一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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現実主義的な、あまりにも現実主義的な

2006-04-22 12:04:14 | Essay
「丸腰にサングラス、コーンパイプを手にして」
厚木飛行場に降り立ったマッカーサー(1945年8月30日)

この国の人々が、現状追認的であり、それを現実主義だと思っているかは、今に始まった話ではないようだ。

というのは、半藤一利『昭和史 戦後篇』を読み出して、すぐに痛感するところ。
「八月十七日、天皇陛下命令つまり大元帥陛下命令として日本陸海軍に対して武器を置け、これ以上抵抗すべからず、と武装解除の命令が出ました。それが実行されるのに反乱らしい反乱はほんのわずかしかなく、命令を受け賜って、日本の軍隊はどんどん解散していきました。(中略)それは見事なくらいで、あれよあれよという間に復員軍人が故郷へ返されました。まあ不思議なくらいに言うことをきいたんですね。」

軍隊は大元帥の統帥下にあるから、それは当然という意見もあるかもしれない。しかし、満州事変以来、いかに軍隊が「擅権(せんけん)ノ罪」*を行なってきたかを考えれば、そう簡単に納得するわけにはいかない。

*「第35条 司令官外国二対シ故ナク戦闘ヲ開始シタルトキハ死刑二処ス
  第36条 司令官休戦又ハ講和ノ告知ヲ受ケタル後故ナク戦闘ヲ為シタルトキハ死刑二処ス
  第37条 司令官権外ノ事二於テ已ムコトヲ得サル理由ナクシテ擅二軍隊ヲ進退シタルトキハ死刑又ハ無期若ハ7年以上ノ禁錮二処ス 
  第38条 命令ヲ待タス故ナク戦闘ヲ為シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ7年以上ノ禁錮二処ス」(『陸軍刑法』「第2章 擅権ノ罪」)

しかも、それは軍隊に限った話じゃあない。
「いわゆる『良家の子女』たちになにごとが起こるかわからないというので、その "防波堤" として、迎えた進駐軍にサービスするための『特殊慰安施設』をつくろうということになりました。そして早速、特殊慰安施設協会(RAA) がつくられ、すぐ『慰安婦募集』です。いいですか、終戦の三日後ですよ。」
しかも、その音頭をとったのが、内務省の役人たち。

原理原則は関係なしに、状況に適応するのが素早いというのか、いい加減というか、こういう面が現在も未だに残っているんじゃないだろうか。
しかも、それは現代に限ったことではなく、どうやら黒船来航の時から、外圧に対する対応のしかたという面では変わりがないらしい。

こうなってくると、つむじ曲がりの小生としては、原理原則を守った人たちの肩を持ちたくなってもくる。

世界の大部分の国々は、どちらかと言えば、原理原則を守る側の方が多数派のようなのだが、如何なものだろうか。