平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

ユダはなぜイエスを裏切ったのか(2)

2006年04月10日 | Weblog
「ナショナルジオグラフィック日本版」のホームページによると、この「ユダの福音書」の写本は、以下のような経緯で発見され、解読されました。

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 このコプト語のパピルス写本は、紀元300年ごろに書かれたとみられます。この写本は1970年代にエジプトのミニヤー県付近の砂漠で発見され、エジプトからヨーロッパを経由して米国に持ち込まれました。その後、写本はニューヨーク州ロングアイランドにある銀行の貸金庫で16年間も眠り続けていましたが、2000年にスイス・チューリッヒの古美術商フリーダ・ヌスバーガー=チャコスがこれを買い取りました。
 有望な買い手候補への売り込みが失敗に終わった後、文書の劣化が進むのを案じたチャコスは、2001年2月に写本をスイス・バーゼルのマエケナス古美術財団に寄託しました。同財団では「チャコス写本」と名づけられたこの文書の修復と翻訳を行った後、写本そのものはエジプトに運ばれ、カイロのコプト博物館に収蔵される計画です。
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http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/topics/n20060407_2.shtml

パピルスに記されたこの文書は、劣化が激しく、ぼろぼろの状態で、復元作用は、まるで無数のパズルのピースを組み合わせるような、たいへん困難な作業であったとのことです。

この文書はコプト語で書かれています。

コプト語というのは、古代エジプト語の一種で、コプト文字という文字で表記されます。イスラム教が進出する以前、エジプトではキリスト教が盛んでしたが、キリスト教文書はコプト語に翻訳されました。現在でもエジプトの人口の約1割がコプト教会の信者であると言われています。コプト語の「ユダの福音書」は他の文書と同じく、ギリシャ語からの翻訳であると見られています。

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 写本の文章は、古代エジプトの言語であるコプト語のサイード方言で書かれています。その記述内容と言語的な構造を調べた著名な研究者は、写本の宗教的概念と言語学的特徴はナグ・ハマディ文書にそっくりだと指摘しています。1945年にエジプトで発見されたナグ・ハマディ文書も、やはり初期キリスト教時代に作られたコプト語の古文書群です。チャップマン大学聖書・キリスト教研究所(カリフォルニア州オレンジ郡)のマービン・マイヤー教授とドイツ・ミュンスター大学のコプト語研究者スティーブン・エメル教授は、写本の文章には紀元2世紀に流行したグノーシス派特有の思想が色濃く反映されていると語ります。後にコプト語に翻訳された『ユダの福音書』のギリシャ語の原典が作られたのも、ちょうどそのころです。
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http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/topics/n20060407_2.shtml

「ナグ・ハマディ文書」は、「1世紀半ばから2世紀にかけて成立したギリシャ語の文献を(訳出し)3世紀から4世紀にかけて修道院で筆記したもの」と考えられています。キリスト教成立当時の古代世界の思想状況、とくにキリスト教とは一種ライバル関係にあった「グノーシス思想」を知る上で重要な文献です。今回解読された「ユダの福音書」もグノーシスの色合いの濃い著作です。