引き続いて、今野敏さんの作品ですが、これは以前いつもブログを拝見している、ゆいさんから勧められてたのを思い出して読んでみました。
ストーリーとしては、爆弾テロと爆弾処理をする自衛官の対決の話で、緊迫した設定ととてもスリリングな展開など読みごたえのある作品になっています。
またこれまで読んだ著者の作品に共通する主張がとりわけ強く感じられ、この小説を読んであらためて著者の人となりに興味が沸きました。
もちろん、それらはすべては登場人物の口から語られる、あくまで小説ではあるのですが、複数の作品で同じ主張が繰り返されるだけに単なる作風としては受け止め難いものがありますね。
今回も堕落した政治や刹那的に快楽だけを追い求める若者、ジャーナリズムやマスコミへの批判、平和ボケして危機感のない国民に対する警鐘などが、複数の登場人物から語られます。
特に犯人に資金を提供していた大学教授とその教授から爆弾テロ事件に対するレポートを書かされる助教授とのやりとりで長くページを割いています。
ストーリー的に中盤以降、終盤の犯人が追いつめられる展開部分が非常にあっさりと進むのは、展開そのものよりもこの主張を盛り込み終えたからではないか思えるぐらいです。
最後はもちろん、テロ犯人は処理班に敗れるのですが、それは爆弾に関する技術面で敗れるだけで、爆弾テロによって何の罪もない人々が亡くなるという現実を思い知らされるようないわゆる「最後は正義が勝つ」って結末ではなく、逆にテロ犯が意志を通したのかというような印象さえ受けます。
それだけに著者を語る上でも、はずせない興味深い作品だと思います。