猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

ミサイル防衛、沖縄にPAC3配備方針、Xバンドレーダー試験運用開始

2006-06-29 02:32:44 | 日米同盟
 北朝鮮によって準備されているとされるミサイル発射実験に、関係あるといえばあり、ないといえばないとも言えるのだが、ミサイル防衛(MD)に関しての動きを二つご紹介する。一つは、先日ハワイで行われたミサイル防衛(MD)に関する日米事務レベル協議で、米側が地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)を、沖縄県の嘉手納基地(嘉手納町など)か嘉手納弾薬庫(沖縄市など)に年内に配備する方針を日本側に伝えていたこと。もう一つは、航空自衛隊車力分屯基地(青森県つがる市)で米軍ミサイル防衛用移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」の運用を26日に開始したことである。前者は、既定方針通りに話が進められているだけで、後者は、今回の北朝鮮のミサイル騒動を「口実」に前倒し実施したものである。
 PAC3は、MD構想では、イージス艦に搭載する海上配備型のスタンダード・ミサイル3(SM3)と組み合わせて弾道ミサイルを迎撃することが想定されている。MD構想は効果がないという批判があるが、迎撃ミサイルの命中率が仮に6割だとしても、二基組み合わせればどちらか一方が命中する確率は単純に計算して1.0-0.4×0.4=0.84となり8割を超える。確率論(というほどのものでもないが)でいうところの余事象というやつである。といっても、「本命」の中国は日本だけでも100基を超える核弾頭搭載弾道ミサイルの照準を合わせており、台湾向けは500基を超えると米国政府当局は見積もっている。沖縄にPAC3を4基配備したところでどうこうなる問題でもないのは確かにその通りではある。しかし、建て前上、専守防衛に最もかなっているシステムでもあり、さらなる配備が必要なのは当然である。
 ところで、MDでは弾道ミサイルを迎撃するという直接の効果もさることながら、日米同盟の強化、具体的には情報収集能力の飛躍的な向上という重要な「副産物」がある。北朝鮮の「火遊び」に対して、ここぞとばかりにXバンドレーダーの試験運用を開始したことからもそれが窺われる。米国はQDRなどで明確に述べている通り、中国が情報能力を向上させて「非対称戦」を遂行する能力を高めることに、極度の警戒をしているのである。また、情報収集能力向上により、弾道ミサイルの迎撃だけではなくて先制攻撃の用にも供することができる。
 それから、日米共同開発を通じて、我が国にとっても防衛産業を何とか維持する機会になる。防衛産業というものは放置しておくと衰退の一途をたどり、いざという時に取り返しがつかなくなる。MD構想の推進は、IT革命により急激に発展している民生技術を軍事技術に吸収しながら進められている。ということは、民生技術に集中してきた我が国の技術力も活かしやすい。
 以上のような目的のためには防諜法が欠かせない。情報の取り扱いが危なっかしければ、収集した重要な情報は我が国にはもたらされず、重要な技術はブラックボックス化されて我が国の知るところとならない。日米同盟維持のための「おつきあい費用」という意味はないわけでもないが、それだけのためならば高くつきすぎというものである。せっかく大枚をはたくのだから、最大限の効用が得られる使い方をすべきである。



(参考記事1)
[在日米軍、沖縄にパトリオット3…年内配備方針]
 今月17日にハワイで行われたミサイル防衛(MD)に関する日米事務レベル協議で、米側が地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)を、沖縄県の嘉手納基地(嘉手納町など)か嘉手納弾薬庫(沖縄市など)に年内に配備する方針を日本側に伝えていたことが、明らかになった。
 北朝鮮などの弾道ミサイルを想定したもので、在日米軍へのPAC3配備は初めて。500~600人の陸軍米兵が新たに駐留する見通しで、配備されるPAC3は4基程度と見られる。日本政府は基本的に応じる方針だ。
 PAC3の防護範囲は半径数十キロ・メートルで、東アジアの米軍拠点である沖縄地域の防空能力を高めるのが狙いだ。イージス艦に搭載する海上配備型のスタンダード・ミサイル3(SM3)と組み合わせて弾道ミサイルを迎撃する。
 北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300キロ・メートル)は相当な確度で迎撃できるが、「テポドン2号」(射程約3500~6000キロ・メートル超)には十分に対応できないとされる。
(2006年6月26日3時29分 読売新聞)

(参考記事2)
[負担増「やむを得ない」 PAC3配備で外務沖縄副所長]
 外務省沖縄事務所の倉光秀彰副所長は26日、在日米軍再編合意に基づくパトリオット・ミサイル(PAC3)の嘉手納基地への配備について、正式な配備決定の通知はないとした上で個人的見解と断りつつ「仮に配備されても、専守防衛の日本に最も似つかわしいもので、間違っても攻撃手段とならない。兵員が増えることで負担増と言われればやむを得ない」と述べた。パトリオット配備の撤回を求めた共産党県委の赤嶺政賢委員長(衆院議員)らに答えた。
 この発言に対し赤嶺委員長や古堅宗嘉書記長らは強く反発。要請に同行した中村重一北谷町議は「冷戦時代に米ソが緊張関係にあった時ですら嘉手納基地にミサイル配備はなかったのに、なぜ今になって配備か」とただした。
 地元自治体への説明について倉光副所長は「全力を尽くしてご理解をいただくよう努める」と地元から反対された場合でもあくまで地元の説得を続ける姿勢を強調した。
 この日、赤嶺委員長らは那覇防衛施設局と県にも要請。施設局の岡田康弘施設部長は「日米で検討中」と話すにとどまった。県では花城順孝知事公室長が応対し「政府から説明を受けていない。今後の推移を見ながら検討し、県の対応を考えたい」と述べた。
(琉球新報) - 6月27日9時41分更新

(参考記事3)
[新レーダーでテポドン監視 米、前倒しで試験運用]
 【ワシントン25日共同】米政府当局者は25日、北朝鮮が進めているとされる長距離弾道ミサイル「テポドン2号」発射実験準備を受け、航空自衛隊車力分屯基地(青森県つがる市)で米軍ミサイル防衛用移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」の運用を26日にも試験的に始め、発射の警戒・監視に当たる考えを明らかにした。
 Xバンドレーダーの運用開始は当初夏ごろに予定されていた。弾道ミサイル迎撃のためのミサイル防衛システムを推進するブッシュ米政権は、テポドンが発射された場合は迎撃も検討しているとされ、運用開始の前倒しは発射をけん制する狙いがある。
(共同通信) - 6月25日20時56分更新


☆ぜひとも、Blog●Rankingをクリックして、ランキングに投票して応援してくださいm(__)m


最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>重要な技術はブラックボックス化されて・・・ (PJ)
2006-06-29 12:35:26
早く防諜法を成立してもらいたいですね。

中国の核については、ミサイル防衛で防いだとしても、先制攻撃で防いだとしても、放射能の塵が日本には降り注いでくるのではないでしょうか。

これをどのようにして除去するのか心配です。
返信する
PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-06-30 02:28:39
>中国の核については、ミサイル防衛で防いだとしても、先制攻撃で防いだとしても、放射能の塵が日本には降り注いでくるのではないでしょうか。



ミサイル防衛ではターミナル段階(着弾する直前)での迎撃も想定されているんですが、それをしたら放射能を撒き散らすことになり被害甚大です。ブースト段階やミッドコース段階だったらまあなんとか。

中国に核を使わせてはなりません。そのためにも、これで絶対というわけではないにせよ、日米同盟の強化は必須です。
返信する
MDの目的は情報解析のシステム化にある (むじな)
2006-06-30 14:43:47
>MD構想は効果がないという批判があるが、迎撃ミサイルの命中率が仮に6割だとしても、二基組み合わせればどちらか一方が命中する確率は単純に計算して1.0-0.4×0.4=0.84となり8割を超える。



ミサイルと撃ち落とす、という表向きの目的からみれば、MDは意味がない。

しかし、MDの本当の目的は、敵方ミサイルの発射位置と方向性を解析することで、情報収集・解析の精度を向上させ、同盟国で共有・システム化することにある。



そもそもミサイルをすべて撃ち落すなんて、はじめからできない相談。しかしあえて高い目標を目指すことで、実際に解析の精度をアップさせることができるわけ。



そういう意味では、MDは無意味ではなく、ちゃんと成果が出ている。

返信する