ボクの 次期FX

Anarchy In The UK - NeverMind The Bollocks (1977)　　


 母さん、ボクの 次期ＦＸ は どうしたんでせうね？
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
 谷底へ落とした あの 次期ＦＸ ですよ。

 母さん、あれは好きな 次期ＦＸ でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谷で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。

 母さん、ほんとにあの 次期ＦＸ どうなったでせう？
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
 あの 次期ＦＸ の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。

母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
 昔、つやつや光った、あの伊太利麦の次期ＦＸ と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。