不定形な文字が空を這う路地裏

虚勢の旗はみすぼらしいけれど











ろくな気分じゃない
ろくな気分じゃない
いつでも
この時間には
浮わついた調子がどこかへ消えてしまって
夜気の冷たさに心が沈殿を始める
閉め切っているのに揺れるブラインド
何を流し込んでも
すぐに渇いてしまう貪欲な喉
思い通りになることなんて
意外と多いものだとたるんだ錯覚に踊らされていた
欠落の優雅なディスコビート
4Wのスピーカーでも
過ちを笑うには充分すぎる響き具合さ
人生は割とマガジン
面倒なところを読み飛ばしてしまって
だけど
そこには結構大切なことが記されていたみたい
あのページはどこだ
あのぺーじは
めくってみるけど辿り着けない
行き過ぎてからいつも間違いに気がつく
卓上の小さな時計
電池が切れ始めて
過去と未来を行ったり来たり
最小規模のタイムトラベラー、時間軸を外れたら
たいてい歩みを止めてしまうだけさ
もう駄目だと思う前に何を落とした
もう駄目だと思う前に
あんたはいったい懐から何を捨てたんだい
拾いあげてみたら
それは何かを書き込む予定だった
小さな白いノートだった
それは
生まれる前に死んだポエジー
生まれる前に死んだポエジー生まれる前に死んだポエジーは
書かれてしまうことよりずっと悲しい
言葉の前に閉じられた唇
幽閉された
文字にも音にもなれない気持ち
メランコリックだと思うかい
そいつらのことをメランコリックだと
生まれてからならそれも妥当なんだけどね
受け止めるために
綴られた旋律であったなら
だけど白紙
だけど
それは白紙に過ぎない
負けると知る前に死ぬ10代みたいで
悲しいけれどとても滑稽でもある
哀れになるまで生きなくちゃ
なにがあろうと
老いぼれて哀れになるまで
歩けなくなっても
長椅子にしがみついて
悪足掻きの何がいけない
俺はそこまでもがくつもりだよ
叶わなかったノートなんか捨てて
文字で塗り潰したノートを
色の無い
感情の絵画を
そんな戯れに
ずっと奪われながら
誇れなくとも
儚かろうと
それがもっともだという顔をして
ろくな気分じゃない夜を
呑気なクロールで
長く息継ぎをして
そんな海で会えたらいいね
そんな海で会えたら
まんざらじゃないねって笑いながら
誇れない蓄積を辿って
せいぜい塗り潰していこうじゃないか

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