ビートに続いて、今野敏さんの警察小説を読んでみました。
警察小説でありながら家族小説でもあるのは先に読んだビートと同じです。
主人公の竜崎は警察庁長官官房の総務課長でまさしく「キャリア」なのですが、いつも家族や仕事仲間から“変わっている”と言われています。
私なんぞが普通に考えると、いつも警察小説の中で軋轢のもととして取り上げられるキャリアとノンキャリアで最初からしっかり線引きがされている警察組織の方が変わっているんじゃないかとおもわないでもない(^^;)
ストーリーは、簡単に言ってしまうと連続殺人犯が警察官であることを警察が組織ぐるみで隠蔽しようとするのを、この“変わり者”竜崎が正直に公表しましょうという話。
そこに竜崎の長男がヘロイン煙草を吸っていたという竜崎自身の家庭の問題が絡んでいます。
最終的に竜崎は長男を近くの派出所に自首させるのですが、ここでも隠蔽 ( もみ消し ) しないことで竜崎は筋を通します。
あたり前のことを言うことが“変わり者”になってしまう世の中もさることながら、確かに私自身もすべての法律を守っているかと問われると、とんでもないってことになります。
スピード違反で捕まったことはなくても、程度の差ことあれスピード違反は常習犯。
喫煙はもう20年ほどしていませんが、未成年のときに喫煙も飲酒もしてました。
でもワルだったかと言えば、まわりからはどちらかというと“真面目”“堅物”で通っていたのが現実です。
そういう世の中の矛盾のようなものを許容することを“大人になる”と言われることに反発を覚える時期がありますね。
この小説では連続殺人犯の犯人を組織ぐるみで隠蔽することを許容させることまで“大人になれ”言われてしまいます。
大人になるっていうのは、そういうことじゃないでしょうに。
ともかく“変わり物”がいてやっと救われる警察組織の異常さだけでなく、世間のそう言った風潮に鋭く切れ込むところに著者の主張が盛り込まれているんじゃないでしょうか。
人間って組織に組み込まれると弱いですね。
自分の価値観をちゃんと持って、さらにそれを貫くのって、組織の歯車の中では異端児というか異分子になる覚悟がないとむずかしいですね…。
私も会社組織に入って久しいですが、最近になってからですよねコンプライアンスが重視されるようになったのは。
不祥事がこれだけ相次ぐと悪い事をしてない会社なんてないんじゃないかって思ってしまうぐらいです。
もし勤めている会社が道を外しかけたときに、クビや左遷覚悟で正しいと思うことを貫くことができるかって聞かれると本当は自信がないのが正直なところです。