猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

米空母艦載機移駐案をめぐる岩国住民投票関連

2006-03-13 23:12:36 | 日米同盟
 12日に行われた山口県岩国市の住民投票で、米空母艦載機の岩国基地移転反対が約9割の多数を占めた。そもそも、そんな住民投票を実施したこと自体が誤りである。市町村合併に伴って間もなく失職する現市長が、新岩国市長選の選挙運動として住民投票を私物化したのではないかという批判もあながち見当はずれとも思われない。自民党内から「安全保障や防衛をどうするかを住民投票にかけるのは適当でない」と批判が出たのも当然である。また、米軍再編に関して、地元調整を待たずに最終報告策定を目指すという政府の方針は、貫徹されなければならない。
 もともと、米空母艦載機を神奈川県の厚木から山口県の岩国へ移転することは、はるか南方の硫黄島でしか夜間着艦訓練(NLP)を実施できない状況を打破するための策として提案されたものである。さらに、米側の都合だけではなく、キャンプ座間への第Ⅰ軍団司令部を視野に入れて、神奈川県の負担を軽減するために代わりに厚木の艦載機を他県に移転するという日本国内の事情を汲んだ、総合的なパッケージの一環という意味合いも持つ。しかし、何よりもそれ以上に、軍拡を続ける中国の脅威により効果的に対処すべく「地の利」を求めたという軍事的合理性の意義が極めて大きい。そしてこれは、当然日米双方の国益にかなうことである。そういう観点から考えれば、政府が地元調整を待たずに最終報告策定を目指すという方針をとる以外にないということが納得できるのではないかと思う。


(参考記事1)
[米軍再編、同意得ず最終報告へ=策定前の地元調整は断念-政府]
 政府は13日、在日米軍再編に関し、当初の方針通り今月末の最終報告策定を目指す一方、策定前に地元調整を終えることを事実上断念した。12日の山口県岩国市の住民投票で米空母艦載機の岩国基地移転反対が多数を占めたほか、普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部移設に沖縄県や名護市などが反発しているため。説得作業は最終報告後も継続するが、地元の反発がさらに強まるのは必至だ。 
(時事通信) - 3月13日21時1分更新

(参考記事2)
<岩国住民投票>自民党内、投票実施自体への批判噴出
 米空母艦載機の受け入れの是非を問う山口県岩国市の住民投票で約9割が反対を占めたことに自民党内では13日、「安全保障や防衛をどうするかを住民投票にかけるのは適当でない」(片山虎之助参院幹事長)など、投票を実施したこと自体への批判が噴出した。武部勤幹事長も同日の政府与党連絡会議で不満を表明した。
(毎日新聞) - 3月13日21時10分更新

(参考記事3)
[首相「方針変わりない」 岩国住民投票結果]
 小泉純一郎首相は十三日昼、米軍岩国基地への空母艦載機の移駐案受け入れをめぐる岩国市の住民投票で反対が賛成を大きく上回ったことについて「基地についてはどこで住民投票をやっても反対でしょう。それが安全保障の難しいところだ」と述べたうえで、米軍再編をめぐり、三月末に日米間で最終合意する方針に「変わりない」との考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
 また、安倍晋三官房長官は同日午前の記者会見で、「事実として受け止めている」としたうえで、「九割が反対だったが、住民投票に否定的な人は投票していない。岩国市は近く合併を控えており、周辺地域には『なぜ今の時期に住民投票をするのか』と疑問を持っている人も多い」と不快感をにじませた。
(産経新聞) - 3月13日15時47分更新

(参考記事4)
[岩国住民投票 米軍移駐「反対」9割 政府、日米合意を優先]
 米空母艦載機の厚木基地(神奈川県)から岩国基地(山口県岩国市)への移駐案受け入れの賛否を問う岩国市の住民投票が十二日行われ、即日開票の結果、反対票が賛成票を大きく上回った。井原勝介市長は十六日に上京し、投票結果を踏まえて政府に移駐案の撤回を要請する。反対票が圧倒的多数を占めたのは騒音被害などに対する市民の懸念が強かったためとみられ、在日米軍再編で地元の理解を求める政府は厳しい対応を迫られる。
 開票の結果、反対票が四万三千四百三十三票と投票有資格者数(当日有権者数、八万四千六百五十九人)の過半数を上回った。賛成票は五千三百六十九票。無効票など八百八十票。投票率は58・68%。市条例の定める50%を超えたため、有効となり開票された。
 住民投票の結果に法的拘束力はないが、市条例では「市民、市議会、市長は結果を尊重する」との規定がある。岩国市は二十日に周辺七町村と合併するため、今回の住民投票条例は失効する。
 政府は投票結果にかかわらず、在日米軍再編の最終報告を今春にまとめる方針だが、米軍再編をめぐる初の住民投票で反対派が多数となったことで、他の関係自治体との調整にも影響が出そう。
 市条例は住民投票の投票率が50%に達しない場合は不成立と規定していたため、投票率の行方が焦点の一つだった。発議した井原市長や移転案に反対する市民団体などは投票を呼びかける一方、井原市長に批判的なグループや移転受け入れを視野に地域振興策などの交渉を求める市議らは投票の棄権を訴えていた。
 合併に伴って誕生する新岩国市の市長選は四月下旬に行われ、米軍再編問題が再び争点となりそう。同市長選には井原市長と、自民党県連推薦で元青年会議所理事長の新人が出馬表明、一騎打ちが予想される。
     ◇
 【岩国市の住民投票(確定)】
 反対   43,433 89% 
 賛成    5,369 11%
 無効など    880 
 総数   49,682
(産経新聞) - 3月13日3時10分更新


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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
どっちが本当? (自由)
2006-03-13 23:45:41
こんちは。

>軍拡を続ける中国の脅威により効果的に対処すべく「地の利」を求めたという軍事的合理性の意義が極めて大きい。



中国の攻撃から日本を守るために空母の艦載機を配置するんですか?私は夜間着艦訓練(NLP)を行うために配置すると聞いていますけど。どっちが本当なんですか?http://robamimi.at.webry.info/200512/article_9.html
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自由さまへ (猫研究員。(高峰康修))
2006-03-14 00:51:12
コメントとご指摘ありがとうございます。

ちょっと私の書き方が悪かったようで…。確かに、NLPの実施がそもそもの直接の目的ですね。正確を期して、本文でもその旨補充しておきました。ご紹介の記事にある内容は全くその通りです。その上で、本文に書いた「岩国の地の利」もあるわけです。それ以外にも詳細は略しますが、在沖縄海兵隊(一部が岩国に駐留)との連携という観点もあります。そういったことを考えると一石二鳥にも三鳥にもなるといってよいでしょう。
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Unknown (hontino)
2006-03-14 10:02:39
全くおかしなことをすると思います。しかし、その前に政府はもっと地元に事情説明をやるべきでしょう。誰だって基地が来ることをもろ手で歓迎する自治体はないと思います。

それを根気良く理解してもらう努力が政府には足りないと思います。いや政府というより之もぐうたら官僚かな?
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圧倒的多数 (PJ)
2006-03-14 15:38:23
>岩国基地移転反対が約9割

賛成派は投票ボイコットを訴えていたので、

実質的には反対派は半数以下のようです。



沖縄の一部や平和団体を中心とした米軍に対するネガティブキャンペーンのせいもありますが、地位協定というのも影を落としていると思います。

昨日のWBCのゲーム然り、BSE問題然り。

アメリカ人は日本人に対して公正な態度を取らないのでは?という一抹の疑念が信頼関係に水を差します。

もちろんネガティブキャンペーンもそこを煽ります。
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日本政府の説明責任 (tsubamerailstar)
2006-03-14 17:53:44
時期とタイミング的なものもそうですが、基地に関して理解があった「岩国の声」というのはちょっと痛手な気もします。国防という国の専権事項を住民投票にかけるのが適切なのかということと、やるならこういう結果も予見されていただろうという点はありますが。

前から思っていたことですが、何せ平和ボケした日本人ですから、米軍基地が何のために日本にあるのかといった根本的なところから話さないと、米軍再編に関しては、メリケンの都合で引っ掻き回されている位にしか思わないんでしょうね。岩国に限らず、96年以降先送りにしてきたツケの代償を見るような思いもいたします。



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Unknown (総理大人)
2006-03-14 18:49:00
住民投票の89%が反対ということは、岩国の総有権者の半数以上が反対派であるということらしいですね。一応過半数なわけで、それはそれで成功?だったわけですが、この件通じて一番思ったことは、憲法改正国民投票で最低投票率を設けるとこういう運動になるんだということでした。憲法では「反対派は棄権」と逆ではありますが。

「賛成」「反対」「どうでもいい(棄権)」という三者がくっきりするということは、改正されるか否かには直接関係ないのだけれど、その後の政権運営のために必要というか参考にしてほしい。そういう意味では一括投票よりも個別・ブロック投票がやっぱりいいなあと思います。

本当言えば大義はともかく日本人がどう思ってるのか私が知りたいっていうのが一番なんですが。



岩国では「当然のことながらNLPはしない」って大野さんが言ってた記憶があるんですけど、いつのまにか変わってるてのかな。。
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総理大人さんへ (PJ)
2006-03-14 21:13:37
>岩国の総有権者の半数以上が反対派

違います。

今回の投票率は50%程度でした。

ですから反対派は、総有権者の50%近くです。

また住民投票した人には在日外国人が含まれます。

その分を差し引けばもっと減るのではないでしょうか。

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コメントありがとうございます・その1 (猫研究員。(高峰康修))
2006-03-14 22:17:57
>hontinoさま

岩国の場合は、かなり事前の了解は進んでいた方に属します。視点を少しかえてみると、日米安保条約を結んでいる以上、全国どの地域も潜在的に基地負担に応じなければならない可能性はあるわけですから、個々の案件の大前提として、そこを全国民に周知徹底していただくべく、よく説明する必要はあろうかと思います。



>PJさま

地位協定の問題は、これは国が責任をもって取り組まなければなりません。そして、日米という国と国の問題なんですから、住民投票という形ではなく、地元の意見は地元選出の国会議員を通じて出すのが筋論ですね。もちろん、地位協定の改正を求める住民運動というか国民運動というか、そういう動きも否定されるべきではありません。ただし、住民投票にかけるのはおかしいですよね。
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コメントありがとうございます・その2 (猫研究員。(高峰康修))
2006-03-14 22:34:31
>tsubamerailstarさま



>米軍基地が何のために日本にあるのかといった根本的なところから話さないと



まさに、この点が重要ですよね。

先にhontinoさまにコメントを返させていただいた内容と重複しますが、日米安保条約を結んでいる以上、全国どの地域も潜在的に基地負担に応じなければならない可能性はあるわけですから、そういう根本から理解していただけるよう説明しなければならないと思いますよ。

それから、政策決定者の多くがもっと軍事を知らないといけないような気がします。もちろん、国民全体そうなんですけど。



>総理大人さま

憲法改正の国民投票に視点を持っていったのは、なるほど!と思わされました。私も今までは、憲法改正国民投票で最低投票率を設ける方がいいのではないかと思っていたのですが、弊害もありますね。

NLPをするとかしないとかいう話は、米軍の意向では実施したいということなのでしょうが、日本側の対応は相変わらずというか、これで決定という結論は出てないと記憶しています。
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今さら隗より初めても遅い? (tsubamerailstar)
2006-03-14 23:09:37
>猫研究員様



>政策決定者の多くがもっと軍事を知らないといけないような



沖縄に関しても「削減」を連呼していますが、日米統合運用による実効性の強化と米軍の太平洋シフトという二点での抑止力の強化といったところがトランスフォーメーションの本質であり、日本が「太平洋の英国」として不安定の弧の最前線基地になるのだといった認識すら持っていない気がしますよね。軍事以前に連中でもフツーにそういうことは読めると思うんですが。(笑)

ぶっちゃけ、この件に関しては事実上地元の理解も何も今の時点では有り得ない話なんですよ。昨年11月の「2プラス2」だってローレス副次官があんだけ譲歩したからまとまったような話であって、あれを「中間合意」とか何とか勝手解釈して流したのがよくなかった。

フツーに考えたらあれが最終合意で、後は日本が動くだけという話ですからね。





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