日記

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本願寺教学における石泉学派と空華学派について

2023年04月08日 | ブログ
弘願助正派、石泉学派か、、

五正行に関して、往生の正業とするか、助業とするかの議論から、更に報恩行としての道徳社会的実践を助業とするかという判釈における石泉学派の主張が、今回の領解文に絡んであるのは、もちろん言を俟たない。

石泉学派の弘願助正説は、報恩行の善行を全て認めて、特に信後の一切の善行を助業として認めていこうとする立場である。

今回の新しい領解文の趣旨は、おおよそこの石泉学派の弘願助正説を門主が採用したとするのが正解となるのであろうが、極めて議論が足りなかったのはもちろんながら、親鸞聖人は称名以外のいかなる助業も認めない立場であり、つまり、阿弥陀如来の方便法身により私たちに届いてあるベクトル[称名]をただ受け取って領解する以外に、凡夫の側からの行いのいかなるも正業、助業としてはお認めにはなられていないのである。

それは、報恩行と言えどもである。真なる報恩行というものは、方便法身を得ての還相のあり方により可となるものであり、凡夫では報恩行のみならず、いかなる行であっても真なる善行、利他行にはならないというのが、基本的な親鸞聖人のお立場であるからである。

むしろ、信後の報恩行を全て善行と肯定するならば、一切の行を認めることに繋がりかねない危険性が極めて高くなり、それは社会道徳性、社会正義性としての行のみならず、それに反することも含まれることになり、例えば、大義正義の名の下の戦争さえも報恩行として助長することもありえなくはないということであります。


なぜ今になり弘願助正説が出てきたのか、その背景についても考えてみなければならないと思っています。

要するに、極論を言えばとなりますが、信後の報恩行として、宗門、教団、寺院を護持するために、それを壊そうするものを排除するための殺人さえも報恩行の善行として肯定されかねないということであります。

過去の戦争への協力、加担も同じような理屈であり、国体の護持、皇國の護持は、浄土真宗、教団を守るための報恩行であるとして肯定したのであります。

しかし、戦争への協力など歴史的過去の反省があるはずなのに、今になり石泉学派の弘願助正説が出てきたのはあまりに不可解であるということなのであります。

もちろんこれは宗門、教団にとっては非常に都合の良い説でもあります。報恩行の名の下に、何でも好き放題に旗振り、強制ができるからであります。例えば、新しい領解文の唱和も、大切な報恩行ですと言われては、黙って従わざるを得なくなるわけです。つまり、矛盾や疑義があっても、報恩行と言えば何でも強制的に従わせることができるというわけなのであります。

しかし、極めて危険な説であることは、本願寺派教学でも十分に議論されてきたはずであり、今になってその教義的中枢にいきなり顔を出してきたのは、なぜなのだろうかということなのであります。


石泉学派と空華学派、従来より異端とされてきた石泉学派が、いきなり本流となるかの、要は派閥争いの瀬戸際なのですよ、と頂いた。

今回の領解文における本覚思想も石泉学派による主張では、ごくごく当たり前のことで、僧叡の仏性論は、本覚思想そのものであったから然るべきなのですと。

聖道行や特にツォンカパのチベット修道論を重んじる川口さんなら、空華学派よりも石泉学派の方が思想的には近いはずで、空華学派を擁護するのがあまり理解できない、と。

まあ、あくまでも親鸞聖人の思想として、正確には空華学派がやはり教学的には正しいということであって、今さら石泉学派を前面に押し出して強権的に教義として据え置こうとするのは、無用な混乱のみならず教団の崩壊を招きかねないということである。

何よりもこの慶讃法要に合わせて行うなど、宗祖への冒涜以外の何ものでもないのである。

しかし、僧叡の弘願助正論のように、何でもかんでもを無差別に助業として、称名の入り口だとする主張は最近によくみられることである。

性具を仏具とあからさまに言ったりしていることなども、実際にどうかは別にしても称名に繋がるならば、何でもありとしての考え方が根底にはあるように思える。

本来は反教義的なあり方を正す監正局のあり方の変化も弘願助正論が浸透してきているからなのであろう。


しかし、これはある意味で、現代版サムイェの宗論と言えるのかもしれない、、

頓悟、漸悟、本覚思想、他力、自力が入り乱れてもある。

確かに思想的には石泉学派の方が私には近いものがあるのだが、弘願助正論は、危険極まりないのには、変わりない。

戦争も称名の入り口としての助業となることも十分に主張することがありえるからだ。

いずれにしても本願寺派内だけで収められるような議論ではない。

皆、少しなりとも問題意識を持って議論すべきだろう。

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