のんびりかな打ち日記  ini's blog

NikonD7100やSonyRX100M3で撮影した画像と日々の出来事を“ かな入力 ”でのんびり綴るブログです。

容疑者Xの献身

2008-08-14 23:56:17 | 通勤快読

東野圭吾さんが、やっと取った直木賞受賞作品。
それだけにずっと読みたいと思っていましたが、文庫が出るまで我慢してました(^^;)
読む前は、へんてこりんなタイトルだなって印象でしたが、読み終えた今では内容を的確に表したストレートなタイトルでもあり力作だと思います。

残念ながら読後感がいい作品ではありません。
もともとそういう作品ではないのですが、ちょっと胸がつかえるような感じです。

理系である著者のミステリー作品としての真骨頂でしょうか、数学者が衝動殺人を瞬時に完全犯罪として組み立てる見事なトリック、でも決して謎解きを楽しませるだけの軽いストーリーではありません。
そして最後は、有り得ないような真相でありながらも、単純にそりゃないよ! って言わせないところが駄作と力作の分岐点なのかも知れません。

読後に胸がつかえる感じなのは、容疑者Xの献身的な愛情をどう捉えるのかでしょう。
緻密な数学者の異常な愛情の末路と考えるほうがスンナリ消化できますが、そうは表現されていないところが少し引っかかりますね。
ちょっと考えれば、起こってしまった殺人事件ではあるが、それは決して計画的でないし、そのまま自首しておけば情状酌量の余地も十分にあるだけに、結果的にこの事件にかかわって大きな悲劇と代償を生むことになってしまうこの容疑者Xの存在そのものに虚しさを感じてしまうことが胸のつかえになっているように思います。
さらには、たとえ容疑者Xの緻密な計算通りに隠ぺい工作が成功したとしても、これまた本当は決して誰ひとり幸せにはならないことを考えても同じです。
ただそのあたり著者がどう表現したかったのかまでは伝わってこないですね。