学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

鶴見俊輔『柳宗悦』

2010-03-23 16:48:10 | 読書感想
ここ数日、突如としてブログが編集できなくなってしまい、一週間近くご無沙汰になってしまいました。ブログを読んでいただいている方々にお別れも言わないまま、ブログを終了させなければならないのか…と心配していましたが、今朝方ようやく使えるようになりました。大変失礼を致しました。

この一週間のうちにいい評論を読むことができました。哲学者鶴見俊輔氏が著した『柳宗悦』です。私がこれまで読んだ柳宗悦論のなかで最も面白いと思いました。全10章から成り立ちますが、なかでも「白樺派の文体」については興味深いものです。

以前、このブログでも柳の文章について紹介したことがありました。柳の文体は、読む人に優しく手を差し伸べて、丁寧に論を進めていく特徴を持っています。また、実は柳に関わらず民藝運動に関わった人たちの文章は、誰しもが似たような特徴を持っているんですね。でも、彼らがどこでそのような文章の書き方を学んだのか、私のなかで謎でした。その謎が、なんと「白樺派の文体」で明らかにされていたので驚いたのです。

『白樺』とは、明治43年に創刊された文芸雑誌です。文学、美術、音楽など幅広いテーマを扱い、特に美術ではセザンヌやゴッホ、マティスなどをいちはやく紹介しました。『白樺』柳宗悦はその同人だったんですね。鶴見氏は里見の言葉をひいて『白樺』が文体上さけた3点を紹介しています。「いい子病」「意味ありげ」「知ったかぶり」です。そしてバーナード・リーチも一枚かんでいたこと(彼の存在が最も大きいよう)。柳の文体は、たしかにこの3点をさけているように思えます。彼の文体はここで鍛え上げられたのでしょう。

と、するのならば鶴見氏はここまで言及はしていませんが、若い濱田庄司や芹沢介らは間違いなく『白樺』を読んでいたことでしょう。もしかしたら彼らの文章は『白樺』から学んでいたとしたら…。私はとても納得がいく(笑)

このブログでは柳の「白樺派の文体」についてご紹介しましたが、鶴見氏は「民藝」のエリアのなかにどっかりと入り込まず、その外側から論を組み立てていますので、今までにない柳宗悦論ではないかと思います。柳宗悦に興味の或る方は必見の1冊です。

●『柳宗悦』鶴見俊輔著 平凡社 1994年
コメント
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