前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

『オルドス警察日記/To Live and Die in Ordos』 (東京国際映画祭/祝!最優秀男優賞)

2013-10-20 09:18:05 | 舞台・映画など
第26回東京国際映画祭に行ってきました。

招待券を引き換えるために、9時半に六本木ヒルズに行きましたが、
お目当てだった
 「ドリンキング・バディーズ」
 「27℃ - 世界一のパン」
 「リゴル・モルティス/死後硬直」
はすでに予定枚数終了。

大変失礼ながら、仕方なく?『オルドス警察日記』を観ることに。


パンフレットの作品紹介では

  内モンゴルのオルドス市で、ひとりの警察官が死ぬ。
  彼のキャリアを振り返ると、そこには驚きの実像があった…。
  実在した人物の足跡を、中国を代表する女性監督のひとりである
  ニン・インが骨太のドラマとして丹念に映画化。

とありました。

内モンゴルの警察官・・・実在の人物・・・
「まあタダで観られるんだから」と全く期待していませんでしたが・・・。


面白かった!! そして、とても素晴らしい作品でした。


優秀な警察官だったハオ局長が急死し、
彼の記事を書いて欲しいと公安局から依頼されたジャーナリストが
彼の実像を知るために取材を始めます。

かつて、美談として記事にした人物が、
実はそうではなかったことがネットの"裏情報"で明らかにされるという
"裏切り"を経験していたジャーナリストは、
急死したハオ局長の「英雄像」にも初めは疑いの目を向けます。

しかし、彼が残した膨大な業務日誌と、彼と共に働いた上司や部下、
家族や関係者へのインタビューから浮かび上がってきたのは、
自分の信念を貫き、最期まで正義のために戦った男の姿でした。


教師から警察官に転職し、28歳で刑事課に配属されてから、
公安局長まで昇り詰め、激務のため41歳の若さで心臓発作で亡くなるまでの
約13年間が淡々と、でも丁寧に丁寧に描かれていきます。



誰もが知っている歴史上の有名人の波乱に満ちた物語ではなく、
市井に生きた「名も無き英雄」の人生。

派手な銃撃戦も、息詰まる心理戦も、劇的なラストのどんでん返しもありません。
お涙頂戴のヒューマンドラマでもありません。

それでも、113分間決して飽きさせることなく、弛れさせることもなく、
激しい感動ではありませんが、確実に何かがじんわりと心に染み込んできます。


終演後の質疑応答で、監督のニン・インさんは、

  主人公のハオ・ワンチョンは、決して完璧な英雄ではない。
  時に迷い、悩み、間違いもおかす。その姿も同時に描きたかった・・・

という意味のこともおっしゃっていました。


そのハオ局長を見事に演じたワン・ジンチュンさんが本当に素晴らしい!!
彼の演技で、我々観客も、まるでハオ局長のことをよく知っているような、
実際の彼の人生を見てきたような錯覚にとらわれます。


質問にこたえるワン・ジンチュンさん。
左隣りが彼の奥さんを演じたチェン・ウェイハンさん。左端がニン・イン監督。



こういう機会がなければ、恐らく(映画館やDVD等で)観ることのない映画でした。

『オルドス警察日記』 忘れえぬ作品となりました。