『江戸の坂、東京の坂』その81。東京の坂道をずいぶん巡ってきたが、新宿区中井には他にはなかなか無い坂道がある。というのは山手通りから垂直に走る中井通りを底として8本の坂道がほぼ平行に並んでおり、しかもその名前が『一の坂〜八の坂』まであるのだ。
西武新宿線中井駅は山手通りのちょうど下に位置し、西武新宿線、妙正寺川と略平行に中井通りがある。この坂を一の坂から順番に1つずつ訪ねてみた。
一の坂は中井通りよりやや北側の山手通りからぐにゃりと曲がるように上っていく狭い坂道である。途中には児童公園があり、そこからは山手通りを一望できる。実は元は駅前から放射状に一の坂、二の坂とあったが、山手通りの改修に伴い道の形が変わってしまったようである。
一の坂を降りて中井駅方向に行き、右斜めにのぼるのがか、二の坂、この坂は別名蘭塔坂と呼ばれている。蘭塔とは卵型の僧侶の墓石のことで、かつてこの辺りには寺が多く、蘭塔が並んでいたのでこの名前が付けられたらしい。
中井通りを少し歩くと三の坂、この坂を上ったところには法華宗獅子吼会という大正時代に設立された宗教法人がある。
中井通りに戻り、先に行くと右側に林芙美子記念館が見えてくるが、その手前の石段の坂道が四の坂である。記念館は林芙美子の旧宅を改装したもので、今回は中に入らなかったが、屋根や石蔵は外からも見える。
彼女が中井に暮らし始めたのは1930年頃で当時はまだ人通りも少なかったようである。旧宅は1941年に新築したもので庭の木立も当時のまま、そして1951年に亡くなったのである。(以下、次回)