湖東三山最後は百済寺に参拝する。百済寺(ひゃくさいじ)は寺伝によると聖徳太子が光る木を見つけ、これに十一面観世音を刻んだところから植木観音と呼ばれたとのことであるが、歴史に名が出てくるのは11世紀のことで聖徳太子とはやや時代が合わないのかもしれない。その後百済寺300坊と言われるほど栄華を誇ったが、織田信長に焼き打ちされ、堂宇は全焼し、ようやく江戸時代に再興された。
百済寺の入口で拝観料を納めるとかつて参道として使われていた苔むした石段に出る。そこには五木寛之が百寺巡礼の際の文が書かれていて、ふとその段を読んだことを思い出した。
これを左に上がっていくと本坊の喜見院があり、その横には立派な池のある庭に出る。回廊式庭園は周りに松と紅葉を配し、紅葉の頃は素晴らしいだろうことが容易に想像がつく。飛び石に気をつけながら池を回るがその風景が変わるのが面白い。
一段が少し高さのある石段を登ると目の前に本堂が見えてくる。檜皮葺き本堂は堂々としている。ただ、他の湖東三山である西明寺や金剛輪寺は内陣まで入れ、さらに仏像もそばで鑑賞できたが、ここはガラス越しのため、よく見えないのが残念である。
横には五重塔跡、さらに鐘楼もあり、鐘をつくことができる。小生も鐘を鳴らし、蟬しぐれの中に響く鐘の音を楽しんだ。
夏は季節外れなのか、確かに体力はいるが、静かに佇む名刹を回るには良い季節なのかもしれない。