平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

脳内汚染(6)

2006年04月06日 | Weblog
ゲームだけではなく、現代のテレビや映画には、暴力的な場面が数多く登場します。暴力的な映像が子供たちにどのような影響を与えるかということは、あまり深く考慮されてきませんでした。岡田さんはこう述べます。

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 暴力的な映像に過剰にさらされることによるもう一つの影響は、世界や人間というものを、過度に悲観的に、醜く、危険で、希望のないものとみなす傾向を植え付けてしまうということである。暴力場面にさらされることは、単に暴力を学習させ、攻撃的で反社会的な行動を増加させるだけでなく、自分自身が被害者になる恐怖を増大させ、さらには、対人観や世界観まで変えてしまう。
 テンプル大学のジョージ・ガーブナーらは、暴力的な番組を見続けると、子どもであれ、大人であれ、他人を実際よりも危険な存在とみなすようになることを示した。テレビを長時間見る人では、そうでない人より、犯罪の危険を恐れ、用心深く、他人を信用しない傾向が認められたのである。

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 事件の報道にしろ、サスペンスのドラマにしろ、人間の醜悪さ、卑劣さ、信用できなさばかりが濃縮され、強調された形で伝えられることになる。そんなことばかりが現実に起きているわけでなくても、ニュースバリューがあるものや、人々の興味を惹くものを取りそろえれば、人間やこの世界のすばらしさを伝える内容よりも、悲観的な見方になる材料ばかりが行列をなすことになる。
 ましてや、そうしたおぞましい内容に、小さな子どもたちまでもがさらされるのである。新聞や本であれば、それを読みこなせる年齢になるまでは、目に触れずにすんだことも、テレビとなれば、心の準備ができていようができていまいが関係なく、網膜に視覚信号となって入り込んでくる。
 以前であれば、絶対テレビの画面には登場しなかったようなシーンが、小さな子どもたちが見ているゴールデンアワーの時間帯にも登場する。暴力的な場面だけでなく、事故の瞬間や自殺する瞬間の映像さえ、公共の電波に乗って野放図に垂れ流される。それがどういう結果を幼い心に引き起こすかは、まったく考慮されることもない。
 こうした悲惨な映像のシャワーを浴びながら子ども時代を過ごすことは、悲劇としか言いようがない。大人でさえ食傷し、憂欝になる映像に、何の抵抗力ももたない、未熟な心がさらされる状況で、子どもはこの世界や人間という生き物について、肯定的で、希望をもった心を養っていくことができるだろうか。
 いくら教育が、学校で人間や世界への肯定的な見方を学ばせ、子どもに希望をもってもらおうとしたところで、日々垂れ流されている映像が、そうした努力を台無しにしてしまう。これは、子どもの心に対する暴力であり、虐待にほかならない。ハーバード・メディカル・スクールのアルヴィン・プゥサン教授は、子どもを暴力的な映像にさらすことは、事実上、肉体的、性的暴力や戦闘地域で暮らすことと大差がない虐待であるとし、その危険に警鐘を鳴らしている。そうしたことが、人々がほとんどその危険を自覚しないままに行われてしまっているのである。「娯楽」であり「遊び」であるという油断が、守りの死角を生んでいるのである。
 子どもとは、元来将来に対して非常に楽観的なヴィジョンをもち、希望に溢れているものである。最近の子どもに広まっている、人生や他者や世界に対する悲観的で醒めた態度は、人間の醜悪さや世界の危うさを示す彩しい映像や情報に、さらされ続けてきた結果だとすると、非常に納得がいくのである。そして、このことは子どもだけの問題でなく、大人たちにも当てはまるように思える。(70~72ページ)
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汚染された水や空気が、知らず知らずのうちに人間の体をむしばむように、恐怖感を引き起こす暴力的で悲観的な情報や映像が、知らず知らずのうちに人間の心を不健康にすることも十分にありえます。

愛、思いやり、感謝、信頼、友情、誠実、希望、感動・・・・このような心が大切だということは、多くの人が納得できると思いますが、現代社会にあふれている情報は、憎悪、冷酷、冷淡、裏切り、不信、虚偽、絶望、冷酷など、その反対です。人間は醜いものだ、世界は平和になりっこない、という情報が垂れ流しにされ、人々の心にすり込まれているのです。これはまさに情報的な公害です。

とくに子供たちが周囲の情報に影響されやすいことは、ドリフターズの番組を観た私の子供の反応からもわかります。それだけに、否定的な情報が氾濫する現在の情報公害の状況は、大きな問題だと思います。

※イギリスにPositive Newsというサイトがあります。このサイトは、人々の心を明るくし、世界平和や環境保全に貢献する活動など、ポジティブなニュースだけを発信します。世のマスコミも少し見習って、ポジティブなニュースをもっと多く取り上げるようにしてほしいものです。