前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

ドキュメンタリー番組はカッコいい(『ロストフの14秒』に寄せて)

2020-03-01 00:37:16 | テレビ番組
ドキュメンタリー系のテレビ番組が好きです。

このジャンルはやはりNHKが圧倒的に強いのですが、
TBSの「報道特集」や「情熱大陸」なども、また切り口が違っていいです。
厳密な意味での「ドキュメンタリー」ではないかもしれませんが。

好きな場面や台詞があるお気に入りの映画を繰り返し観るように、
ドキュメンタリー番組でも、カッコいいナレーションや構成の番組は
何度も観返します(基本、まず録画なので)。

そんな中で、特に冒頭の"掴み"がカッコよかったものが記憶に残っています。

例えば以前に紹介した
NHK-ETV特集「見狼記~神獣ニホンオオカミ~」オープニングのナレーションも
そんな一つです。

平泉成さんの、あの独特の声で
「今の時代の日本に"オオカミ信仰"が生きていると言うと信じるかね?」
う~ん、痺れる。


将棋の羽生善治さんが、1996年に将棋のタイトル七冠制覇した後に放送された番組
(「報道特集」だったと思うのですが確証がありません)
の冒頭ナレーションも記憶に残っています。

当時、VHSに録画したものを繰り返し観ていたのですが、
もう"現物"がないので、確かめようがなく記憶を頼りに書きます。
(大体合ってると思いますが)

羽生さんは前年の1995年の時点で、
すでに六冠(名人、竜王、王位、王座、棋王、棋聖)を保持し、
最後の一つ「王将」に挑戦したのですが、
当時の谷川王将に敗れ七冠制覇を逃していました。

六つのタイトル全てを防衛し、その上で再度、
王将への挑戦権を獲得するのは不可能だと思われていましたが、
それを成し遂げて、再び谷川王将に挑戦。
今度は見事に勝利し、前人未到の七冠制覇を達成しました。

そのような背景のもと、番組冒頭のナレーションです。

「将棋の七大タイトル完全制覇。一年前、それは叶わぬ夢で終わったはずだった」
ここで、前年に谷川王将に敗れたシーンが入ります。
去り行く敗者の後ろ姿に重ねて、次のナレーション。

「誰もが皆、思っていた。チャンスはもう二度と廻っては来ないと。だが、将棋の神様はこの青年を愛していた」
う~ん、カッコいい。


ドキュメンタリーとなると、やはりスポーツを扱ったものに傑作が多いですね。

2018年は、サッカーワールドカップ・ロシア大会がありましたが、
ベスト8を賭けた決勝トーナメント、ロストフ・アリーナで行われた
日本対ベルギー戦を分析した番組がNHKスペシャルで放送されました。
(ご覧になった方も多いのでは)

まずタイトルがカッコいい。
『ロストフの14秒 日本vs.ベルギー 知られざる物語』


もう、ずるい。


この番組の冒頭数分間は、
ナレーションだけでなく、音楽、選手の言葉、視覚効果、構成など全てが完璧。
NHK-BSで尺を長くした"完全版"も放送されましたが、地上波(NHKスペシャル)の方が、
圧倒的にカッコいい。録画しといてよかった。

2対2の同点で迎えた後半アディショナルタイム。
日本のコーナーキックからベルギーの高速カウンターによる逆転ゴールまで
僅か14秒のラストプレー。
28台のカメラの映像と、選手、関係者のインタビューをもとに
このプレーを詳細に分析していく、大変スリリングな内容でした。


ところでこの『ロストフの14秒』というタイトル。
恐らく作り手は、次のタイトルも意識していたのだと思います。

『江夏の21球』




元はスポーツライターの山際淳司が雑誌「Number」に書いたエッセイですが、
後にNHK特集(NHKスペシャルの前身)で、
『スポーツドキュメント「江夏の21球」』として映像化されました。

勝負の一瞬を映像や証言などから多角的に分析し、
「スポーツドキュメント」という新しいジャンルを確立した記念碑的番組です。
(山際氏の"原作"もスポーツノンフィクションのジャンルを確立した作品です)


1979年のプロ野球日本シリーズ、広島対近鉄。
3勝3敗で迎えた最終第7戦は、広島1点リードで9回裏近鉄の攻撃。
マウンドの江夏は、ヒットと四球でノーアウト満塁、
一打逆転サヨナラという絶体絶命のピンチに。
この9回に江夏が投げた21球が番組の"主役"です。

勝敗を分けた一瞬の判断
超一流選手同士のギリギリの攻防
心理的な駆け引き
複雑に絡み合う思惑
偶然、必然が生み出した奇跡 等々

ちなみに、番組の司会というか解説は野村克也さんが行っています。


勝負の世界を描くドキュメンタリー、やっぱりカッコいい。

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