一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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『燃えよ剣』の間違い探し。

2006-04-15 11:03:18 | Book Review
CSS "Stonewall"

小説に書かれた物事や出来事の間違いを探すほど野暮なことはない。
ストーリーと関係のないことに関しては、特にそうである。もし、筋書きやキャラクター設定に関係していたとしても、上手にだましてくれるのなら、それはそれでかまわないというのが小生の基本的立場。

しかし、歴史小説の場合、細かな事実の間違いが瑕疵となる場合もある。
それは全体のストーリーなどとは関わらず、著者の歴史観の問題ともなりうるからだ(司馬遼太郎『要塞』における乃木評価などが典型)。

特に、司馬作品に関しては、日露戦争をめぐって、事実認識や歴史観をめぐって意見はさまざまに分かれているのが現状ではないか(サイトにも、その点を扱ったものが多々ある)

司馬作品の場合、一般的に言えるのは、軍事技術的な誤りが多そうだということ。サイトを見たり、関係書を読んだりすると、一方的な考えを持っている「専門家」に取材したことが理由のようだ。

ここでは、そのような本格的な事実誤認の指摘ではなく、ちょっと気がついたことを書き付けておく。
というのも、以下述べる「甲鉄」艦に関しては、誤りやすい理由もあるからだ。

『燃えよ剣』「甲鉄艦」の章から。
「この艦は、アメリカの南北戦争の最中に北軍の注文で建造されたもの」
とあるが、これは、南軍の誤り。
ちなみに、アメリカ合衆国の艦艇に関するサイトから訳すと、
「CSS(Confederate States Ship:アメリカ連合国艦艇、すなわち南軍艦艇)ストーンウォール、1390トンの鉄製装甲衝角艦(ironclad ram) は、フランスのボルドーで連合国海軍のために建造された」
とある。
ここで、"ironclad" というのは、木製の船体に鉄製の装甲板を取り付けてあるということを知っておきたい(その点「木製だが甲鉄でつつんで」と司馬作品の誤解はない)。
その他、細かいことを言えば、「甲鉄艦」のルビに「ストーン・ウォール」とあるのは、「ストーンウォール」とワンワードにしたいところ。

さて、誤解しやすいというのは、南軍に「ストーンウォール・ジャクソン」"Stonewall Jackson" という艦があったこと。

この艦については、次回述べよう。