内容の気になる本がある。佐野洋子著・「シズコさん」である。
母娘のねじれた絆が書かれているらしく、その中で『母が嫌いで、顔をみると
首を絞めたくなる・・・・』と謂う件がある。
何処かで聞いたことがあるセリフだ思った。
今、マスコミを騒がせている江東区マンションの会社員の不明女性事件。
その容疑者が同じような言葉を発していた。彼の場合は父親への憎悪。
就職の面接で<父親を殺したいほど嫌いだ>と言ったと云う。
他人に、それほどの言葉を発することを全く理解できないが、しかし、
親子の間の確執は今に聞いたことではない。
小説・「坊ちゃん」でも<おやじは、
ちっともおれを可愛(かわい)がってくれなかった。
母は兄ばかり贔屓(ひいき)にしていた。・・・
おれを見る度にこいつはどうせ碌(ろく)なものにはならないと、
おやじが云った。
乱暴で乱暴で行く先が案じられると母が云った。・・・>と
両親から疎まれる主人公が書かれているが、
これほど邪険にされても現代のような心理が働かなかったのは、
実に不思議である。親には孝行という時代背景の所為かも知れない。
私達は今日まで数々の【パンドラの箱】を開けてきた。
そうして、心の闇を探って見たくもないおぞましいものを見せられた。
蛭子神: 日本神話。伊弉冉尊、伊弉諾尊が八尋殿(やひろどの)の
御柱の前で初めて生んだ神。女性であるイザナミから男に声を掛けたため、
骨のない水蛭子(ひるこ)という奇形児が生まれてしまった。
生まれた蛭子神は、葦の葉の船に乗せられて流されてしまった。
果たして神代の時代から、親子でありながら
そぐわない事実は存在していたのかも知れない。
≪心の底は世界の果てよりも遠い≫と云う中国の諺がある。