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’08年度百貨店店舗別売上高  繊研新聞今日(7・27)のページ

2009年07月28日 | アパレル放談
’08年度の百貨店の店舗別売り上げが繊研新聞に掲載されました。
毎年、百貨店だけでなく、専門店、量販店、通信販売も小売りやアパレル、生地問屋などの業績データーのランキングを婦人と紳士に分けて上位100社の業績ランキングを集計し市場で発表しています。
私の記憶では、1980年末頃から継続しています。
別冊でDATA BOOKとして発刊し、読者に配布しています。
日本の繊維、アパレル、小売りの業績の直近の実態と経年の推移を知る上で貴重な資料と思います。
 今年の3月に、ある大学の准教授と共同研究の機会があり、この繊研新聞のDATA BOOKのデーターを参考に研究レポートを作成しました。
テーマは、“ファッションビジネスにおける業態構造の移行―その成果と問題点の考察―”です。
仰々しいテーマですが、「バブル崩壊後の繊維・アパレル・流通がどのように業態変化し、移行してきたか」を、DATA BOOKの売り上げランキングを業態別に仕分けし、各業態の盛衰を検証し、今後の業態の移行と新業態を考察のレポートを作成しました。
具体的には、バブル崩壊の1990年の各業態ごとの売上数字と2006年(直近年)の数字を経年比較し、その盛衰の要因や業界に与えた影響を検証しました。
結果的には、「私の経験的な仮説」と殆んど近い内容でしたが、実績数字に基づいて実証できたのではないかと、自己満足しています。
今日の繊研新聞の百貨店の売上ランキングのデーターを企業別の業績を評価するためのデータとしてではなく、経年比較や歴年比較することにより、より百貨店の実態が分析でき、今後の対策(新ビジネスモデル?)にも貴重な資料となると考えられます。
先のレポートの百貨店の検証結果は下記です。
1)1990年度百貨店50社売上合計= 1,336,100(百万円)
  2006年度     〃     = 1,123,787 
  経年比              = 84%
2)1990年ど上位20社の売上合計 =   837,900
  2006年度     〃     =   687,111
                     82%
3)1990年度上位 6社の売上合計 =   366,400
  2006年度     〃     =   296,398
  経年比              = 81%  
4)2008年度(今日の繊研新聞)データーによると、全ての項目で70%台に落ち込んでいる       
                          
以上の売上数字を分析の結果から下記の実態が導き出せる
a.上位50店舗の売上合計は国内の百貨店売上の100%に近い数字と看做すことが出来る
b. 上位50店舗、上位20店舗、上位6店舗それぞれが80%前半で、20%に近い売り上げ減少である
c. 1990年度以降に百貨店は非採算フロアー(家具、書籍、呉服・・・)の縮小を計り、高粗利の見込める婦人服売場の増床が行なわれた。(基礎データーは無いが、30%以上の増床と推察される
増床による売り場面積の増加は、坪効率低下を生み、期存分の売上減と、増床による坪効率低下が相乗され、大幅な坪効率の低下となった。(推測値60%台)
d.坪効率低下による在庫回転率低下は、商品ロスとなり売上利益率の低下を生む
e.その他アウトレットモール(5000億) 近郊メガSCや都心のファッションビルなど新興の売場施設やWeb、Mobileなどの新チャネルの増加(規制緩和と新テクノロジー)
f.セレクトショップ、ファッション系セレクトショップとの競合
g.ラグジュアリーブランドの導入により、メガブランドの納入条件の補填のためのアパレルブランドへの掛率低下
h.1990年以降に売上低迷対策として、営業日の増加(店休)や営業時間の延長が行なわれ、販売スタッフのシフト配置が必要となり、人件費のアップ(推測値1.5)が負担となった

結果として、
a .原価率の引き下げによる名目粗利率の確保
b.アウトレットモールやメガSC、都心メガモール、WEBなどへの百貨店アパレルへの離脱
c.アパレルのSPA化による企画生産力の低下
などの百貨店顧客無視の政策が顧客の百貨店不信を生む結果となり、今日に至った。
このように考えると、「百貨店の売上不振は経済危機による物だけでなく、“積年の百貨店の矛盾”が重大な要因」と考えるほうが適切であろう。
過日繊研新聞に投稿した伊勢丹の新ビジネスモデルに関する辛らつな?私見は、この研究レポートを論拠にしたものです。

最近、百貨店の低価戦略の報道が業界紙だけでなく一般紙やテレビ報道にも出ています。
昨今の百貨店の売上不振に対する対応に、アパレル業界に携わった者の一人として、危惧しています。
根本的な対応が望まれます。


研究レポートは、「国立情報学研究所」という機関のHPでダウロード出来るようになるとのことです。(時期は未定)
後日、登録が完了後に、私のHPでも公開したいと考えています。