猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

米軍再編閣議決定、普天間移設先を明記せず

2006-05-31 08:45:05 | 日米同盟
 政府は30日の閣議で、在日米軍再編に関する日米合意の「迅速な実施」に向けた基本方針を決定した。これまでに積み重ねられてきた在日米軍再編に関する議論が、政府の方針として正式決定されたということである。概要は以下の通りである。

・新たな負担を伴う地方自治体の要望に配慮し、地域振興等の措置を実施
・海兵隊のグアム移転は所要の経費を分担し、早期に実現する
・防衛関係費を合理化・効率化する。経費見積もりが明確になり次第、中期防を見直す
・普天間飛行場移設は、日米安保協議委員会(2プラス2)で承認された案を基本として、早急に建設計画を策定する。沖縄県、関係自治体と協議機関を設置する。「普天間飛行場の移設に係る政府方針」(99年閣議決定)は、これを廃止する

 まず、懸念されるのは、普天間の移設先に関して具体的な地名も期限も明記されなかったことである。防衛庁が示した当初案では、移設先を「辺野古崎とこれに隣接する大浦湾、辺野古湾を結ぶ水域」、建設計画の策定期限は「10月まで」と明記していた。ところが、実際に閣議決定されたものは、普天間飛行場の代替施設は「日米安全保障協議委員会で承認された案を基本として」建設するとの表現で、キャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部にV字形の滑走路を建設する計画は明記していない。これでは、失敗した辺野古沖への移設案の二の舞にならないか心配になる。
 先日も書いたが、再編経費を捻出するため、現行の「中期防衛力整備計画」(平成十七-二十一年度、総額二十四兆二千四百億円)を見直すことも明記した点について、正面装備を削減するとしているのも懸念材料である。RMA(軍事における革命)に基づいて装備を合理化し軍事費を抑制することは当然である。例えば、正面装備の中でも戦車などは比重が著しく低下していくであろう。一方で、艦船と航空機の重要性はますます増大する。こうした軍事的合理性を積み上げていって正面装備の在り方や額を決定すべきであって、「在日米軍再編に必要なので削減ありき」というのは論理的におかしい。 在日米軍再編では沖縄の基地再編問題を中心として地元の負担とそれに報いる地域振興策ばかりがクローズアップされるが、本質はそこにあるのではなくて、米軍と自衛隊が共通戦略の下でいかに統合して効率的な運用がなされるかである。いうまでもなく、その狙いは急速に増大する中国の軍事力に対応することである。そこを忘れて「地元の理解、地元への説明」ばかりが論じられるのは防衛政策として不十分にすぎる。説明すべきことは、安全保障上の意義であり、地元もさることながら、本来は国民全体で理解を共有すべき事柄である。ただ、地域振興策に関して、やみくもにばら撒くのではなくて、計画の進捗具合に応じて各自治体に交付する交付金制度が検討されているのは評価すべきであろう。



(参考記事)
[米軍再編閣議決定 普天間移設先、明記せず]
 政府は三十日の閣議で、在日米軍再編に関する日米合意の「迅速な実施」に向けた基本方針を決定した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設では、具体的な地名や計画を明記せず、沖縄県などとの協議機関で建設計画を策定するとした。ただ、小泉純一郎首相は同日、負担が増加する自治体への振興策などを盛り込んだ「再編円滑化特別措置法案」の今国会提出は困難だとの認識を示した。
 特別措置法案の提出について小泉首相は記者団に、「(今国会の)期間内になかなかそういう状況にならないのではないか」と指摘。安倍晋三官房長官も記者会見で「会期も限られている」と述べた。
 閣議決定されたのは、「在日米軍の兵力構成見直しなどに関する政府の取組について」。新たな地域振興策や在沖縄米海兵隊のグアム移転の経費負担を可能にする法整備の検討と、再編経費を捻出(ねんしゅつ)するため、現行の「中期防衛力整備計画」(平成十七-二十一年度、総額二十四兆二千四百億円)を見直すことも明記した。
 しかし、普天間飛行場の代替施設は「(一日の)日米安全保障協議委員会で承認された案を基本として」建設するとの表現にとどめ、キャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部にV字形の滑走路を建設する計画は明示しなかった。
(産経新聞) - 5月31日3時26分更新


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2 コメント

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各地方自治体の長 (PJ)
2006-05-31 09:23:53
ニュースでインタビューの映像が出ましたが、

見苦しい限りです。

一泡吹かせてやりたい・・・。

で、考えたのは、入札にしちゃえば?でしたw

基地対策費と地域振興費セットでいくらで基地受け入れ地域を募りますw

選考基準はより戦略的な効果が上がる地域であることと、費用が少なくて済むことwプラス後からゴチャゴチャ文句を言わないことww

沖縄では年に100億の予算だった筈が、年平均300億もかかってることを考えれば、ウチの方が安くつきますよぉ~なんて手を挙げる自治体が・・・いないんでしょうか?

いたらスカッとするんだけどなぁ・・・。





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PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-06-02 10:09:34
各地方自治体の長のコメントを見ておりますと、地方自治の本旨をはきちがえているのではないかと首を傾げたくなることが多々あります。政治家たる者、日本国全体の安全保障を考えないですむわけがないのです。

入札はなかなか難しいでしょうけど、本文でも書きましたとおり「計画の進捗具合に応じて各自治体に交付する交付金制度」は一応進歩だとは思います。
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