猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

政府系金融 全役員、天下り禁止―行革推進法案の果実

2006-03-12 02:01:33 | 構造改革・地方分権
 政府系金融機関の統廃合を中核とする行革推進法案に関して、ODA改革の不徹底さを指摘して再三批判してきたが、それだけでは片手落ちなので、「収穫」もまとめて紹介しておきたいと思う。ODA関連以外で主な内容は以下の通り。なおODA関連は『ODA改革、さらに骨抜きに…』『国際援助機関一元化問題、最新情報―実のあるODA改革か疑問』もあわせてご覧ください。

・天下り規制の範囲を経営トップだけでなく全役員にまで拡大。
・商工組合中央金庫と日本政策投資銀行は「完全民営化」と明記。政府出資は平成二十年度からおおむね五-七年後をめどに全部を処分。
・道路特定財源制度は一般財源化を図る。

中でも、道路特定財源の一般財源化は、長年議論されて来たものの実現される見込みのなかった懸案である。改革の成果として特筆大書してよいと思う。できれば、一般財源というよりは環境目的税化するのが理想であるが…。また、公務員総人件費削減にあたり、中馬行革担当相は人事院を職員純減の対象とするよう法案に何らかの形で盛り込みたい考えを示している。ただし、これには人事院が抵抗しており調整が困難と思われる。
 もちろん、改革の常として「抵抗勢力」の強烈な巻き返しは想定されるところである。往々にして各論になればそんなものである。任期延長なしと明言してしまった以上、いかにレームダック化を避けながら後継者への改革のレールを遺漏なく敷くことができるか、小泉首相の手腕が問われるところである。



(参考記事1)
[政府系金融 全役員、天下り禁止 行革推進法案の全文判明]
 政府が今国会に提出する行政改革推進法案の全文が二日、明らかになった。八つの政府系金融機関を統廃合して平成二十年度に発足させる新たな政府系金融機関については、関係官庁からの役員への天下りを原則禁止する規定を設けたほか、国際協力銀行(JBIC)の円借款部門を国際協力機構(JICA)に移行することを盛り込んだ。政府は十日の閣議決定を目指しており、人事院の職員純減をめぐる問題が調整事項として残されている。
 同法案は今後の行政改革の方向性やプログラムを示したもので、昨年末に閣議決定した「行政改革の重要方針」に基づく諸改革や、政府に行政改革推進本部を設置することを柱に七十八条で構成されている。政府系金融機関の改革をめぐっては小泉純一郎首相が一日、中馬弘毅行革担当相に指示した結果、天下り規制の範囲を経営トップだけでなく、全役員にまで広げた。
 また、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行は「完全民営化」と明記し、政府出資を民営化から七年後までにゼロとすることを盛り込んだ。ただ、両機関の機能の根幹が維持される仕組みを政府に対して求める条項も設け、根拠法を作らない方法で「政府保証」をつけられる道筋を残した。
 JBICの扱いに関しては、安倍晋三官房長官の下に設置された「海外経済協力に関する検討会」(座長・原田明夫前検事総長)の報告書を踏襲。国際金融部門は新たな政府系金融機関と統合するが、継承する業務は(1)海外での重要資源の開発、取得(2)国際競争力の維持、向上(3)国際金融秩序-に限定すると明記した。
 公務員総人件費削減にあたり、中馬行革担当相は人事院を職員純減の対象とするよう法案に何らかの形で盛り込みたい考えを示しているが、人事院が「自らの判断で削減に取り組んでいる」(佐藤壮郎総裁)との理由で抵抗しているため、調整は難航しそうだ。
     ◇
 ■行政改革推進法案の主な条文
 五条 新政府系金融機関の経営責任者は設立目的、担当金融業務に照らし必要と認められる識見、能力を有する者から選任。特定の公務の流れを有する者が固定的に選任されないように十分配慮
 六条 商工組合中央金庫、日本政策投資銀行は完全民営化。政府出資は平成二十年度からおおむね五-七年後をめどに全部を処分。商工中金と政策投資銀の機能の根幹が維持されるよう必要な措置を講じる
 一二条 国際協力銀行(JBIC)は同二十年度に新政府系金融機関に統合。承継するのは、国際金融業務のうちの、重要な資源の海外での開発、取得の促進、産業の国際競争力維持と向上、国際金融秩序の混乱への対処に限定。海外経済協力業務は国際協力機構(JICA)法を改正して同機構に承継
 二〇条 道路特定財源制度にかかる税は同十七年十二月の税率水準を維持。収入は一般財源化を図ることを前提に、同十九年度以降の歳出・歳入のあり方とあわせ、納税者の理解を得つつ具体的な法改正案を作成
(産経新聞) - 3月3日3時9分更新

(参考記事2)
[行革推進法案を閣議決定 各省庁、抵抗激しく 公務員純減「ゼロ回答」も]
 政府は十日の閣議で行政改革推進法案と公益法人制度改革関連法案を決定、国会に提出した。政府・与党は、先月国会に提出した公共サービス改革法(市場化テスト法)案を合わせた三法案について衆院に特別委員会を設置し、月内にも一括して審議に入りたい考えだ。
 行革推進法案は政府・与党が後半国会の目玉と位置付ける重要法案。九月に小泉純一郎首相が退陣しても「改革路線」を後退させないため、改革継続のレールを敷く意味合いがある。
 法案は、「簡素で効率的な政府の実現」のため、政府系金融機関▽独立行政法人▽特別会計▽公務員総人件費▽資産・債務-改革の方向性などを示した。
 総人件費改革では、国家公務員を今後五年間で5%以上純減させる。行政機関に勤める三十三万二千人に対しては、農林統計など十五業務を重点分野と定め、業務の大胆な整理や民間委託を進める。これに伴い、省庁横断的な配置転換を可能とする仕組みを作った。
 政府系金融機関改革では、現在の八機関を統廃合により一機関だけにして、平成二十年度から移行。経営責任者への天下りを原則廃止することも盛り込んだ。
 公益法人改革法案は、現行は原則非課税の財団・社団法人とマンション管理組合などの中間法人を平成二十年度から課税対象の「一般財団・社団法人」に切り替え、非営利性や公益性が認められる法人には、「公益財団・社団法人」として非課税にするのが柱。
                  ◆◇◆
 行政改革推進法案は「聖域なき構造改革」を掲げてきた小泉純一郎首相の総決算といえ、後半国会の目玉に位置づけている政府・与党は法案の早期成立を目指している。ただ、同法案は「総論」に過ぎず、国家公務員の削減などでは早くも各省庁の抵抗が始まっており、小泉首相が「有終の美」を飾れるか真価が問われている。
 「一致団結して法案の早期成立と諸改革の推進に尽力してほしい」
 小泉首相は十日の閣議で全閣僚に小泉改革の「総決算」に取り組む意気込みを示した。小泉内閣は昨年末、「行政改革の重要方針」を閣議決定したが、行革推進法案はその手順と方向性を具体化したものだからだ。竹中平蔵総務相も「郵政民営化法の成立後に、その他の問題をどのような形で将来につなぐかを首相と相談したことを思いだす。首相から『法律にできるものはすべきだ』との話だったので、法案として結実した」と話した。
 しかし、改革の具体化作業ではすでに官僚の激しい抵抗にさらされている。国家公務員の純減を監視する政府の行政減量・効率化有識者会議(座長・飯田亮セコム最高顧問)は十日、農林水産省関係の削減方針を聞いたが、同省は「削減した人員を他省庁のどこに配置するかイメージできないと削減数を明示できない」と回答。他省庁も同様に「ゼロ回答」の構えをちらつかせる。首相周辺も「面従腹背の霞が関をどう押さえ込むかが焦点だ」と語る。
 自民党内では「ポスト小泉」をにらんだ動きが始まっているが、行革推進法案が次期政権の改革の方向性を縛るだけに、ポスト小泉候補とされる安倍晋三官房長官や麻生太郎外相らがどう官僚の抵抗を封じるのか、力量も問われることになる。
 一方、民主党の前原誠司代表は、対案の作成を松本剛明政調会長に指示している。しかし、労組系議員を中心に党内の抵抗も予想され、執行部が目指す四月中の対案提出は微妙な情勢だ。
(産経新聞) - 3月11日2時42分更新


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4 コメント

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地方に! (PJ)
2006-03-12 12:10:10
小さな政府にするのであれば、地方にはもっと優秀な人材がどうしても必要です。

お金だけ求めるのでなく、地方に来ていただきたいです。

全国各地のあのくだらないテーマパークを見てください。

地方の人間としては、田舎のおじちゃん・おじいちゃんの政治にうんざりしています。

といって、地方に来てまで中央省庁の役人と一緒になって利権を組織化されても困るわけですがw
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PJさまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-03-12 23:51:30
コメントありがとうございます。本当におっしゃるとおりですね。



>地方に来てまで中央省庁の役人と一緒になって利権を組織化されても困るわけですが



そういう観点から、優秀な人材を地方で主体的に発掘する努力も必要かと思います。また、住民の参加意識も大事なんだと思いますよ。住民運動って、何も左翼の専売特許じゃないですからね。

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住民運動 (PJ)
2006-03-13 12:02:28
最近、基地移設問題に関連して私が実感しているのは、

田舎の人間は臆病だということです。

本当のところは賛成が多数です。

ところが大声で反対を叫ぶ人たちや外部からの応援部隊を見ただけで萎縮してしまい、自分たちの街であるにも関わらず意見表明をすることすらこわいのです。

おまけに相手は地方の人間が持つ不満につけこんできます。

沖縄の状況が想像できるようになって来ました。

私は気落ちしています。

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PJさまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-03-13 20:55:18
実は、似たようなことを感じました。「波風を立てたくない」「目立つようなことはしたくない」という、よくも悪くも昔ながらの日本人らしさというものを地方の人は強く持っている傾向にあるんじゃないかと…。まあ、サイレント・マジョリティーという言葉があるとおり、一部の声の大きい人の意見が通りがちなのはどこでも同じなのかもしれません。

でも、ここで希望を捨てたらいけないなあとも思いますよ。
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