夢のせいでドクドクいっている心臓の鼓動ががまた速くなりだした
「ど、どなたですか」
「警備員の山川です
大きな声がしたものですから
大丈夫ですか」
この支店には警備員さんが居たのだ。
ほっとした私はドアを開けた
「驚かせてすみません、何でもありません」
「そうでしたか、安心しました
ところで先ほど門の所に
あなたへの面会の方がいらっしゃいまして
こちらへお連れしました」
「どうぞこちらへ」
「あなた、こんばんは」
「だ、だれですか」
「何をおっしゃりますの、とし子ですよ
あなたの妻のとし子です」
「私は今の47歳までずっと独身だったんだ
社内でも化石男と言われていたくらいだ」
「1年の別居でもうお忘れですか
とにかく中に入れてください」
その女性は制止する隙も無く私の脇をすり抜けて
部屋の中へと入ってきた
「じゃあ私はこれで
何かありましたら、そこの直通電話でご連絡ください
私は門の所の守衛室に寝泊まりしておりますから」
警備員の山川さんは笑顔で歩き去っていった。
私はこの孤立したソライロ支店の中で見知らぬ女と二人きりになってしまったのだった。
夜の暗闇の中ではすべてがマボロシのようにも思える。
私には本当は妻がいたのかもしれない。
昨日までの街での生活が夢の中の出来事で。
今日始まったこの生活こそが夢から覚めた現実世界なのかもしれない。
沈黙した空気の中でまた潮騒の音だけが大きく聞こえてきた。
・・・続く・・・
「ど、どなたですか」
「警備員の山川です
大きな声がしたものですから
大丈夫ですか」
この支店には警備員さんが居たのだ。
ほっとした私はドアを開けた
「驚かせてすみません、何でもありません」
「そうでしたか、安心しました
ところで先ほど門の所に
あなたへの面会の方がいらっしゃいまして
こちらへお連れしました」
「どうぞこちらへ」
「あなた、こんばんは」
「だ、だれですか」
「何をおっしゃりますの、とし子ですよ
あなたの妻のとし子です」
「私は今の47歳までずっと独身だったんだ
社内でも化石男と言われていたくらいだ」
「1年の別居でもうお忘れですか
とにかく中に入れてください」
その女性は制止する隙も無く私の脇をすり抜けて
部屋の中へと入ってきた
「じゃあ私はこれで
何かありましたら、そこの直通電話でご連絡ください
私は門の所の守衛室に寝泊まりしておりますから」
警備員の山川さんは笑顔で歩き去っていった。
私はこの孤立したソライロ支店の中で見知らぬ女と二人きりになってしまったのだった。
夜の暗闇の中ではすべてがマボロシのようにも思える。
私には本当は妻がいたのかもしれない。
昨日までの街での生活が夢の中の出来事で。
今日始まったこの生活こそが夢から覚めた現実世界なのかもしれない。
沈黙した空気の中でまた潮騒の音だけが大きく聞こえてきた。
・・・続く・・・