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来店型保険ショップ、無料相談の裏に商談あり 執筆者 保険コンサルタント 後田亨(日経無料記事)

2012-06-12 05:57:24 | Weblog
来店型保険ショップ、無料相談の裏に商談あり 執筆者 保険コンサルタント 後田亨 2012年6月8日 日経(無料記事)
http://mx.nikkei.com/?4_59929_56313_1
 「アドバイスを受けるつもりで行ってみたら、結局、セールスでした」「想像以上に高額なプランを提示されて困惑しています」。いわゆる「来店型の保険ショップ」の窓口に保険相談に行かれた方から、戸惑いの声をお聞きする機会が増えています。
 このところ、大都市の一等地やショッピングモール等への出店が目立つショップの売りは「中立的なアドバイス」や「各社の保険商品の中から、比較検討してお客様に最適な保険をおすすめする」といったものでしょう。
 ショップの実態は、複数の保険会社の商品を扱う「乗り合い代理店」ですから、各店舗が掲げる「理想」としては理解できます。
 ただ「現実」はどうでしょうか? 「相談は何度でも無料」としている限り、店舗の出店や維持に要する莫大な経費を上回る利益を出すには、商品販売に注力するよりありません。
 実際、「販売を前提としたアドバイスや商品選び」に執心している一面もうかがえます。
 40代後半のご夫婦の事例があります。子供さんはいらっしゃらないので、ご主人が加入中の大手生保の保険の保障額を減らしてもいいのではないかと考え、ショップの窓口に行かれたそうです。
 ところが、窓口で提案されたのは、ご主人の死亡保障を確保する「収入保障保険」と、お2人の「医療保険」に加えて、保険料を一括で支払う「介護保険」でした。
 介護保険の保険料は、2人分で1000万円近くにもなります。銀行で満期になるお金があり、投資信託の購入を勧められていることを話したところ、「介護保険」の必要性と保険料を一括で払い込むメリットを説明されたそうです。
 ご主人は自営業で奥様は専業主婦なので、ご主人の万が一に備える保障を大手の商品より安く持てる「収入保障保険」の提案は、間違っていないと思います。
 しかし、既に1000万円くらいの手元資金があるご夫婦に、入院日額1万円の「医療保険」は不要でしょう。保険料の払い込み総額は、2本分で400万円位にもなるのです。お客様の関心が高く売りやすい保険を売るという方針なのでしょうか?
 そして「介護保険」です。保険料を一括で払うと月払いにするより、料金負担が抑えられるし、将来は解約返戻金を老後資金として利用することもできるという説明は、嘘ではありません。
 とはいえ、40代後半のご夫婦に介護費用がかかる可能性が高まるのは30年後くらいのことです。
 不慮の事故等によって、今日・明日にでも要介護状態になる可能性が皆無だとは誰にも言えないとしても、現時点で多額の自己資金をまとめて投入すべきでしょうか?
 老後資金についての説明はさらに疑問です。設計書に記載されている1年後の解約金は約930万円ですから、販売手数料が70万円ほどかかると推察されます。手数料が高い商品は資産形成には不向きです。
 「中立」や「最適」にこだわると、自営業の方の老後資金準備であれば、「確定拠出年金」や「小規模企業共済」の利用が考えられますが、そんな案内は全くなかったと言います。
 窓口の人に知識がないのか、販売手数料が発生しない選択肢については言及しない方針なのか、いずれにしても「保険ありき」「販売ありき」と疑われても仕方がないでしょう。
 今回のような提案が日常的に行われているのか、それとも例外にすぎないのかはわかりません。しかし、来店型保険ショップという、高いコストがかかる業態を考えると、「無理もない提案」だと感じます。
 そもそも「中立的なアドバイス」というものが存在するとは思いませんが、アドバイスを売りにするのであれば、「アドバイス料」をお客様に求める方が自然でしょう。
 私は、ショップが何度でも無料で対応できるのは、基本的に「相談」ではなく「商談」だろうと思っています。


 
 う~ん。後田亨さんが執筆する記事は切り口が鋭くて無料で読める記事ということもあり常に注目しているのですが、これは当たっているところとそうでないところがあると思います。
 私も歴史的な低金利が続く状況下では保険で貯蓄するメリットは少なく、むしろ保険会社が経営破綻する可能性を考慮すると、貯蓄性保険商品はあまり積極的にお勧めはしたくありませんが、個人的に気になった個所について独自にコメントを述べたいと思います。

そもそも「中立的なアドバイス」というものが存在するとは思いませんが、アドバイスを売りにするのであれば、「アドバイス料」をお客様に求める方が自然でしょう →
 本来ならば別途コンサルティングフィーを請求して保険商品本体からは必要な費用のみ請求するのが筋ですが、残念ながら日本では「相談だけなら無料」という体質が染みついていて、販売手数料で収益を挙げざるを得ない社会構造が既に出来上がっています。

「相談は何度でも無料」としている限り、店舗の出店や維持に要する莫大な経費を上回る利益を出すには、商品販売に注力するよりありません。→
 これは正解です。ただいわゆる「保険のおばちゃんに勧められて加入する」ような生命保険も、ほとんどは専属の保険募集人経由。机の決まっている事務職の方なら、食事から戻ったら「飴玉とパンフレットが置いてあった」という光景に何度も遭遇していると思いますが、これも個人事業主である保険募集人の経費の中から支払われていて、費用対効果という意味では、相談者が自ら足を運び複数の保険会社の商品から選択できる保険代理店よりも販売効率で劣るケースも決して少なくないように思います。

子供さんはいらっしゃらないので、ご主人が加入中の大手生保の保険の保障額を減らしてもいいのではないか →
 家計の見直しを行う際には、住宅ローンの変動金利への見直しと共に当然最優先で見直す箇所ですので、目の付けどころとしては悪くない判断です。
 ご主人が結婚前に定期付終身保険として多額の死亡保障をかけていらっしゃるのならば、子供の生活費の保障分はカットできる可能性があります。

想像以上に高額なプランを提示されて困惑しています →
 そもそも保険の見直し= 保険料支払額が削減できると思いこんでいないでしょうか? どうも一般家庭では、生命保険や医療保険には強い関心を示す半面で、マイホームを保有の方は火災保険、車を保有の方は自動車保険には関心が向くようですが、それ以外の損害保険や第3分野の保険には全体的に関心が薄く必要な保障が不足している傾向が強いように思います。
 このケースではお子さんがいらっしゃいませんので該当しませんが、例えば小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では子供が物を壊した時の損害に備える個人賠償責任保険を検討する必要があるケースもまま見られます。(昔のようになあなあで済まされる時代ではありません)

窓口で提案されたのは、ご主人の死亡保障を確保する「収入保障保険」と、お2人の「医療保険」に加えて、保険料を一括で支払う「介護保険」でした。
→ 公的な介護保険制度が整備されましたが、現在の1割の一部負担率が数十年後も、1割のままである保障はありません。あまり考えたくないことですが、健康保険の一部負担金率のように段階的に引き上げになる可能性もありますし、最近は介護保険対象外の付加サービスを提供する事業者も増えています。
 30年先だから考えなくてもよいというものでもありませんし、実際に加入するかどうかは別にしても、お子さんがいない分、将来のことをより真剣に考える必要性は高いと思います。

既に1000万円くらいの手元資金があるご夫婦に、入院日額1万円の「医療保険」は不要 →  
 文面からだけでは、現在自営業であるご主人の公的年金支給見込額がわかりませんが、若い頃に独立された方ならば、公的年金支給額そのものが少ない可能性(当然貯蓄を取り崩して老後を過ごすことになります)。
 逆に最近独立された方ならば、退職一時金をそのまま短期の定期預金に預けた可能性もあり、1000万円くらいの換金可能な手元資金があるからといって、その金額だけをもって、必ずしも十分な貯蓄額とは言えない可能性があります。
 他の医療保険の加入状況、入院保険金を受け取る時期によっても変わってきますが(今はデフレで実感しにくいと思いますが)貨幣価値の目減りを考慮せず、今現在必要と思われる額を5000円(おそらく後田亨さんが提案した額)と見積もって、十分な保障は本当に得られるのでしょうか???
 手術による入院日数は近年短縮される傾向にあり、もし、プランナーの示した額が日額2万円なら、私も「多すぎる!」と判断しますが、日額1万円を5000円に引き下げることで月額保険料がいくら下がるか(節約できるか)も比較検討した上で、減額するかしないかを判断したらよいでしょう。
 加えて、神経質な方の場合は、大部屋で長期間入院するのは我慢しがたい(同じ部屋の患者のいびきがうるさい、あるいは呼吸の音が気になるなど)という理由から個室に入ることを希望して差額ベッド代がかかってしまうケースも考えられます。
 田舎の公立病院ではあまり見られませんが、都会の私立の病院では、4人部屋でも窓際の2つのベッドについては差額ベッド代が発生するケースもありますし、その地域の実情や相談者の性格なども考慮の上で、どれだけの入院日額が必要かを取り決めるのが良いのではないでしょうか。

「中立」や「最適」にこだわると、自営業の方の老後資金準備であれば、「確定拠出年金」や「小規模企業共済」の利用が考えられますが、そんな案内は全くなかったと言います。
→ 聞かれたことにしか答えないという体質は問題ですが、確定拠出年金については、度重なる制度改正や、毎月の拠出限度額が国民年金基金と合計して月68000円までが限度など、一定以上の知識のあるプランナーでないと、あやふやな知識で誤誘導してしまうリスクも高いと個人的には考えます。
 また、どのコース(投資信託)が良いかを問われても値動きの大きな株式投信は、購入直後に株価が急落する可能性を考えると保険屋としてはアドバイスしにくいのではないでしょうか…。
 株式投資経験のない方など、確定拠出年金に加入しても元本確保型商品で固めてしまい満足な運用利回りを引き出せない可能性もあります。
 小規模企業共済については、掛け金納付期間が1年未満での解約はお金が戻らず契約期間が20年未満の場合は元本割れする(http://www.smrj.go.jp/skyosai/qa/seido/050549.html)といった諸事情を考慮すれば、このお客様の年齢(40代後半)から新規加入するのは現実的ではありません。お客様が金融商品にあまり詳しくないような場合には、混乱を招かないようにあえて言及しないケースも考えられます。