一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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『世界がわかる宗教社会学入門』を読む。

2006-06-27 10:01:41 | Book Review
「宗教とはなにか」
という誰でもが、一度は考えたことがあるだろう疑問へ、「社会学」という視点からアプローチした書(とりあえず、「社会学は、社会現象を科学的に解明する学問です」としておく)。

そこから、それでは「宗教」とはなにか、という本題に入っていくわけだが、
一般的/抽象的な「宗教」という概念を形づくる前に、個々の具体的な宗教を知っておく必要があります。
「それぞれの宗教は、発想が違う。ロジックがまるで異なる。そこを理解できれば、目的は達したようなものである。とは言え、基本的な知識(人の名前や出来事や基本概念)を知らなければ、宗教を理解したことにはならない」
ということで、本書では、ユダヤ教、キリスト教(カトリックとプロテスタント)、イスラム教、仏教(初期仏教、大乗仏教、中国と日本の仏教)、儒教、尊王攘夷と分けて記述されています。

最後の「尊王攘夷」が宗教か、という疑問が出てきますが、これは「近代天皇制」(特に「天皇教」ともいえる「国家神道」)につながってくる思想だからです。
この辺りに、「神道」という項目をあえて立てなかった著者の意図があるようです。

さて、著者の基本的な考え方に戻ると、
「日本人にとって、宗教は知的な活動ではないから、病気や災難にあって困っているひとの気休めか、人をだます迷信ということになる。だから、外国で、人びとが熱心に宗教を信じていることが理解できなくなる。そこで、宗教とはなんだろう?という疑問を、もつようになる。
そういう素朴な疑問は、そろそろ卒業にしよう。
そして、それぞれの宗教について、具体的な知識をもとう。それぞれの宗教を信じる人びとに対して、敬意をもとう。そのうえで、宗教を知性と結びつけて、理解しよう。」
ということになります。

特に、最後の「宗教を知性と結びつけて」という部分が大事な点ではないかと思われます。

小生、個人的に「宗教は究極の説明原理」だと思っております。
生や死といったことは、現象としては科学で説明はつけられても、なぜ、その人間が死に、この人間が生きているか、ということの理由は分りますまい(生/死の不条理さ)。
また、何のために人は生きているのか、ということの説明も、そうたやすくできることでないでしょうし、それは科学の分野ではなく、文学や哲学などのジャンルの問題となる。
そういったことを説明する原理として、人間の知性が生んだものが、宗教なのでありましょう(したがって、文学や哲学と同根)。

ですから、社会構造にも深く関係してくるのです(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』!)。

本書は、「情操」ではなく、「知性」という観点から宗教を捉えようとする試みの一つであります。

橋爪大三郎
『世界がわかる宗教社会学入門』
ちくま文庫
定価:本体819円(税込)
ISBN4480422277