放菴日記抄(ブログ)

これまでの放菴特集・日記抄から「日記」を独立。
流動的な日常のあれこれを書き綴ります。

唐招提寺御影堂障壁画

2020年09月24日 23時55分30秒 | 観劇日記
連休最終日に行ってきました。宮城県美術館。
現在、震災復興祈念企画として東山魁夷の唐招提寺御影堂障壁画展(9/19-11/1)が開催されています。

日本人なら一生のうちに見ておいたほうがいい、または行ってみたほうがいいものがありますが、この障壁画も間違いなくその一つ。特に唐招提寺の御影堂は一般公開されていないので、奈良に行ったって見ることができないのです。
こういう特別展こそが貴重な機会。
以前、仙台市博物館で唐招提寺展を開催しており、その時には鑑真和上の尊像が来仙してます(なんと露出展示でした!)。
不思議な尊像で、ぼうっと眺めていたら、肩のあたりがゆっくり動いているのが見えました。まるで呼吸しているよう。それを特に奇異とも思わず、生き写しだからまぁそんなモンだろうと理解(?)したのを覚えています。幻でも見たのでしょうが、あまりにも自然すぎて、自分の見たものをそのまんま信じています。

で、今回はその尊像を取り囲む障壁画です。
展示室に入り、仕切り壁の向こうに歩を進めると、そこに障壁画が。
「濤声」と題する大画面が、自分という存在を一瞬にして消し去ってしまいました。
そこには逆巻く波の音と、
引き波の静寂と、
また岩礁に打ちつける轟音と、
波の音を吸い込む砂浜と、
そして少し鹽の焦げたような磯の香りでいっぱいでした。

それにしてもなんて綺麗な碧色でしょう。しばらく磯の風に包まれて、碧を堪能していました。

裏に廻ると一転して水墨画の世界。
「桂林月宵」「揚州薫風」「黄山暁雲」と大陸の景色が続き、再び「山雲」では群青から紺碧、碧と移り変わる山の気配が包み込みます。
霊山の巒気(らんき)を知っている人ならば、山全体が呼吸しているかのような、ただならぬ気配に囲まれて、畏怖の感情が湧き起こってくるのではないでしょうか。

絵についての解説はしません。
多くの方がよくご存知でしょう。ただこの壮大な空間と出会えた奇跡だけが、今も僕の身体の中に泉のように清く湧き出ています。



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