河童アオミドロの断捨離世界図鑑

河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

海辺のカリン 2009年最終回

2009年12月31日 | Next Time/Next Place
「父さんはな、自分の殻を破りたかったんだ

だからシオマネキを見て、直感的にあいつなら俺の殻を破れるとみた

しかし、海の底は冷たくて暗黒だった

マリンスノーは降りそそぎ

リュウグウノツカイは泳ぎまわり

自分の心の重さのせいでそのまま深海まで行ってしまった

心の闇と深海の闇は同じ色だった

だから、もう、そこでは自分と世界との境目は完全に無くなっていた

つまり殻をやぶる、とは物理的な事ではなかったんだよ

心の色をありにままに受け止めることだな

もし、すべての色が消えて透明になれば

その時、世界は本当の姿を現すと思うよ」


三日ぶりに海から上がってきた父さんは

一気にしゃべり終えると

濡れた頭をタオルで拭いた

薄くなった頭頂部が光って

まるでカッパのようだった






海辺のカリン 連載2

2009年12月28日 | Next Time/Next Place
父さんと海に行く

午後の太陽はマーマレード色で、僕と父さんは

その柔らかな日差しの中、防波堤を歩いた

防波堤から糸を垂らし、シマシマの魚を釣ったり

不思議な形の巻貝を拾って耳に当て

遠くの世界の風音を聴いたりした

突然、父さんが遠くを見つめて言った

「誰かが遠くで手を振って俺を呼んでいる」

「あれはカニだよ、シオマネキだよ、行っちゃだめだ」

「いや、呼ばれたからには行かねばならん」

父さんはそのまま、シオマネキの誘うまま岩場に行き

その先の海に入っていった

そして帰ってこなかった




海辺のカリン 連載1

2009年12月27日 | Next Time/Next Place
好評だった「海辺のキリン」シリーズは「海辺のカリン」となりました。
どうもこの筆者は思いつきでタイトルだけ考えて
先のストーリーとエンディングを用意してないらしく
何を書こうとしていたか忘れたみたいです

粉雪舞う年の瀬のトラファルガー広場を歩く一人の老人
彼は晴れやかな顔をしていた

昨日までの守銭奴のわしではないのだ
世界は今からだって変えられるのだ

ウエストミンスターの除夜の鐘が鳴り終わる頃には
奇跡が起こるじゃろうて

わしは未来の精霊の言った事など信じはせぬて
未来はこの現在の瞬間に創造されていくものじゃ
前にも後ろにも時間などありゃせん

マクドナルドでコーヒーのおかわりが出来たなんて
知らなかったくらいじゃ

そして、カリンの瓶を開ける時、奇跡が起こるんじゃ

忘れていた夏の記憶が瓶の中から流れ出し
街は一気に夏の気配になるじゃろうて

老人はそこがトラファルガー広場ではなく
水道橋筋商店街であることにまだ気づいてはいなかった

クリスマスの朝

2009年12月26日 | Next Time/Next Place
第3の未来の精霊が立ち去ってから
わしは目が覚めたんじゃ

「宇宙というのは運動場なんじゃよ
世界は無限じゃ

いやな事や苦しい事をするために
君は生きてるんじゃない

好きな事を好きなだけするために
世界は宇宙は広いんじゃよ

何千メートル走ったって大丈夫じゃ
世界はすべてを受け入れるようにできておる
宇宙は君のために用意された時間じゃ

それが神様のやりたかった事じゃ」

老人は窓の下の子ども達に向かって叫んでいた

ドクロのクリスマスイブ

2009年12月24日 | Next Time/Next Place
雨も雪も降りそうにないイブの夜

高台の怪しげな病院の
薄暗い部屋へと連れ込まれた
口に猿ぐつわ、両手を拘束され
頭をベルトでしばられた

「お前がアンドロイドなのはバレているんだ
CTスキャンでアダマンチウム合金の構造を調べてやる
20秒待て」

目の前で青い光が点滅し始めた

おお、これが今年のクリスマスイルミネーションか

このまま未来に連れていかれるのか

と気を失う直前

「ほれ、これがおまえのアダマンチウム合金の頭蓋骨だ」と
パソコンモニターを見せられた。
マウスでグリグリ動くので見ていて楽しい。
頭蓋骨は意外にスカスカである。貯金箱に使えそうである。

3Dで見る自分のドクロはキムタクのように美しかった


極楽寺

2009年12月22日 | Next Time/Next Place
今頃思い出すというのも失礼な話であるが
子どもの頃住んでいた所にあった寺の名前は
ひょっとして「極楽寺」だったのか!
これが極楽通信の無意識のルーツかも

ほとんど記憶になかったが
カリンの香りで思い出した

寺の境内にカリンの木があって
秋から冬にかけて黄色くて独特の香りのする実を付けていた
毎年、カリンの実を何個かもらっていたが
食べるには硬すぎてまずそうだし
ユズのかわりに風呂に浮かべるしか使い道が無かったように思う

プルーストの
「失われた時を求めて」
と同じや

カリンの香りで過去を思い出せるとは
ラベンダーの香りでタイムワープできるくらい
おしゃれかも