一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

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竹内浩三のこと(『骨のうたう』について・続き)

2006-04-06 09:42:07 | Essay
浜田知明『初年兵哀歌(歩哨)』

サイト「空の片仮名」によれば、竹内浩三は次のような短い生涯をおくった。

1921(大正10)年5月12日、伊勢市吹上町の大きな呉服商の長男として生まれる。宇治山田中学校を経て、日大芸術科映画科に入学。
1942(昭和17)年10月、三重県久居の歩兵第三十三連隊に入隊、初年兵教育を受ける。1943(昭和18)年9月、西筑波の滑空部隊、のちの空挺部隊に転属になる。1944(昭和19)年12月、フィリピンに向けて出発、ルソン島の西海岸にあるフェルナンド港に着き、バギオに向かう。公報によれば、1945(昭和20)年4月9日バギオ北方の1052高地で戦死。享年23。

さて、前回は『骨のうたう』の第1節を引用したが、本日は、第1節を含めて最後まで。

  骨のうたう 

 戦死やあわれ
 兵隊の死ぬるや あわれ
 遠い他国で ひょんと死ぬるや
 だまって だれもいないところで
 ひょんと死ぬるや
 ふるさとの風や
 こいびとの眼や
 ひょんと消ゆるや
 国のため
 大君のため
 死んでしまうや
 その心や

 白い箱にて 故国をながめる
 音もなく なんにもなく
 帰っては きましたけれど
 故国の人のよそよそしさや
 自分の事務や女のみだしなみが大切で
 骨は骨 骨を愛する人もなし
 骨は骨として 勲章をもらい
 高く崇められ ほまれは高し
 なれど 骨はききたかった
 絶大な愛情のひびきをききたかった
 がらがらどんどんと事務と常識が流れ
 故国は発展にいそがしかった
 女は 化粧にいそがしかった
 
 ああ 戦死やあわれ
 兵隊の死ぬるや あわれ
 こらえきれないさびしさや
 国のため
 大君のため
 死んでしまうや
 その心や