ひのっき

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恩田陸「蜜蜂と遠雷」は鳥肌級の名著

2017年10月05日 | 絵日記
蜜蜂と遠雷
恩田陸
幻冬舎

恩田陸先生の「蜜蜂と遠雷」を読みました。

面白かったです。夢中で読みました。

主人公はピアノの天才少女。

内外のジュニアピアノコンクールを総ナメにし、デビューCDでの音楽賞受賞、コンチェルトコンサートの成功など次々と実績を重ね、ジュニアピアニストの頂点に立ちます。

しかし13歳の時、師匠でマネージャーでもあった母親の死をきっかけに人前でピアノが弾けなくなります。

表舞台から消えた天才少女は、ピアノは独学の趣味にとどめつつ、将来は研究者なんていいかもねなんて理系大学の受験準備を進めます。

そこへ現れた母親の旧友。ちょっとピアノ聞かせてよとのリクエストに気安く応える主人公。

演奏を聴いた旧友は涙ぐみます。是非うちの大学に来なさい。

音楽大学で本格的なピアノレッスンを開始した元天才少女はメキメキと頭角を現し、国際ピアノコンクールへの出場を決めます。

果たして主人公は、コンクールでピアノへの情熱を取り戻し、再び輝くことができるのか!・・・というお話。

2週間のピアノコンクールの様子が緻密に描かれており、コンクールとはこんなに過酷なものであったかと目鱗。

幼少時から膨大な時間をピアノにささげ、気の遠くなるような努力の末、プロ級の技術を獲得した出場者たち。

しかし国際コンクールともなると「プロ級の技術」は全員持っており、学内では敵なしのピアノエリートたちも95%は予選で落とされます。

本番に向け募る焦りと不安、緊張と絶望に押しつぶされそうになる出場者たち。

それだけ頑張っても将来ピアノ演奏で食べていけるのはほんの一握り。

プロのピアニストって、膨大な犠牲と生贄の積み重ねの上に立っているんだなあなんて目が遠くなります。

またプロになったらなったで、100人近い出場者の演奏を眠らずに聴き優劣をつけなければならない審査員の苦労も描かれ楽な商売ってないんだなあとため息。

本編では最初あまりにも無欲で自然体な主人公にやきもきしますが、他の出場者の演奏から刺激を受け成長していく様子が丁寧に描かれ、ずぶずぶと感情移入できます。最後には祈る気持ちで紙上の演奏を見守るおいら。演奏の描写がとにかく見事で、呼吸をするのも忘れます。すごい、日本語ってここまで流麗に音楽を表現できる言語なんだ。

あまりの面白さに、読了後また最初から読み返してしまったおいら。二回目は細部に目が届き違った味わいでさらに楽しめます。

久しぶりに小説の力に鳥肌が立った、絶対おすすめの名著です。