河童アオミドロの断捨離世界図鑑

ザスドラス博士の弟子の河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

ソラリス家族 第3回

2017年08月08日 | シャーリー★ダンの悲劇
夢のせいでドクドクいっている心臓の鼓動ががまた速くなりだした

「ど、どなたですか」

「警備員の山川です
大きな声がしたものですから
大丈夫ですか」

この支店には警備員さんが居たのだ。
ほっとした私はドアを開けた

「驚かせてすみません、何でもありません」

「そうでしたか、安心しました
ところで先ほど門の所に
あなたへの面会の方がいらっしゃいまして
こちらへお連れしました」

「どうぞこちらへ」

「あなた、こんばんは」

「だ、だれですか」

「何をおっしゃりますの、とし子ですよ
あなたの妻のとし子です」

「私は今の47歳までずっと独身だったんだ
社内でも化石男と言われていたくらいだ」

「1年の別居でもうお忘れですか
とにかく中に入れてください」

その女性は制止する隙も無く私の脇をすり抜けて
部屋の中へと入ってきた

「じゃあ私はこれで
何かありましたら、そこの直通電話でご連絡ください
私は門の所の守衛室に寝泊まりしておりますから」

警備員の山川さんは笑顔で歩き去っていった。
私はこの孤立したソライロ支店の中で見知らぬ女と二人きりになってしまったのだった。

夜の暗闇の中ではすべてがマボロシのようにも思える。
私には本当は妻がいたのかもしれない。
昨日までの街での生活が夢の中の出来事で。
今日始まったこの生活こそが夢から覚めた現実世界なのかもしれない。
沈黙した空気の中でまた潮騒の音だけが大きく聞こえてきた。

・・・続く・・・

西方浄土

2017年08月08日 | シャーリー★ダンの悲劇
毎年引越ししていると色々な方角の部屋に当たるが、
真北を向いていても最上階で向かい側に建物が無ければ、
結構明るいし、夏場は朝日も夕日も見れるし、日中も暑くないし、
冬場も一日中屋根に日が当たっているので極端に寒くは無い、
光も空に反射した間接光なので物の撮影に向いているかもしれない。
南向き陽当たり良好という物件は沖縄あたりでは地獄である。

パクチーキャンディ開封

2017年08月08日 | シャーリー★ダンの悲劇
置いたままでもしかたないので
勇気を出してパクチーキャンディを食べてみた
口に入れた瞬間に顔が歪んだので
良い仕事をしているというか
パクチーそのものの味がする
パクチーと聞かなければドクダミと思うような味だ
キャンディにする必要があったのだろうか
というか買う人いるのか



ソラリス家族 第2回

2017年08月08日 | シャーリー★ダンの悲劇
ソライロ支店はカプセルホテルを大きくしたような個室が共用部をぐるっと囲んで配置され、
中央にはミーティングテーブルがあった。

個室は全部で4つあるが、全員失踪したはずなので、今は私一人しか滞在していないはずである。
私はまるで映画のセットのように無機質な部屋のベッドに横たわった。

「とりあえず初日の今日はもう遅いし寝るしかないな
SF映画だと昔別れた妻や子供が出現したりするけど
あれはフィクションだし映画の中での空想話だ」


部屋の照明を消すと、月が出ているのか窓からの光だけでも充分な明るさだった。
潮騒の一定したリズムがすぐに八田四郎を眠りへと導いた。
ローカル列車の揺れで疲れた四郎の脳みそは過去の思い出を夢として蘇らせていた。

蒸し暑い夏の日だった。
おばあちゃんの家の裏庭でトノサマバッタを捕まえた僕は
右手で逃げぬようバッタの腹をつかみ、左手にガリガリ君ソーダ味を持っていた。
夏の太陽で溶けたアイスの雫はポタリポタリ、まるでヘンゼルとグレーテルが道しるべに落とすパンくずのように
僕の歩いた軌跡を乾いたアスファルトの上に点々と記録していった。
「おーい四郎君」向かい側の竹やぶの前で同級生の押麦孝太郎が呼んでいた。
「俺、カマキリ捕まえたぜ、おまえのトノサマバッタとケンカさせようや」
「いいけど、カマキリのほうが強いだろ」僕はしかたなく同意した。
道路に置かれたカマキリとバッタは見合ったままどちらも固まったように動かなかった。
アイスの水がカマキリに落ちたその瞬間だった。
カマキリの身体からものすごい勢いで黒い糸のようなものが出てきて僕らに向かってきた。
「うわーーーーー」僕と押麦孝太郎は二人とも半分腰を抜かしながら後すざりした。
カマキリから出た黒い生物は僕らをグルグル巻きにして、ついにはおばあちゃんの家も巻き込み、
村ごと真っ黒に包み込んでしまった。


「うわーーーーーーーーーーー」

「はあ、はあ、はあ、はあ」

汗をびっしょりかきながら私は目が覚めた。

「ゆ、夢だったのか、えらくリアルな夢だった
疲れて脱水症状になってるのかな」

私は水を飲むためにバスルームに向かった。
その時だった。

「とんとんとん」

外からドアをノックする音がしたのだ。

・・・続く・・・