平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

脳内汚染(5)

2006年04月05日 | Weblog
実は、ゲームによる心理的バリアの解除は、イギリスだけではなく、アメリカの軍事訓練でも利用されているのだそうです。

********************
 アメリカ軍は軍事訓練にシミュレーション・ゲームを採用している。以前から、航空機や戦車の操縦や電子スコープを使った攻撃などでは、シミュレーターが重要な役割を担っていたが、ごく一般の狙撃訓練にも使われるようになり、それはシミュレーターというよりも、アーケード(ゲームセンターの意)・ゲームそのものになっている。
 アメリカ軍に九〇年代に導入されたMACS(多目的アーケード戦闘シミュレーター)では、実戦で使われるマシンガンM16(ただしプラスチック製)で、大画面に映し出された敵を狙撃する。その正式名称にまで、「アーケード」という単語が、ご丁寧にも使われている。また、FATS(火器訓練シミュレーター)は、法執行機関で銃器の訓練用に使われている。最近では、アメリカ軍はゲリラ掃討作戦の訓練にもシミュレーション・ゲームを採用し、新兵のトレーニングに多人な成果を獲得しているという。
 その顕著な成果の一つは、こうしたゲームによる訓練を受けた兵士は、敵に発砲することに躊躇しないことだという。これまでの訓練では、新兵の半数以上は実際に敵に遭遇しても、相手を殺戮することに本能的なブレーキがかかった。発砲して敵を殺すと、強い吐き気を覚えるなどの反応が起きたのである。ところが、シミュレーション・ゲームにより、敵を殺裁することを訓練すると、九割以上の者が躊躇なく敵に向かって引き金を引き、しかも相手が倒れても、動揺することがないという。
 こうしたゲームによって訓練を積んだ兵士たちが、実際にイラク戦争には投入され、多くのイラク人を殺害したのである。
 アメリカ陸軍は、この成果に意を強くしたようで、シミュレーション・ゲームの訓練への導入をさらに拡大する気でいるようだ。さらには、兵士の志願者不足を解消するために、若者に軍隊の仕事に興味をもってもらおうと、戦争のシミュレーション・ゲームを、二〇〇五年夏から無料で配布している。
 人を殺すことに呵責を覚えなくなる訓練を、多くの若者を相手に、軍自らが率先して行うという驚くべき企てである。
 このシミュレーション・ゲームで訓練を積んだ兵士たちにみられた変化は、非常に重要と言わざるを得ない。彼らは、敵を殺す訓練をシミュレーションすることにより、殺すことに対する心の抵抗をなくしていったのである。本来、人間に備わっている、人を殺(あや)めることへの葛藤を消してしまったのである。(42~43ページ)
********************

アメリカ軍が行なっている訓練は、驚くべき人間性の破壊ですが、政治の話はさておき、ゲームセンターのシューティング・ゲームは、まさに人間を殺人マシーンに作りかえる軍事訓練装置と紙一重です。そういうものを娯楽という名目で放置しておくことは大きな問題だと思います。