。
イヤホンをして
音が聞こえている間はボタンを押していてください
とのことです。
正面には長方形の硝子窓があり
目の前にはさきほどの先生が座っています。

でははじめます

助手の方が扉を閉めると
音が鳴ったり止まったり
大きくなったり小さくなったり
しかもそれが忙しなく
先生はとても真剣に機械を操作していました。

けれど問題はそこではなかったのです。

硝子窓のむこうで先生が
音響さんやDJの人が扱いそうな機械のボタンやフェードの
上げ下げやON・OFFしています。

そうなのです。

音が聞こえていなくとも

まるわかりでした。

私は目を逸らして必死に音に集中します。
けれどわずかに視界にはいる先生の手元が気になって仕方がありません。


まるでDJのように
それでいて真剣に
先生はスイッチを パーンッ
ボリュームを ヒュイーンッ
緩急をまじえながら操作します。

私は先生の手の動きでいま音が鳴っているかどうか
どうしてもわかってします。
けれどもそこをなんとかこらえ

私も必死になって

いまの手の動き
きっと間違っているかもしれないけれど
自分の耳を大切に
聞こえたとおもう
耳を信じて
ボタン
押す
外の世界は絵画
動く絵画だ

それは私と先生の戦いでした。



そうして最後の音を鳴らし終えると先生は
満足した表情でひとつ大きくうなづいておりました。


検査室からでて私を外の椅子に座らせると
先生は機嫌よく

全然問題ないですね
よく聞こえてます

とおっしゃいました。
私はなんだかよいことがあったような気分になりましたが
どこまでが耳で
どこからが目で
音をひろったのかよくわかりませんでした。

とりあえず今回は私の耳は、健全のようです。


自転車屋さんのおすすめ

2015-02-05 17:15:20 | 知らないひと
このまえのお話です。
自転車の空気が徐々になくなっていくので
少し遠いが安いお店にいきました。
お店にはヒゲをはやしたおじさんがいて油まみれの作業着をきて
いそいそとしております。
昭和初期からやっていそうなたたずまいですが
タイヤと中のチューブ、二つを交換しても2800円です。


うちは安いから。
他じゃこんな値段でやってないよ。
タイヤに空気いれるのもサービスするから。


というわけで
朝だして仕事帰りに夕方とりにいくと


タイヤに空気いれといたから。
サービスだから。


そう言いながら自転車をわたされ
なにが原因だったか聞くと


よくわかんないよ。
中のチューブはへにょへにょしてたけど。
まあ、うちはタイヤに空気いれるのサービスしてるから。
うちが一番安いからまた来て。


なんだか心もとない気がしましたが
とにかくおじさんのおすすめは



空気入れ



というのがよくわかりました。
しかし、タイヤとチューブ交換をして
空気を入れるのにお金をとる自転車屋さんがあるのだろうか。

きっと出会って日の浅い女子

2014-04-22 23:01:19 | 知らないひと
先月のことです。
ファーストフードにはいってご飯を食べていたとき
隣りに二十代後半とおもわれる女子が4人すわってしゃべっておりました。
よくしゃべるので気になってしかたがありません。
最初は血液型の話をしていて


あたしA型とはどうしても気が合わないのー

A型って一度自分のなかで理屈ができあがっちゃうと
絶対にそれに従おうとするよねー

そうそう絶対ゆずらないの

この4人は話しやすいよね

みんな何型?

あたしB

あたしO型

あたしA

あたしもA型

えーO型かとおもってたー

でも二人は話しやすいよねー


A型が二人いるのが判明いたしました。
お互いの血液型を知っての会話かとおもっていたら
そうでもありませんでした。
しかも会話はすすみます。
今度は兄弟姉妹の人数に話はかわります。


あたし弟が一人いるの

そうなんだー、どうりでしっかりしてるとおもった

あたし2番目ー

2番目も案外しっかりしてたりするよねー

でも一人っ子はあんまり好きじゃないなぁ

うんうん、すぐあまえるよね

ちょっとずるい感じあるー

○○ちゃんは?

あたし一人っ子


………


一人っ子いいよねー

うん、いいよねー

いいよねー


同じ過ちをなぜか繰り返します。
しかも今度は切り返しがうまくいかなかったようで
無言の間のあとしばらくのあいだ

いいよねー

だけでした。
私は、いいよねー、以外の言葉がいつでてくるのか
本を読むふりをして長いこと待ちつづけることになりました。
私のfacebookの「いいね」がこのような「いいね」でないことを祈ります。


さてそこで私は
ありがちではあるがなかなか生で聞くことのできない設定を
みごとに再現してくれるのはありがたいことだとおもいましたが
気が散るので場所をかえさせていただきました。


その後、4人の女子が末永くおつきあいできたかどうか
もし、できたのなら幸いなことだとおもいます。

愛すべきひと

2011-09-13 22:32:08 | 知らないひと
昨夜
電車にのっていると
目の前にうなだれて座っている男が
半眼をひらいて
死んでいるかのようにしているかとおもうと
とつぜん目を見開き
ひゃっくりみたいな
痙攣を音にしたような
息をひゅっと引いた声を発していました。

私はこの人死ぬんじゃないかとおもって
目を伏せがちに見守っていました。

何度も何度も


ひゅっ ひゅっ


そのたびごとに


目をカッとひらいて


ひゅっ


という声がでます。
私は

いつ死ぬんだろう
死んだらどういうリアクションをとったらよいだろう
そのまえに私が犯人ではないというアリバイはつくっておかなくては

と考えていると
彼はポケットから携帯をだし
電話をかけました。


誰がでたのかはわかりませんが彼は短い言葉を相手に伝えます。



死ぬ・・・



死ぬ・・・・・・


私はいよいよ死んでしまうのではないか
それとも最期の言葉を告げて自殺でもするのか
人ごみのそれなりにある夜の電車内で
どうするのだろうと彼の言葉を、表情を、
注意深く見詰めます。
渡井が見守るなか
彼はみっつめの台詞を電話の相手に伝えます。




愛してる・・・




私は死にかけました。

彼は電話を切ります。
私は動きゆく夜の町を眺めます。


ああ ステキな夜ですね。
私ももうすぐ最寄駅。
マイ・スイート・ホーム。
アイ・ラブ・阿佐ヶ谷。


彼はひとつ手前の高円寺で降りました。
酔っぱらっているのでしょうか。
足取りはおぼつかなく
無事に帰れるとよいですね。

おもいました。

AKB-48

2011-01-29 23:05:51 | 知らないひと
迷惑メールです。
まあ、いつものことです。


私の携帯のメールは
最初、ひらかなくても4行くらいは
文章が閲覧できるように設定がなされています。


アドレスをみると
アルファベットの羅列です。
いつものように
迷惑メールがきたと
おもいました。


ひらくまえに
冒頭の文章を読んで判断します。



43歳みき
子供はどこかにあずけて
あそびませんか



そういった感じの内容です。

消そう

そうおもいました。
ところがアドレスにもう一度目がいきます。


AKB-48・・・


43歳のみきは
アキバ48でした。


こんなところにまで
AKBがはびこっているなんて

とおもいつつ
とりあえず
消去しました。

JR線の埼京線

2010-11-04 11:25:05 | 知らないひと
お仕事の帰りのことです。
埼京線の電車にのって本をよんでいると
高校生が5~6人はいってきました。

彼らはよくしゃべります。
お菓子を食べます。
イヤホンを
仁王立ちになった二人がわけて聴きます。
車輌の一画を支配しました。



一人の男の子が


俺やべぇ
JR線の切符買っちゃった
これ何線だっけ


と言います。
すると他の高校生が



これ埼京線だよ


どうしよう
JR線の切符買っちゃったよ


お前バカだなぁ
なんで埼京線の切符買わねえんだよ



そこで他の高校生が



改札で駅員に言えば大丈夫だよ
金払ってんだから



どうやらことは解決しようです。
しかしながら私は


埼京線はJRなのに


そう思ってしかたがなかったです。

君の名は

2010-10-17 20:13:42 | 知らないひと
山の手事情社には年に一度
納会という催しがあります。

毎年年末あたりに
基本的には
最若手劇団員と
旧人という
ベテランの劇団員が組んで
遊びの企画をするのです。


今年は

私と明香と恵さんと浦さん

この四人です。


浦さんの発案で
今年は二泊三日で
どこかへ行こうとなりました。


そこでまずは
とことん安いところをさがします。


そのなかで
私がさがしだした
キャンプ場が候補にあがりました。


そこはとても声の高いおばあさんが
電話にでるところでした。


ネットにそのキャンプ場の情報が
ある程度のっているので
確認もふくめておばあさんに質問をすると


そう書いてあるならそれでいいとおもいます


と答えます。
ネットに書いてないことにかんしては


よくわからないですねぇ~


らしいです。
なにもかもがはっきりしません。
そうして一度電話を切りました。

数日後

本格的にそのキャンプ場が
決定しそうな色合いが強くなり
電話をしました。

そのなかで
寝具に関する質問をしたところ


担当者が出張にいっているので
わからない


ということでした。
いたしかたないので
いつ帰ってくるか聞きました。
おばあさんは答えます。


ちょっとよくわからないねぇ


私にはおばあさんが
電話番をしていることが
よくわかりませんでした。


それはそれとして
とりあえず担当の方の名前を
聞いておくことにしました。

おばあさんは


イワタですぅ


甲高く答えました。



一週間後


私はあらためて電話をしました。


できればおばあさん以外の人がでないかと願いつつ
電話口にでたのは



おばあさんでした。



おばあさんはあいかわらず
超音波かとおもうほどの高い声です。


これはもうどうしようもないとおもいましたが
それでも担当の方がいらっしゃればと

私は聞きます。



イワタさんはいらっしゃいますか?




はい、イワタですぅ




おばあさんは答えます。




おまえもイワタかー!




私は心のなかで叫びました。


家族経営とはおもっていましたが、しかし。

私は私の叫びの余韻を残しつつ
寝具担当のイワタさんがいらっしゃるか
聞いたところ



不在。



夕刻の六時ごろには帰るかもしれないとのことでした。
その時間では私は稽古なので
それならばと
一抹の不安はありながらも
寝具に関する質問を伝えておいてもらうことにしました。

けれども
不安は一抹どころではなかった私は
次の日にさっそく電話をしました。


するとでたのは


おじさんでした。
しかも話がしっかりしています。
私はやっと話の通じる人に出会い

砂漠のオアシス
真冬の暖炉

そう感じました。

いままで得られなかった回答を
きちんと答えてくれます。
しかしながらこのおじさんも
寝具担当の方ではありませんでした。


いたしかたなし。


でもいいの
おじさんあんたがいてくれて
ほんとよかったよ
私は幸せだよ


おじさんは丁寧にも
担当の方に聞いておいてくれる
というのです。

ふつうのことがありがたい世の中です。


そこで私は
おじさんのお名前をちょうだいしておこうと


あ、お名前をうかがってもよろしいですか


と聞きました。
おじさんは答えます。




イワタです




私は下の名前を聞くことはできずに
電話を切りました。

昌美のバイト先の彼女

2010-05-29 01:19:02 | 知らないひと
昌美のバイト先の同輩の女の人が
今月いっぱいで辞めるそうです。

同輩の彼女は
芸人をめざしているそうです。


同輩の彼女は
お笑いライブの次の日は
休みたがります。
バイトの出勤を
交代してほしいとのメールがきて
昌美がオーケイの返信をしても
同輩の彼女からの返信はきません。


一事が万事
天真爛漫な対応をみせる
同輩の彼女がこのバイト開始から
二ヶ月を経て
ついに
辞めます。



辞めるにあたって
大阪にいるお父さんが
たおれたらしく
実家に帰らなくてはならないそうです。


つまづいてたおれたのか
しおらしくたおれたのか
お金を拾おうとしてたおれたのか


どのようにしておたおれになったのか
そのたおれ方は知りませんが
お父さんは大阪で
道頓堀とかある大阪で
おたおれになったそうです。


昌美は同輩の彼女のいままでの行状をかんがみて
秘密裏に調査をおこなったらしく
私に報告することには


同輩の彼女がお父さんを看にいく期間に
東京でそこらへんのお笑いライブに
出演することが判明したようです。



どうやら同輩の彼女は


東京から大阪でおたおれになっているお父さんに
笑いを届けたいようです。


たくましく生きていってほしいものです。



そんな彼女は
ついせんだって
昌美が代わりに出勤できないと知って
たおれたお父さんをおいて
大阪から
一日だけ
出勤すると言ってきたそうです。
一日働いて7000円ほど
しかも
バイトがいらないくらい暇な会社へ
大阪のお父さんをおいて
申し訳ないから
一日だけ
出勤すると言ってきたそうです。


どうやら

お笑いライブはなくなったようです。


たくましく生きてほしい
たくましく
たくましく

生きているのだと

おもいました。

ホーム

2010-05-19 01:25:35 | 知らないひと
今朝稽古にいく途中
電車が駅について
扉がひらくと
非常ベルが鳴っていました。
ホームを見ると
頭を中心とした
血溜まりのなか
女の人が

じっと

うごかず

たおれていました。


男の人が
怒鳴りながら
救急車か警察か
携帯電話でさけんでいました。
駅員さんもまだいないところをみると
直後
だったようです。

ほぼ死体となった女の人は
見ているだけで
そのずっしりとした重さがつたわります。

血は溜まり
つつと流れ


鮮血


という単語は
まさにこれから生まれたのかと
私はおもいました。


しばらくすると
駅員も駆けつけ
電車に放送がはいりました。


ホームにて電車に人が接触したため・・・



人が接触



言葉だけきくと
ずいぶん軽いことのようにおもえました。

10分ほどして
電車はでました。



同日 夜



稽古がおわっての帰り途中
電車の乗り換えで
向かいのホームにつと
歩いていったところ
何人かが線路をみてるので
なにかとおもったら
線路に落ちた男の人を
背広を着た若い男の人が
ひきずっていました。
落ちた男の人は意識を失っているようです。


電車はもう
見えています。


一瞬
私も飛び降りて
側溝に連れていこうかと
よぎりましたが
電車のスピードと距離を考えたら
私こそ
とおもい踏みとどまりました。

若い男は必死に相手の片腕をひっぱります。
これこそが

命がけ

と呼ぶのだとおもいました。


電車はもう
すぐそこです。


意識を失った男の人の足の甲がまだ
線路の2本の線の片方に取り残されています。



電車はクラクションを

ぷぁん

とひとつ鳴らしました。


お前が来ているのはわかっていることだと
私はおもいました。


あと少し
ひっぱれば

映画なみにきわどいところです。
みたところ
無事だったとおもわれます。


10分ほどして
電車はでました。