前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

ウクライナ国立バレエ『雪の女王』

2023-12-30 17:35:25 | 舞台・映画など
ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)による『雪の女王』を観てきました。



振付:アニコ.レフヴィアシヴィリ
台本/音楽監督:A.レフヴィアシヴィリ、O.バクラン
(H.アンデルセンの原作童話による)
音楽:J.シュトラウス、P.マスカーニ、E.グリーグ、J.マスネほか

ゲルダ:オリガ・ゴリッツァ
カイ:オレクサンドル・オメリチェンコ
雪の女王:アナスタシア・シェフチェンコ
指揮:セルゲイ・ゴルブニチ
演奏:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団

全二幕、休憩を挟んで計100分の比較的観やすい時間です。
本作品『雪の女王』は日本初演ですが、物語もわかりやすく楽しめました。

バレエはあまり観ていないですし、技術的なことはよくわからないのですが
さすがはボリショイ劇場、マリインスキー劇場と並ぶ、旧ソ連の三大劇場です。
ソロだけでなく群舞も美しかった。


観劇の後、東京カテドラルでのクリスマス・ミサにも行ってきましたが
電車の中でなんとサンタさんに遭遇。
子供たちにプレゼントを配った"仕事帰り"だったようです。


(NPO法人チャリティーサンタさん)

コロナ禍明けの、久しぶりにクリスマスらしいクリスマスを過ごしました。


『神的なもの ~ピアノ作品集~』(ヨアキム・カール)

2023-12-17 19:26:22 | クラシック音楽
ノルウェーのピアニスト、ヨアキム・カールが弾く『神的なもの ~ピアノ作品集~』
というCDを聴きました。



収録されている曲は以下の通りです。

バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』
リスト:2つの伝説より第1曲『小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ』
バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『来たれ、異教徒の救い主よ』
メシアン:『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より第5曲『御子に注ぐ御子のまなざし』
バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ』
リスト:2つの伝説より第2曲『波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ』
バッハ/ブゾーニ編:コラール前奏曲『来たり給え、創造主なる聖霊よ』
メシアン:『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』より第14曲『天使たちのまなざし』
フランク:前奏曲、コラールとフーガ

ノルウェー、ロフォーテン諸島のスタムスンド教会で録音されています。


コラール前奏曲『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』は
塚谷水無子さんの「ブゾーニ編:ゴルトベルク変奏曲」の解説によれば
「ヨーロッパの人々に最も愛されている」コラール前奏曲だそうです。
私もとても好きな曲です。

アンドレイ・タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」で流れるのがこの曲ですが
未来?を描いたSF映画の冒頭にバッハを用いた段階でこの映画の"評価"は決まった気がします。

『目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ』は曲名は知らなくても
一度はどこかで耳にしたことのある有名な曲ですね。


リストは「超絶技巧練習曲」や「タンホイザー序曲」(ピアノ版編曲)など
派手で煌びやかな印象が強いのですが、1861年にローマに移住して以降
キリスト教に題材を求めた作品が増えていきます。

どちらも二人の聖人(フランチェスコ)にまつわる逸話を基にした曲ですが
『小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ』は小鳥たちの囀りを描写するトレモロが印象的で
神秘的で静かな風景です。

『波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ』は荒れ狂う海をマントを広げて渡る力強い情景が描かれ
壮大なクライマックスを迎えます。


オリヴィエ・メシアンは神学者でもあったそうで、やはりキリスト教的な主題の作品も多いです。
パリのサントトリニテ教会で60年にわたりオルガン奏者を務めました。

『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』は2時間を超える大作で"音楽語法"もかなり複雑です。
第1曲「神のまなざし」に登場する<神の主題>
第2曲「星のまなざし」に登場する<星と十字架の主題>などが他の楽曲にも現れます。
殆ど現代音楽のような曲ですが「共感覚」の持ち主で一音一音に異なる「色」を感じるメシアンには
違う情景が見えていたのかもしれません。

メシアンの曲といえば、以前に聖イグナチオ教会(カトリック麹町教会)
「キリストの昇天」の第3楽章「キリストの栄光を自らのものとした魂の歓喜の高まり」を
聴いたことがあります。
コンサートが終わった後のアンコール?だったのですが
突如として鳴り響いたパイプオルガンに度肝を抜かれました。

教会のステンドグラスは、聖書の物語を分かりやすく伝える意味もありますが
教会で歌われる、演奏される音楽もまた同様です。

教会のパイプオルガンで聴くメシアンは特別なものでした。


普段はこのような「企画物」はあまり聴かない(手に取らない)のですが
バッハのコラール前奏曲『われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ』で始まり
フランクの『前奏曲、コラールとフーガ』で幕を閉じるという構成に惹かれてしまいました。

他の曲はどれも「標題音楽」ですが、フランクのみ「絶対音楽」です。
にもかわらず「神的なもの」と題するCDの最後に(バッハ、リスト、メシアンを経て)フランクを選ぶとは。

『前奏曲、コラールとフーガ』については
以前にも書きましたがホルヘ・ボレットの演奏が私にとっての究極の1枚です。
そのボレットには及ばないまでも、ヨアキム・カールの演奏も余計な飾りを排した
静かで美しい、この「神的なもの」の最後を飾るに相応しい響きです。


因みに本CDの原題はラテン語の「numinosum」で「神々しい」というような意味です。
心理学者ユングの自伝「思い出・夢・思想」に出てくる言葉からインスピレーションを受けて
選曲したそうです。

チバユウスケ逝去

2023-12-05 22:37:14 | クラシック以外の音楽
稀代のロック・ヴォーカリスト
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケ氏が2023年11月26日に逝去されました。

今では彼らの演奏はYouTubeで多数聴くことができますが
アベフトシのギター同様、自分も、そして何より若い人達がもう二度と彼の歌声を生で聴くことができない
それが残念であり悲しいです。
ご冥福をお祈りいたします。



あのさあ
一回死んだ星はまた生き返ると思う?
俺は生き返ると思う

Ado 『唱』

2023-11-18 21:07:55 | クラシック以外の音楽
妻からの紹介?で
YOASOBIさん『アイドル』、米津玄師さん『KICKBACK』を聴いたのですが
その流れ?でAdoさんの『唱』に出逢いました。

米津玄師さんは「Lemon」「パプリカ」や、映画「シン・ウルトラマン」の「M八七」を知っていましたが
YOASOBIさんは、やはり妻の紹介で「夜に駆ける」を聴いていた(観た)くらい
Adoさんに至っては「うっせぇわ」とか話題になってたなあ、程度の認識しかありませんでした。

ちょっと大袈裟かもしれませんが「日本の音楽って、こんなことになってたのか」という感想です。

YOASOBIさん(ikuraさん)の恐ろしいまでの安定感や
スローな曲ばかりだと思っていた米津玄師さんの「ロック」もよかったのですが
とりわけAdoさんの表現力には驚かされました。


別に音楽理論(楽典)に詳しいわけではありませんが、クラシック音楽の"文法"からは外れた転調の頻発や
様々な曲調、旋法が複雑に組み込まれた楽曲は、もはやジャンルの定義が不可能です。
ガラパゴス日本で謎の進化を遂げた「音楽」ですね。


長年クラシック音楽を聴いていますが
小学生時代は「YMO」に嵌り、中学生時代から今に至るまで「ULTRAVOX」は聴き続けています。
30代くらいには「ミッシェル・ガン・エレファント」をはじめ「邦楽ロック」もよく聴いていました。

今回、遅ればせながらこれらの楽曲に接して、ふと思い出したことがあります。
それは1970年前後に出てきた、そしてその後の「(主にロック系の)邦楽」にとっては意外と無視できない
「日本語ロック論争」です。

私の場合はYMOを好きになったあと
メンバー(細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一)それぞれのYMO以前の過去作に触れる中でこの「論争」を知りました。
曰く、細野晴臣が在籍していた「はっぴいえんど」が日本語ロックの先駆であり画期的だった云々・・・
それが事実かどうかは分かりませんし実際に聴いてみてもピンときませんでしたが。


定義は様々ですが、大雑把にいうと「日本語でロックは歌えるのか?日本語でロックをカッコよく歌うには?」
というような論争だと思います。

日本語を英語風に発音する歌唱や、英語(英単語)と日本語をごちゃ混ぜにした歌詞などが解決策?の一つで
個人的には1980年前後に登場した桑田佳祐や佐野元春などが、その成功例?かなと感じていましたが・・・


それが(論争から半世紀が経って)こんな形で出現してくるとは!
Adoさんの『唱』は(勿論、作り手はそれを意識したわけではないでしょうが)
「日本語ロック論争」の"究極の回答"の一つのような気がします。
(『唱』がロックか否かという別の議論があるかもしれませんが)

前出の「日本語を英語風に発音する歌唱」「英語と日本語をごちゃ混ぜにした歌詞」を踏襲しつつも
更に「日本語だからこそカッコいい」のだというレベルに到達している
というか、そう確信するほどの圧倒的な説得力を持った歌声です。


それにしても、Adoさんの歌唱力を最大限に生かした『唱』という曲はなんなのでしょう!
(ご本人も「過去一難しい」と語っているそうですが)
僅か3分という時間の中に、こんなにも様々な表現が詰め込まれた楽曲を私は知りません。
毎日10回くらい聴いています。

「人間の声こそが最高の楽器だ」という実例を改めて見せつけてくれました。感謝!




YouTubeには日本武道館でのライブで『唱』を初披露する映像もあがっています。

冒頭「Okay たちまち独壇場・・・」のところ
ここはまだ曲が走り始めておらず、歌詞も若干噛み易い?からかAdoさんの緊張感も伝わってきます。

スタジオ録音の音源は
繰り返しレコーディングした中の"いいとこ取り"やエフェクトで如何様にも加工できると思いますが
このライブ映像でAdoさんの歌声が本物の「最高の(生)楽器」であることが証明されています。

本当に素晴らしい!!

映画 『イノセンツ(Innocents)』

2023-08-05 23:12:35 | 舞台・映画など
映画 『イノセンツ(Innocents)』を観てきました。


2021年9月公開
監督:エスキル・フォクト
脚本:エスキル・フォクト
音楽:ペッシ・レヴァント
制作:スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド

監督自身、大友克洋の漫画「童夢」からインスピレーションを受けたといっているそうですが
「童夢」を知っている人の中には「童夢実写化といっても過言ではない」という方もいますね。

私は「(童夢は)団地を舞台に超能力者同士の戦いが・・・」程度の知識でしたので
類似点、オマージュカットなどは分かりませんでしたが、作品自体は大変面白かったです。

子供が主人公であるが故の、先が読めない静かな緊張感が全編に満ちており最後まで飽きさせません。


無邪気?な子供達が「力(超能力)」を持ってしまったら・・・という展開といえば
以前に見た「クロニクル(Chronicle)」という映画を思い出しました。


2012年公開
監督:ジョシュ・トランク
脚本:マックス・ランディス
制作:アメリカ

「クロニクル」の主人公達は子供といっても男子高校生ですが最後はとんでもない大惨事に突き進んでいきます。

一方、今回の 『イノセンツ(Innocents)』は小学生(女の子三人と男の子一人)ですが
超能力者同士なのに、こんな戦い方なのか、こんな描写になるのか、という新鮮な驚きです。
大人(親)も出てはきますが、あくまでも「子供達だけの世界」で大人達に知られることなく
戦いは始まり、そして終結していきます。


今まで観たことのない、でももしかしたら最も"リアル"な超能力映画だったかもしれません。