奇跡の脳

2024-07-02 20:45:55 | 日記



最近読んで
めちゃ面白かった本のご紹介です。

「奇跡の脳」J・B・テイラー著

どんな本かといいますと
著者は、アメリカの
脳科学者(神経解剖学者)の女医さん。

彼女は、30代の若さである日突然
自宅で脳卒中を起こしてしまったのです。

強烈な頭痛に見舞われ
手足が思うように動かず
目に見える世界がおかしくなってきたのですが

そこはさすがプロ、
「あぁ、私は今、脳卒中になっている!
 脳の機能が失われていく様子を
 内側から研究したケースなんて聞いたことないわ!
 今回の体験から学ばなきゃ!」

と、ワクワクしながらwww

死ぬ直前というヤバいところまでいって
かなり重い後遺症まで残ったものの
8年間にわたる血のにじむようなリハビリの末
かなりのレベルまで復活し

その体験振り返ってをまとめたという
アンビリーバボーな本なのです。




それにしても、何が読み応えがあるといって
とても詳細な描写、分析、説明力です。

例えば、助けを呼ぶために
かかりつけ医に電話をしようとした
あたりの話なんて

かかりつけ医の名刺を
何とか取り出せたまではいいのですが

いざ名刺を見ても
文字を文字として、
ロゴマークをロゴマークとして、
紙を紙として、認識できないどころか

名刺の色や形も
抽象的なタペストリーのように入り乱れて

自分の手と名刺の境界線もなくなり
過去・現在・未来の記憶も曖昧になり
自分が「流れている」ように感じてたそうです。

よくもまぁ、そんなに詳しく
説明できるものだ!

そんな風に
脳卒中を起こしてから、病院に運ばれるまでの
数十分間の描写だけでも
10ページ以上にわたって延々と
鮮明に、克明に、書かれているのです。

すごい記憶力と分析力でしょ!
研究者ならではの執念でしょうね。。。




ワタシたちの脳は、無意識のうちに
非常に優れた働きをしてくれています。

耳から入ってくる音を
「自分に向かって掛けられる声」と
「背後の騒音」に分けて認識する、とか

音のボリュームを
「自分に向かって掛けられる声」は上げて
「背後の騒音」は下げる、とか

言葉の発音と、その言葉が意味する情報を
結びつけるとか、

目に見える世界を、三次元で構築し
物体と物体の境界線を判別する、とか、

そんなことを、瞬時に即座に大量に
毎瞬毎瞬、やってくれているのです。

考えたらすごいことだよ!

彼女は、脳卒中により
そういう基本的な能力が
全部ぶっ壊れてしまいました。

そして、何年ものリハビリを通じて
再構築していったわけです。

能力が全部ぶっ壊れてしまった時の様子は
まるで、認知症患者さんのようで
能力が再構築されていく様子は
まるで、赤ん坊が成長する過程のようで
とてもドラマチックでした。

人間の脳って、本当に面白い!!!





そういえば。

難聴になった人は
どんな高級な補聴器を買っても
それが自分専用に調整されたものであっても

1日8時間以上×3ヶ月間は使わないと
必要な音を聞き取れるように
なることはできない、
という話を聞いたことがあります。

目が薄くなるのをカバーするには
老眼鏡をかければすぐに可能だけど
耳が遠くなるのをカバーするには
脳神経へのトレーニングもいるのね。

人間の脳が
いかにして五感を認知しているか
認知が歪むとどういう世界が広がるのか
知るほどに奥が深いです。

これから来たるべき老いに向けて
中高年はみんな読んでおいた方がいいと思う
名著だよん!





(人間の目には、どんなに珍しい景色も
 写真に撮ると、インパクトが無くなるのも
 人間の脳がすごすぎるからだな)





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コメント
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