粽というと現在では中華ちまきを思い出す人の方が多いかもしれない。本日の粽は童謡『せいくらべ』の一節に『~ちまき食べ食べ兄さんが測ってくれたせいの丈~』と歌われているほうである。5月5日の端午の節句に付き物の粽(ちまき)は中国の故事によるものである。詩人屈原が亡国を悲しんで泪水に身を投げたが、それを悼んだ人々が毎年の命日に米の供物を献じたのが始めと言われている。最初は菓子を剥き出しで投げ入れていたが、そのままでは龍に食べられるため、茅(チガヤ)で巻いたことから、『茅の巻』からちまきになったらしい。
日本で作られる菓子の粽には幾つかの種類があるが、小生が好きなのは京都・川端道喜式の粽で、中身は葛でできた『水仙粽』、水羊羹が入った『羊羹粽』、ういろうが入った『外郎粽』の3種が一般的。この菓子は5月にならないとつくらないし、5月6日には殆どお目にかかれない、5日間限定のお菓子である。(道喜ははちがうかもしれないが。)
その中でも小生は『水仙粽』と呼ばれる葛で作られたものが最も好みである。これは吉野葛を笹の葉5枚で巻き、それを5本蘭草から灯心を作った残りであるイガラを使い束ねて完成した粽を長時間ゆでて笹の葉の匂いを菓子にまとわせて作る。
笹から外すと半透明な葛の感触が堅からず、柔らかからずで笹の葉の匂いが素晴らしい。よく冷やす人がいるが、できれば冷蔵庫は30分以上は入れない方が良い。というのはどうしても堅くなり、半透明が真っ白くなってしまう。
今は通信販売で直接、京都の川端道喜で買うことはできるが、600年前から皇室に献上されている菓子は3900円とかなり高価で、なかなか庶民の手には届かない。
小生は虎屋黒川か岬や(渋谷区富ヶ谷)で購入、それでも安くはないが、年に一度の楽しみである。これを食べて、鯉の掛け軸を見ると5月になる。(岬や 水仙粽は5本入りで2000円弱、但し予約をしないとないこともあります。0334678468、駒場東大前駅から徒歩10分程度)