学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

春の風、梅林、今宵

2016-03-03 23:01:54 | その他
春の風に鼻をくすぐられながら、とある庭先に植えられた梅の、その盛りを見ていた。梅を見て、私はどこか懐かしい心持ちがしていた。ふと思い出したのは、私が学生時代に見た黒田清輝の《梅林》だった。晩年の黒田が描いた作品で、若い頃の写実性はないが、強いタッチでしっかりと梅の木のイメージを捉えているものだ。私の目の前にある梅の木は、黒田のそれとよく似ていた。実景から絵画を思い浮かべる感覚は久し振りのことである。

久し振りといえば、今日は妻が実家に帰っているため、一人きりの夜を過ごしている。

私は10年以上、一人暮らしをしてきた。晩ごはんは好きなものだけ食べる。浴びるほど酒を飲む。本を好きなだけ読む。ブログをガリガリと書いていく。深夜はラジオを聞いて寝る。そんな生活をずっと続けてきた。

結婚してから、ひとりの時間がふたりの時間に変わった。晩ごはんを食べながら、お互いの1日の出来事を話す。食後は、ふたりでDVDの映画を見たり、趣味の時間を取ったり、部屋の掃除をしたり、ときどき酒で乾杯をする。当初は共同生活になかなか慣れなかったが、今ではそれが日常になって、違和感もさほど感じなくなった。

そうした生活に慣れてきたため、以前のような一人きりの夜がなんだか落ち着かない。人間とは困ったものだ。落ち着かなさを感じながらも、今宵もいつものように更けてきた。時間はどうにも止まらない。そろそろ筆を置いて、寝ることにしよう。
コメント
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