平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

脳内汚染(7)

2006年04月07日 | 最近読んだ本や雑誌から
暴力的な映像や性的な映像が青少年に悪影響を及ぼすことには、誰しも異論はないと思います。そういうものが子供たちに簡単に入手できるような状況は、改めていく必要があります。

それでは、暴力的・性的な映像を含まないようなゲームなら問題ないのかというと、そうとはいえない、と岡田さんは言います。

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海外で行われたある研究では、暴力的シーンの多いゲームで遊ぶだけではなく、ゲームで長時間遊ぶこと自体が、高い攻撃性や敵意、暴力行為と関係あるとされた。(72ページ)
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ゲームの問題性は色々とありますが、大きな問題は、それが依存症を引き起こすことだといいます。ゲームにはいわばタバコのような、もっと強くいえば、麻薬のような中毒症状を引き起こす危険性がある、と岡田さんは言います。

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 特に十年ほど前までは、ゲームをすることの危険について、ほとんど知られていなかった。麻薬的な嗜癖性と恐ろしい副作用をもった危険な玩具だという認識がまったくなかったのである。当時はまだゲームも初歩的なもので、何度かやっているうちに飽きてくる類のものが多かったということもあるだろう。だが、一度そこで快体験を味わうと、さらに刺激的なものを求めるようになり、どんどん嗜癖が形成されていくというメカニズムが知られていなかったのである。
 ゲームが十年前と同じ技術水準のまま、ほどよく飽きてしまうものにとどまっていれば、その危険も少なかったであろう。だが、コンピュータ技術の急速な発展により、ゲームはみるみる進化して、きわめて高いリアリティと刺激に満ちた仮想世界を現実のものにしてしまった。ずっと飽きが来ないほどに、エキサイティングなものとなったゲームは、逆に極めて危険なものとなってしまったのである。
 なぜなら、ずっと飽きが来ないほどにわくわくし興奮するとき、脳で起きていることは、麻薬的な薬物を使用したときや、ギャンブルに熱中しているときと基本的に同じだからである。
 子どもにLSDやマリファナをクリスマス・プレゼントとして贈る親はいないだろう。だが、多くの親たちは、その危険性について正しく知らされずに、愛するわが子に、同じくらいか、それ以上に危険かもしれない麻薬的な作用をもつ「映像ドラッグ」をプレゼントしていたのかもしれない。(90~91ページ)
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ゲームがあまりにも面白いということが問題だというのです。ゲームの面白さにとりつかれたら、そこから抜け出すことが困難になります。韓国だったと思いますが、数十時間連続でゲームに熱中し、死んだ男性がいたそうです。こうなると、まさに麻薬と同じです。

あることが面白くてやめられない、ということはゲーム以外にもあります。私の体験では、面白い本を読んで途中でやめられない、ということがたまにあります。パチンコなどの賭博に熱中してやめられない、という人もいます。ロシアの作家ドストエフスキーは賭博に熱中する人でした。彼はその体験を『賭博者』という小説に書いています。賭博者はまさに人格破綻者になります。

読書やスポーツや仕事などに熱中するならまだよいですが、ゲームや賭博への熱中は、貴重な時間や生命エネルギーやお金を無駄に消費し、そこに何ものも生み出しません。人を簡単に面白さのとりこにしてしまうゲームは、面白いがゆえに危険なのです。

私の子供が小学校の高学年か中学生頃だったと思いますが、あんまりせがまれたので、クリスマス・プレゼントに「ゲームボーイ」を買い与えました。それから、子供は文字通りそれに熱中して、勉強がまったくおろそかになりました。私は1カ月くらいでゲーム機を取り上げてしまいました。親は一時期うらまれましたが、その後、子供はゲーム機とは無縁なまま大人になりました。

私の子供の様子を見ても、ゲーム機が子供をとりこにすることがよくわかります。すべての子供が同じではないかもしれません。しかし、ゲーム中毒になる子供がかなりいることはたしかです。

ゲームが子供の脳にどのような影響を与えるかは、『脳内汚染』に色々と書かれています。おそらくその部分がもっとも議論を呼ぶ箇所でしょう。これはまだ岡田さんの仮説であり、これからもっと実証的に検証する必要があります。ただし、科学的実証以前に、ゲームが、仮想現実の中で代償的な強い快感を与えることによって、子供たちから、勉強や運動や友人たちとの遊び・交流という、子供たちの成長にとって大切な体験をするための時間を奪っていることはまぎれもない事実です。同じ遊びというなら、子供たちには1時間コンピュータ・ゲームをするよりも、1時間、野球やサッカーなどをしてもらいたいと思います。

私の子供はその後、演劇に熱中するようになりました。勉強がおろそかになる点ではゲームと変わりない、あるいはそれ以上だったかもしれませんが、演劇を通して人間的な成長をとげた部分があったと思います。

私は自分の子供からゲーム機を取り上げて本当によかったと思っています。