イカットの島 / バリ島に暮す / 風に吹かれながら

バリ島ウブドの小路は手工芸にあふれています。バリヒンドゥーの信仰に息づく暮らしに触れながら手織りの時を楽しみたい。

整経を終え、織り始めるまでの準備

2022年06月20日 | 腰機(弥生原始機)輪状式 / in Yamato / 2022年
万力を外し、そのまま手前に倒せば腰機の構造です。
1. 万力から棒を外す前に、下糸棒と上糸棒は仮りの棒に
差し替えます。その時、両端から糸が外れないように注意 。  
2. 竹のすくい棒で開口し、仮り棒を差し込みます。
両端をひもでしばる。
上糸棒も同じ。





3. 手前に倒す。
倒した状態。左端の棒、スタート棒、下糸の仮り棒、上糸の仮り棒、 幅出し棒、右端の棒

腰あて、左端の棒を布送具、右端の棒を経送具に替えて腰機となる




4. 固定する場所に移動。机に二つの万力を止め、ひもを通して
両端を輪にします。経送具を輪にかける。

5. 腰あてのひもを布送具の両端にかけます。
今回の布送具はおりひめ手織り機の前巻棒2本で試してみます。

6. 布送具と経送具にかかっている糸束の輪を引っ張り、出来るだけ経糸の張りを一定にします。

7. 上糸の仮り棒を持ち上げて開き、中筒を差し込みます。
両端をひもでしばる。または中筒 の中を通してしばる。



8. 下糸の仮り棒を持ち上げて開き、刀杼を差し込み、
下糸(茶色と青色のタテ縞の面)を上にします。



左側より1本づつ下糸をすくい、下糸そうこうを作ります。
上から見た図

両端をひもでしばり、完成。(見出しの写真)
下糸そうこうに使ったレース糸


9. 移し終えた仮り棒は抜き取ります。

これで織れる準備が出来ました。

腰機(弥生原始機)輪状式の整経

2022年06月18日 | 腰機(弥生原始機)輪状式 / in Yamato / 2022年
6年ぶりの腰機で迷いながらの整経です。
以前、自分で書いたものを見ながらやってみましたが、分かりにくい所もあり、図は書き直しました。




織りの企画
織り幅 12cm、 長さ 145cm
下糸 タテ縞で茶色と青色
上糸 青色

1. 定規に経糸を巻きつけ、1cm幅の本数を調べます。
1cm=7本



2. 机に万力を止める位置を決めます。
(長さ145cmの半分)
左端(手元側で布送具)と右端(先端の固定側で経送具)の
棒にメジャーをぐるっと1周して145cmで測ります。



3. 左端と右端の棒の間に4本の棒を立てます。
写真は左側から左端の棒、スタート棒、下糸棒、上糸棒、
出し棒。
後ろは使う綿糸2色と下糸棒・上糸棒の仮り棒と中筒。
幅出し棒は織り幅を一定にするため、筬の代用です。タイ北部のカレン族の動画から参考、ネーミングは私案。



4. セットした棒に経糸を回します。
上糸と下糸の2本取りで行うので、1周で2本。
1cm幅7本に織り幅12cmをかけて84本、
84本の半分の42周が必要数。

5. 整経スタート
1 ) スタート棒に下糸(茶色)上糸(青色)をしっかりと
結びます。2本の間に指を入れ、糸が交差しないように注意します
スタート棒の次が下糸棒なので、下糸が上に、上糸は下に。
2) 下糸棒の後ろに下糸(茶色)を通します。
上糸(青色)はまっすぐ。



3) 上糸棒の後ろに上糸(青色)を通します。
下糸(茶色)はまっすぐ。
この2本の棒の間に下糸と上糸が交差して綾が出来ます。





4) 幅出し棒に巻きつけます。下糸(茶色)を上に、2本一緒に手前から棒に巻きつけます



5) 右端の棒を回り、そのまま左端の棒へ回します。

6) 最初のスタート棒に巻きつけて1周目。下糸を上に、2本一緒手前から巻きつけます。これのくり返しです。





7) 下糸は2色でタテ縞にします。
色替えはスタート棒でします。
写真は青色から茶色に替えるところ。
スタート棒に青色(茶色)を結び、替える茶色(青色)を
結びます。もう1本はそのまま。
今回は3本の青色の縞になるように色を替えてみました。


42周回して、整経が終わりました。




唐古・鍵考古学ミュージアムに行ってきました

2022年06月15日 | 腰機(弥生原始機)輪状式 / in Yamato / 2022年
唐古・鍵遺跡は二上山にも近く、石器の材料となるサヌカイトは二上山北麓で採れます。3万年前ごろの旧石器時代には二上山ふもとで奈良県最古の人類が表れ、石器の制作が始まっています。縄文時代には土器も作られ人々の暮らしは連綿と続いていました。
弥生時代でもサヌカイトは利用され、唐古・鍵のムラで石剣や石槍の完成品に仕上げられていました。
唐古・鍵遺跡は奈良盆地のほぼ中央にあり初瀬川と寺川に挟まれた弥生時代の集落で、面積は42ha。
遺跡からはムラを囲む環濠、竪穴住居、井戸、青銅器の
工房跡、機織りの部品(糸巻、糸をよる道具、布送具、
緯打具)、針、麻縄などが出土しています。

「輪状式原始機の研究 東村純子」の発表された論文に布送具の類例の一覧表があり、弥生前期(2点)、弥生後期(1点)
とあり、本物を見たくて早速考古資料が展示されている「唐古・鍵考古学ミュージアム」に行ってきました。

側面に凹凸の加工がある布送具。2材で1組。
出土した布送具の図(論文よりコピー)




緯打具(刀杼)と糸巻

縫い針

右側の建物が「唐古・鍵考古学ミュージアム」
ちょうど田植えの時期でした。



川の高低差を利用した水耕稲作は弥生前期には既にあり、後に広大な平野は穀倉地帯と発展していきます。勢力争いも増したであろうと想像出来、この辺りが古墳時代に続く地であってもおかしくはありません。ヤマト統一の象徴でもある銅鏡を作る鏡作りの中心地でもあり、三神二獣鏡が所蔵されている鏡作神社など五社が今でもあります。

機織り技術も大陸から伝わってきました。
腰と足を使ってタテ糸を引っ張る、輪状式整経の腰機は原始的であり、歴史は紀元前にまでさかのぼると吉本忍氏は書かれています。中国雲南省、李家山遺跡・石さい山遺跡に最古の機織りの像が出土、紀元前2世紀頃のものと見られるそうです。

李家山遺跡の腰機の像



腰機はブータンの織りに触れたのが始めてで、バリ島ではYouTubeなど見ながら自己流で織っていました。古代ヤマトの地で再び織ることになるとは不思議なご縁です。

戦いのない共同体の縄文時代から弥生時代へと移るさまを想像し、遺跡を辿っています。


参考
奈良県香芝市二上山博物館
(旧石器文化を紹介する石の博物館)
唐古・鍵考古学ミュージアム
タテとヨコ 色とかたちのフィールドワーク 吉本忍
輪状式原始機の研究 東村純子



腰機で裂織りを織りました

2022年06月10日 | 腰機(弥生原始機)輪状式 / in Yamato / 2022年
バリ島のロスメンを引き払い、日本に帰って約4年が過ぎました。古代のヤマトで暮らしています。
ご近所に着物地をアレンジしている人と知り合いになったことがキッカケで再び織りに向かう元気をもらいました。
整経から直ぐに織り始められる、腰機に再チャレンジです。
自分のブログや昔の資料を見て思い出しながら、まずはベルトのような物を裂布で織りました。輪で織れるのが輪状式原始機の特徴です。
6年ぶりの腰機、そして腰機では始めての裂布を緯糸として使います。経糸が構造上詰まり、強調される腰機でうまく織れるでしょうか。

バリ島で織っていた時、手前の布送具(チマキ)は「おりひめ手織り機」の前巻棒を1本で使っていました。研究者の東村純子さんの資料を読み返すと弥生前期の遺跡(唐古・鍵遺跡など)から凹凸に加工してある2本の棒が出土、これは織った布を挟んで経がずれないためではないかと考察されていました。試しに途中から2本にしてみました。凹凸はありませんので、腰あてからの紐をしっかりとズレないようにしました。確かに1本では固定されず打ち込むたびに布がズルズルと回っていました。2本だと布が挟まれ、回りにくくなり経のテンションが一定となり織り目の緩みも少なくなりました。



織り始めと終わりは始めて「玉止め」を試しました。弥生原始機には筬がないので、織り幅が一定になりにくい。
玉止めは裂布がほつれにくいし、経糸の間がこぶになるので織り幅の目安になりました。

経糸は裂布に影響されて一定に表れず、揃わないのですが、機械的ではない自然な味わいがあって気にいりました。

久しぶりに織りのおさらいをしました。
次は整経から織りへと順番に追って書いてみます。