北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都発幕間旅情】三笠記念艦,軍港都市横須賀に六六艦隊最終艦の敷島型戦艦四番艦を探訪

2018-07-11 20:04:33 | 旅行
■日露戦争日本海海戦殊勲艦
 京都発幕間旅情、水曜日の特集は寺社仏閣城郭紹介の旅行記に加え今回から旅行特集を新たに紹介しましょう。

 軍港都市横須賀、海上自衛隊横須賀基地に逸見桟橋ヘリコプター搭載護衛艦いずも、吉倉桟橋イージス艦きりしま、船越地区掃海母艦ぶんご、アメリカ海軍横須賀施設の原子力空母ロナルドレーガン、これら筆頭に護衛艦、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、掃海艇等が並ぶ。

 横須賀は散策する程に、軍港の歴史情緒あふれる、しかし同盟国海軍との異国情緒御溢れる、しかし江戸時代に遡る横須賀開港の歴史が点在し、そして徳川家康と三浦按針との国際交流の歴史を思い出す、深みのある、京都とはまた違った歴史都市である事を思い出す。

 記念艦三笠、日本海軍の連合艦隊旗艦として1902年に竣工した戦艦です。敷島型戦艦四番艦として建造され、満載排水量15140t、全長131mと建造当時は世界最大の戦艦でした。建造はイギリスのヴィッカース社、現BAEです。前ド級戦艦として現存する貴重な一隻だ。

 海上自衛隊横須賀地方総監部旧三笠艦保存所として登録されるれっきとした防衛省の施設ですが、三笠保存会が運営し入場券を購入すれば自由に見学ができます。戦後一時荒廃し、上部構造物や艦内は多くが再生後となっていますが船体はそのまま、歴史的価値は高い。

 横須賀三笠公園、横須賀基地を一望のヴェルニー公園前にある京浜急行汐入駅から徒歩にして十五分ほど、三笠公園はアメリカ海軍横須賀施設三笠ゲートからもう少し進んだところにあり、1923年に除籍されたのちの姿を、戦後一時荒廃しましたが今に伝えています。

 戦艦、それは19世紀末に戦列艦から発展し20世紀中期まで国家が有しうる最大の戦略兵器となっており、現代では20世紀中期における核兵器の誕生により戦略的地位を譲り、戦術兵器としては航空機の長距離打撃力により歴史へ去りましたが一時代の象徴兵器でした。

 三笠、229mm装甲板を船体に有し戦艦同士の艦隊戦を想定しており、主砲40口径305mm連装砲2基4門、副砲は船体40口径152mm単装砲14門、補助武装40口径76mm単装砲20門と47mm単装砲16基を備えている他、450mm底部魚雷発射管4基を備えている。

 六六艦隊構想として明治時代の1896年、日清戦争後に三国干渉として緊張関係が高まったロシアへの対抗を主眼とした艦隊建造計画に依拠し、戦艦六隻と装甲巡洋艦六隻を整備する一大事業が開始されました。計画は当時国家予算八千万円の時代に二億円を要している。

 敷島、朝日、初瀬、三笠、以上戦艦四隻が新造され、戦艦富士、八島、とともに戦艦六隻体制を確立し、装甲巡洋艦八雲、吾妻、浅間、常盤、出雲、磐手、を建造しました。富士、八島、はイギリスの前ド級ロイヤルサブリン級戦艦の派生型にあたり排水量12500tという。

 日本海海戦、1905年5月27日に対馬海峡で帝国海軍連合艦隊とロシア太平洋第二艦隊との間で戦われた海戦は世界初の戦艦同士による艦隊決戦ともいわれ、更に陸上の会戦ではなく洋上の海戦により戦争の趨勢を決定した世界戦史上での一つの転換点でもありました。

 連合艦隊旗艦として臨んだ日本海海戦、戦艦三笠の名前を世界に轟かせました。歴史的価値は1925年に世界の戦艦や大型巡洋艦の保有数を定め軍拡に上限を設けるという世界史上初の主力兵器に関する軍縮条約、ワシントン海軍軍縮条約では枠外として認められたほど。

 ワシントン海軍軍縮条約において記念艦として維持される事となり、船体は陸上に置かれ、そして繰り返しますが第二次世界大戦敗戦後、金属窃盗や管理者不在による興行用途転売等で上部構造物が大きく損なわれましたが、アメリカ海軍の助力もあり復興し、今に至ります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【G7X撮影速報】ロシア艦隊舞鶴入港,アドミラル-トリブツ・アドミラル-ヴィノグラードフ(2018-07-05)

2018-07-10 20:00:33 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■西日本豪雨序幕の舞鶴基地
 舞鶴基地ロシア艦入港の際には、あれほど激甚災害になるとは思っていませんでしたが、西日本豪雨の始りという状況下の入港情景です。

 ロシア艦隊は駆逐艦アドミラルトリブツ、駆逐艦アドミラルヴィノグラドフ、補給艦ペチェンガ、舞鶴入港、0900時に舞鶴入港と海上自衛隊HPに公開されていました。そして本日10日の0830時出港予定と発表されています。台風七号を越えて舞鶴入港となりました。

 ウダロイ級は満載排水量8500t、全長163.5m、全幅19.3m、武装はAK-100艦砲にSS-N-14/RPK-3対潜ミサイル、RBU-6000対潜ロケット12連発射機、533mm 4連装長魚雷発射機、AK-630CIWS、3K96リドゥート艦対空ミサイルとレゾルブ5システムを持つ。

 台風七号、九州を掠め日本海を北上し能登半島沖で温帯低気圧となった台風で、温帯低気圧となった直後に日本のはるか南の海上、マリアナ諸島において台風は地方が発生、日本本土には向かわず沖縄県先島諸島を掠め台湾北方を中国大陸へ向かう進路を採っています。

 温帯低気圧となったとはいえ元台風、成程物凄い雨量でした。名古屋のいつもお世話になっている方に途中で合流をお願いし、舞鶴市内は自動車にて移動できる様になる。西日本豪雨、平成三〇年度七月豪雨と気象庁が命名した豪雨はしかし、こうして始まった訳です。

 前島埠頭、新日本海フェリー舞鶴ターミナルが北海道小樽とを結び、舞鶴基地入港の艦艇が目の前を航行する鯵釣りの名所まで便乗し進出した際には豪雨でした。雨煙で舞鶴一望の五老岳も有名な展望台は影さえ見えず、僅か1.2km先の護衛艦ひゅうが、も霞むほど。

 アドミラルトリブツ、アドミラルヴィノグラドフ、ロシア艦隊は予定通り入港しました。北海やバレンツ海に北太平洋を作戦管区とするロシア海軍には台風を乗越えるだけの能力があったのか、聞けば前日に沖留していたといいますが、すると台風強風圏を越えた事に。

 文庫山学園、舞鶴市福祉施設は舞鶴基地の北吸桟橋を一望する舞鶴名所の一つですが、アドミラルトリブツを撮影する場所と、アドミラルヴィノグラドフの入港撮影位置を前島埠頭と文庫山で陣地変換する事としました。感謝です、機動力発揮、これも自動車ならでは。

 対潜艦として設計されているウダロイ級は90kmの射程を誇るSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルは艦橋右舷左舷の基部に存在感を示し、対潜攻撃は勿論、対艦攻撃用弾頭も装着可能です。またKa-27対潜ヘリコプター2機を驚くほど巧みに艦内の格納庫に搭載しています。

 近代化改修により搭載された3K96リドゥート艦対空ミサイルは背負式のAK-100艦砲二門の更に前に垂直発射装置VLSへ収容されており、射程50kmを誇る。この艦対空ミサイルの搭載で、ロシア海軍はウダロイ級に新たに防空駆逐艦としての能力も付与した訳ですね。

 SS-N-27カリブル/クラブ巡航ミサイル搭載の近代化改修が2010年代に入り実現しており、これはアメリカのトマホーク巡航ミサイルを参考に開発されたミサイルです。SS-N-27カリブル/クラブ巡航ミサイルは駆逐艦に限定的な戦略攻撃能力を付与したともいえましょう。

 ひゅうが、満載排水量19000tのヘリコプター搭載護衛艦が舞鶴基地に停泊しており、ロシア艦隊を迎えました。これまで、ミサイル巡洋艦ワリャーグ、駆逐艦アドミラルパンテレーエフを舞鶴で撮影しましたが、あの時はヘリコプター搭載護衛艦しらね、が現役でした。

 ロシア艦隊は1980年代のソ連海軍時代に建造された艦、今回ホストシップは護衛艦あさぎり、平成時代初期の護衛艦で接遇し、港内には護衛艦まつゆき、5隻が残るのみとなった護衛艦はつゆき型が停泊していましたが、ひゅうが、と並ぶと時代の移ろいを感じましたね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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西日本豪雨(平成三〇年度七月豪雨)氾濫洪水と未だ掴めぬ被害全容,東日本大震災以来の大災害

2018-07-09 20:17:35 | 防災・災害派遣
■台風一過の大雨特別警報
 特別警報は昨日漸く全て解除されました。先週の台風七号が温帯低気圧となった後、台風一過に訪れたのは晴天ではなく西日本全域への歴史的豪雨でした。

 平成30年度7月豪雨、西日本九州四国地方に甚大な被害を及ぼした先週木曜日から今週月曜日までの一連の豪雨について、気象庁は本日、今回の記録的な豪雨災害を平成30年度7月豪雨と命名しました。日本海を北上した台風七号が能登半島沖にて温帯低気圧に転じ、これにより行き場を失った大量の雨雲が線状降水帯となり、日本列島半分に豪雨を注いだ。

 被害は、甚大です。亡くなった方は広島県では東広島市、呉市、広島市、三原市、竹原市、福山市、坂町、尾道市、府中市、安芸高田市、熊野町。岡山県では、倉敷市真備町、笠岡市、総社市、井原市。愛媛県では、宇和島市、西予市、大洲市、松山市、今治市京都府では綾部市、亀岡市、山口県では岩国市、周南市、本州四国だけでもここまで広範囲に及ぶ。

 九州でも被害は大きく福岡県では北九州市、筑紫野市、鹿児島県では鹿児島市、兵庫県では、宍粟市、猪名川町、滋賀県高島市、岐阜県関市、高知県大月町、佐賀県伊万里市、以上の市町村にて犠牲者が出ており、豪雨被害は本日1900時の時点で死者114名、3名が意識不明、行方不明者61名。災害での100名以上の死者は2011年東日本大震災以来です。

 台風7号の影響を受けた降雨は7月3日より継続していましたが気象庁は7月6日1710時に長崎県と福岡県及び佐賀県に大雨特別警報を発令しました。その2時間半後の1940時には続いてに広島県と岡山県及び鳥取県に特別警報を発令、その三時間後に当たる2250時に京都府と兵庫県に発令、6日だけで8府県に特別警報が発令、更に降雨量は増大を続ける。

 七夕の日7月7日1250時に岐阜県へ大雨特別警報が発令、翌7月8日未明の0550時には重ねて高知県と愛媛県にも大雨特別警報が発令されました。100mmの時間雨量が観測された地点も少なくなく、大雨特別警報として50年に一度の規模の雨量という事でしたが、複数の河川が氾濫し、西日本高速道路、JR西日本、JR九州、JR東海の路線へも影響は及ぶ。

 JR西日本だけでも山陽本線を筆頭にほぼすべての路線が運休となり、芸備線三篠川鉄橋流失を筆頭に山陽本線と呉線に伯備線では土砂流入、加古川線や阪和線では道床流失、特に鉄橋流失は復旧へ時間を要しそうです。産業もPanasonic岡山工場浸水被害、三菱電機京都製作所等四工場操業停止、ダイハツとマツダも7日に西日本地域の操業を停止しました。

 100mmの時間雨量は驚かされますが局地的には近年頻発しているようにみられます、これは観測網の精密化により従来の気象観測網が見逃していた局地豪雨、所謂ゲリラ豪雨を確実に把握できるようになった為かもしれません。しかし、主観的には近年の豪雨増大という印象を考えずにはいられず、豪雨対策という視点を防災と減災共に考える必要も大きい。

 大雨特別警報は気象業務法第13条の2として2013年5月30日に公布された改正気象業務法へ盛り込まれました。これは2011年の平成23年台風12号に際し紀伊半島において総量2000mmが観測されたことを受けての制定ですが2013年9月16日に早速大雨特別警報が京都府と福井県と滋賀県に発令され、その際も数十年に一度の豪雨と表現されています。

 政府は台風七号接近の7月2日時点で官邸情報連絡室を設置していましたが、6日1358時の時点で官邸対策室へ格上げし警戒態勢を強めていました。そして被害の拡大と共に政府は8日に非常災害対策本部を設置、また総務省消防庁や警察庁も災害情報連絡室を設置、防衛省も連絡室を早くから設置しています。一端を自衛隊災害派遣から見てみましょう。

 自衛隊派遣、6日金曜日に京都府京都市では水防活動として第7普通科連隊及び中部方面後方支援隊が土嚢3660嚢を作成、水防支援に当たりました。九州福岡県では記録的豪雨により道路寸断や地域孤立が相次ぎ、福岡県知事より人命救助に関わる災害派遣が要請され第40普通科連隊及び第4施設大隊が北九州市、第2施設群が飯塚市へ、第9施設群が筑前町へ出動です。

 広島県が2014年以来の集中豪雨に襲われたのも金曜で、広島県では海田町、熊野町、東広島市、呉市、安芸津町に災害派遣要請が出され第13旅団隷下の第46普通科連隊、第47普通科連隊及び海上自衛隊の呉地方隊が出動しています。岡山県でも高梁市、総社市、倉敷市、井原市への災害派遣要請が出ており第13特科隊及び第305施設隊が出動しました。

 7日土曜日には大雨特別警報が広範に発令され、高知県では安芸市での孤立者の救助等、福岡県では継続し人命救助等を北九州市に、広島県でも継続し広島市と海田町と熊野町に東広島市と呉市及び安芸津町へ、岡山県でも高梁市と総社市と倉敷市に井原市へ、京都府で新たに人命救助として綾部市と舞鶴市、愛媛県松山市、山口県岩国市でも災害派遣要請が。

 8日日曜日は一部で大雨特別警報が解除されたものの未明に四国へ新たに発令され、被害も高知県では孤立者の救助等が四万十市と宿毛市と宿毛市に香美市及び香南市へ、広島県では広島市と西条町と安浦町に熊野町と呉市と竹原市に三原市及び江田島市、京都府綾部市に舞鶴市、岡山県でも岡山市に高梁市と総社市と倉敷市に井原市前日と継続し災害派遣を。

 愛媛県では災害派遣要請が拡大し、人命救助に関して怒和島と宇和島市と松山市及び大洲市へ。新たに兵庫県より宍粟市での人命救助の要請があり、派遣部隊は中部方面隊が第3師団、第13旅団、第14旅団、更に増援として第10師団と方面直轄部隊、西部方面隊が第4師団と方面直轄部隊、海上自衛隊も呉地方隊と舞鶴地方隊、航空自衛隊も派遣されました。

 平成30年度7月豪雨は、東日本大震災以来の100名を超える犠牲者を出し、平成に入り最大の水害となりつつあります。従来の豪雨対策の延長線上で、今後の大規模豪雨災害にどのように対応するのか、また自治体の防災能力や、大雨特別警報と共に広範囲に発令される避難指示との対応について、避難方法や救助、考えさせられる点は多いのですが、同時に現在も行方不明者の捜索が続いています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】富士学校創設63周年富士駐屯地祭【09】当面の敵を撃破せよ(2017-07-09)

2018-07-08 20:10:32 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■富士戦闘団任務達成状況終了
 2015年度行事用の解説で2017年度行事写真、少々解説と写真が外れてしまいましたがご容赦を。

 戦車教導隊第2中隊の90式戦車が続く。16式機動戦闘車は量産開始三年目の製造費用が7億5500万円です。対して90式戦車は生産開始当時こそ12億円という高価な費用を要していましたが、生産治具購入などを初度費として加算していた為、12億円に繋がった。

 90式戦車も量産が続くと共に生産費用は8億5000万円前後に低減され、2010年の生産終了までに一両当たり7億9000万円まで費用を下げた事もありました。16式機動戦闘車はそれよりも3500万円ほど安価なのですが、まあ、軽装甲機動車初期一両分、というところ。

 しかし、戦車乗りとしては、16式機動戦闘車よりも90式戦車のほうを選ぶと思うのですが、どうでしょうか、と考えてしまいます。16式機動戦闘車に乗車する戦車要員の立場になって考えなければなりません、戦車砲に撃たれたらば確実に撃破される車両どちらがよいか。

 74式戦車は確かに現在のままでは第一線戦闘に対応できません、暗視装置を新型の熱線暗視装置に換装、増加装甲を砲塔と車体前面に装着し、遠隔操作銃搭RWSを搭載しても第三世代戦車改良型に対抗できません、しかし16式機動戦闘車がその答えになるとも思えない。

 戦車教導隊第2中隊の90式戦車、この流星マークの90式戦車が最初の90式戦車中隊でしたので、ゴジラシリーズはじめ多くの映画では90式戦車といえば流星マーク、というものでしたね。映画に出演しますと、戦車部隊はかなり後世までその雄姿が作品として残る。

 複合装甲で対戦車ミサイルや徹甲弾脅威に対応する強靭な防御力を有し、1mもの鋼鉄を貫徹する120mm滑腔砲を搭載し1500馬力エンジンにより70km/hという機動力を有する戦車です。打撃機動防御を揃えた、この三要素を揃えたものが世界では第3世代戦車という。

 90式戦車は目標自動追尾装置と自動装填装置という二つの新技術を採用し、世界の戦車の中で最優秀の性能を保持していました。冗談ではなく最優秀と言い切れるのは、自動装填装置の採用により、車内容積でいちばん場所を取る装填手をロボットに置き換えている。

 砲塔に乗車する砲手と車長を砲塔前部に集中する事が出来、ここに複合装甲を重点的に配置することで、軽量なのに重装甲、ということを実現できたわけです。逆に複合装甲を採用しないと、装甲厚を鋼鉄で1mにしなければならず、これでは重すぎて動きがとれません。

 防御力の面から自動装填装置は意義があります。装填手は後部の弾薬庫から砲身基部に装填するため、体を回して作業するため、この空間も複合装甲で覆うとなるとかなり重量がかさむのです、もちろんロボットが装填しますが緊急時には車長による手動装填も可能だ。

 レオパルド2、M-1A1、チャレンジャー、各国の戦車はこの為に複合装甲を広くとる必要があるのですね、ただ、装填手は戦車乗員が最初に割り当てられる修業の場、ここをロボット化するのですから戦車初心者は陸曹になって初めて操縦手として着任することになる。

 陸曹になるまで戦車乗員と慣れない、というのは90式戦車に始った3名定員の戦車ですが、陸曹の養成は時間が掛かります。この為の戦車乗員をどう養成するのか、装軌装甲車操縦手等を充てていますが自衛隊装甲車が装輪化する潮流のなか、将来の問題の一つでしょう。

 目標自動追尾装置は、戦車照準器通じ砲手がロックオンした目標を文字通り自動追尾するものです。自動追尾するという事は砲手が延々と砲塔を微調整して目標を追い続ける必要が無い訳ですが90式戦車は自車が移動しつつ敵が移動する最中を照準し続ける事が可能だ。

 複数の戦車と同時に抗戦できるというものが目標自動追尾装置の強みです。これは90式戦車には戦車長用の独立照準器が搭載されています、車内から目標を索敵でき、砲手が主砲の照準を行いますが、車長がより優先度の高い目標を発見した場合には優先照準できる。

 目標追尾装置と車長用照準器の併用、これはどういう事かと云えば、砲手が目標戦車を自動追尾させる最中に戦車長がより優先度の高い、例えばこちらを狙う、目標を発見した場合には即座に優先射撃し撃破出来る。しかし、ロックオン目標も追尾し続けている訳です。

 車長指定の目標を撃破し、その四秒後に自動装填装置が装填した直後に砲手がロックオンしている目標を打撃することができる。ただ、目標自動追尾には砲塔を標的に追随させる必要があり、二つの標的が角度的に離れすぎていると追随不能となってしまいますが、ね。

 自動装填装置はフランスのルクレルク戦車やロシアのT-72戦車以降のT-80戦車やT-90戦車が採用し、目標自動追尾装置はイスラエルのメルカヴァMk3BIZ戦車以降のメルカヴァMk4なども採用していますが、両方とも採用したのは90式戦車が初めてです、画期的だ。

 当初は不具合に悩まされましたが、整備手順を完成させ、世界最強の戦車として自衛隊は育て上げました。自動装填装置と目標追尾装置の併用搭載は非常に効果が高く、最新型の10式戦車でもこの方式が採用されています、勿論性能と信頼性を高めて、搭載されました。

 戦車教導隊第3中隊の90式戦車、開発当時は相当な最先端技術を盛り込んだ戦車である事から一両当たり12億円もしまして、毎年36両しか調達できない、といわれたものでした。当時はバブル崩壊もあって、不必要なまで贅沢な戦車なのでは、とも言われたものですが。

現代の視点で見ますと、毎年6両しか10式戦車を調達できない現状では36両も調達できている状況は時代の違いを痛感させられますが、実は74式戦車は毎年80両ちかくを調達していたのですから36両となると少ない、という印象に直結する事は確かに否めません。

 しかし、90式戦車は量産を続けると共に徐々に調達価格が低減してゆきました。戦車の費用の三割近くは火器管制装置の費用により占められる、とはイスラエルのメルカヴァMk3戦車にBAZ火器管制装置を搭載しただけで調達費用が三割増大した事でいわれましたもの。

 90式戦車が費用面で高くなっていたのは自動装填装置と自動目標追尾装置に車長用独立照準器という高度な機材を、第三世代戦車として複合装甲や新世代の暗視装置と高出力エンジン等の元々高い費用の構成要素に加えた為であって、コスト管理で失敗した訳ではない。

 そもそも90式戦車が高いといわれた背景、調達されていた当時には、湾岸戦争当時の報道でアメリカのM-1A1戦車が3億5000万円程度、という情報が出ており、ドイツのレオパルド2も4億円程度なので90式戦車は不当に高い、という主張がしめされていたのです。

 しかし、サウジアラビアがM-1A2戦車を調達する際には8億7000万円という数字が示され、そもそも3億5000万円程度というのは7000両の一括調達費用の事業評価数値をドル換算を当時円高レートで再換算したという、一種さお竹屋の移動販売のような数値でした。

 高いたかいというならば自衛隊が外国製を輸入したらば安くなるのか、90式戦車の代わりにM-1A1戦車を導入する場合はどうなるのか、という視点が必要となるでしょう。勿論、90式戦車の自動装填装置や目標追尾装置や車長用独立照準器搭載はオプションとなります。

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【くらま】日本DDH物語 《第四五回》給油艦はまな竣工とヘリコプター搭載護衛艦量産

2018-07-07 20:09:38 | 先端軍事テクノロジー
■護衛艦ひえい建造と給油艦
 はるな型護衛艦は、一番艦はるな建造と共に二番艦ひえい建造へ進みます。

 海上自衛隊の空母導入計画、するとヘリコプター搭載護衛艦の量産を筆頭にその到達点として航空母艦を中古でも新造でも取得、と考えられるかもしれませんが、仮に航空母艦を導入した場合でもどう運用するのか、という初歩的な視点、その上で実際にその為に運用できる基盤を構築しておかなければ、象徴的な一隻、という存在に終わりかねません。

 海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦整備前には、しかし、いくつかの視点で外洋が要軍再編への準備を継続していました。第一に給油艦はまな建造です、1960年度防衛計画により建造された給油艦で、現在は同名の補給艦はまな、が現役ですが、それよりも遥かに小型であり、基準排水量2900t、満載排水量7500tに過ぎず、燃料のみの輸送に限定される。

 はまな、はるな、艦名は似ています。はまな、といいますと海上自衛隊の補給艦とわだ型を思い出すところですが、昭和35年度計画艦として1962年に竣工した広島呉基地母港の給油艦です、建造は護衛艦はるな竣工11年前、しかし給油艦が高速航行し並走する護衛艦へ給油を行うスパンワイヤ横引給油方式を採用、米軍との共同作戦上の必要性など洋上補給を戦術体系に内部化する上で果たす役割は大きい。

 ミサイル護衛艦あまつかぜ建造により当時最新鋭と云えたターターシステム艦の取得と艦隊防空能力の付与、たかつき型護衛艦量産による外洋対潜艦の強化、と進んでいますが、水上戦闘艦は巡航速力以外の戦術運動をつづけた場合、四日乃至五日程度で燃料の大半を消費、一旦母港へ戻るか補給艦から補給を受けねばなりません、はまな建造は転機となる。

 給油艦はまな能力を見ますと補給能力は重油4000 kLと真水1000 t、1979年に竣工しました海上自衛隊第二の補給艦、新造時から給油艦ではなく補給艦として建造されました、さがみ、基準排水量5000tと満載排水量11600tのような、燃料4940kLに加えての一個護衛隊群の弾薬搭載や食料4万食の搭載能力とは比較になりませんが、戦術構築に寄与した。

 基礎固めを行ったうえでの防衛力構築、成程簡単に大型艦を揃えるよりは時間を要するものではありますが、艦隊保全主義として威圧感のみもちいる象徴のようになってしまい、実任務にあたる艦艇としては充分能力を発揮出来ません。そして、能力としての整備は、戦術研究以上のことを望むのであれば、稼動率念頭に即応艦を維持できる数が必要となる。

 ヘリコプター搭載護衛艦建造とともに、海上自衛隊は段階的に推進していた外洋海軍への転換を確実なものとしてゆきます。しかしのその背景には、南西諸島と小笠原諸島のアメリカからの返還、これは必然的にこの地域の防衛警備任務をアメリカより返還される事も意味しているといえましょう。一方、当面ヘリコプター搭載護衛艦の整備へ特化してゆく。

 ヘリコプター搭載護衛艦は当時画期的な洋上での対潜哨戒能力を付与させるものとなりますが、一隻では搭載するHSS-2対潜ヘリコプターは三機、一応常続的にヘリコプターを飛行させる事は不可能ではありませんが、その哨戒期間を24時間体制のまま一週間や十日と延伸し続けるには流石に限界があるといえます。複数の建造はこの時点から必須といえた。

 ヘリコプター搭載護衛艦は、仮に護衛艦はるな一隻で終わったならば、ここまで装備体系として自衛隊へ影響を及ぼすことは出来なかったでしょう。ヘリコプター搭載護衛艦の建造は、はるな竣工を筆頭に、はるな型護衛艦として進められたことに大きな意味があり、その目的は海洋国家へ回帰する日本に必要な防衛力の再構築という意味が強かったのです。

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平成三〇年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.07.07-07.08)

2018-07-06 20:17:22 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 京都市内を中心に西日本全域が記録的豪雨に見舞われる中、福岡県-佐賀県-長崎県に大雨特別警報が発令されました、皆様身の回りの安全は大丈夫でしょうか、そんな中ですが今週末の行事です。

 富士学校創設64周年記念行事-富士駐屯地祭、静岡県駿東郡小山町に所在する陸上自衛隊の駐屯地で、普通科職種と機甲科職種及び特科職種の専門教育及び幹部教育と新装備研究に戦術研究を行う陸上自衛隊の教育部隊です。隷下の富士教導団は戦車教導隊や普通科教導連隊と特科教導隊を隷下に置く編成で、首都圏近郊の自衛隊部隊として最も重装備を誇る。

 富士学校祭は平成30年度、平成最後の学校行事となりますが、同時に今年度末に戦車教導隊は東部方面混成団隷下の第1機甲教育隊と統合され機甲教導連隊へと改編されると共に御殿場市駒門駐屯地へ移駐する予定となっています。拡大改編されますが駐屯地移駐により新年度も例年規模の戦車部隊参加が可能かは未知数で、貴重な行事といえるでしょう。

 静内駐屯地創設54周年記念行事、日高郡新ひだか町に所在する駐屯地で、第7高射特科連隊創設37周年行事が執り行われます。広大な北海道を舞台に87式自走高射機関砲と81式近距離地対空誘導弾の実弾射撃が展示、自衛隊行事で実弾射撃が展示される場所、そしてミサイルの実射が展示される駐屯地は此処だけ。悪天候の場合は射撃不能、晴天を祈ろう。

 普天間飛行場フライトラインフェスティバル、在沖米海兵隊普天間飛行場の一般公開行事です。普天間飛行場には飛行展示は無く地上展示中心行事が行われ、MV-22可動翼機やAH-1Z戦闘ヘリコプターにCH-53重輸送ヘリコプター、UH-1Y軽輸送ヘリコプターのほか、F-35B戦闘機が今年度のフライトラインフェスティバルでは一般公開されるとのこと。

 舞鶴基地ロシア艦アドミラル-トリブツとアドミラル-ヴィノグラードフ一般公開、昨日掲載しましたロシア太平洋艦隊の舞鶴入港、ロシア艦隊の駆逐艦二隻が明日土曜日に一般公開されます。土曜日の1000時から1200時までと1300時から1500時まで予定され事前予約などは不要で、舞鶴基地へ行けば、手荷物検査などを経て自由に見学する事が出来ます。

 京都府の舞鶴基地ですが、本日6日時点で舞鶴基地最寄りの東舞鶴駅は京都駅から行く場合は舞鶴線全面運休となり、敦賀経由の経路本日6日は小浜線が全線で運休しています。明日7日の一般公開が行われるか、現時点で舞鶴地方隊より中止発表はありませんがJR西日本の列車運行状況は現在未知数でありJR西日本から旅行見合わせのお願いが出ました。

 さて、本日は第二北大路機関とコメント投稿への返信について。2018年7月29日を以てWeblog北大路機関は創設13周年を迎えます。そして2018年は2008年創設の第二北大路機関創設記念という節目の年でもあるのですね。Weblog北大路機関と第二北大路機関は第二北大路機関が予備ブログとの位置づけですが敢えて一定の距離を置いて運営しています。

 しかし、第二北大路機関は閲覧数が創設十年を経ても際立って少なく、予備ブログとして北大路機関閲覧機能に問題が生じた際の補完の役割を担えていません。一方、北大路機関は創設以来URLリンクを設置しない方針である為に第二北大路機関とは従来トラックバックサービスのみに依存してきましたが、今年に入りサービスが終了してしまいました。

 2018年7月29日の北大路機関創設13周年と共に第二北大路機関について、新方針を検討しています。この点について本日触れましたのは、第二北大路機関の知名度が低く、記事の追記情報と引用情報及び投稿への返信,災害緊急情報や速報記事を提供できていない中、北大路機関のアクセス数が突出している為、何らかの措置が必要であると複数の方から指摘されているためです。もう少しだけお待ちください。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・7月8日:静内駐屯地創設54周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/7d/hensei/team/aa/event/event.html
・7月8日:富士学校創設64周年記念行事-富士駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/fsh/
・7月7日:舞鶴基地ロシア艦アドミラル-トリブツとアドミラル-ヴィノグラードフ一般公開…http://www.mod.go.jp/msdf/maizuru/
・7月7-8日:普天間飛行場フライトラインフェスティバル2018…http://www.okinawa.usmc.mil/units/Maw.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【G7X撮影速報】ロシア艦隊舞鶴入港,アドミラル-トリブツ&アドミラル-ヴィノグラードフ(2018-07-05)

2018-07-05 20:18:01 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■悪天候下のロシア艦隊入港
 悪天候故に少々画像が粗い事はご容赦のほどを、先ほど入港したロシア艦隊舞鶴入港の様子を紹介しましょう。

 舞鶴基地へ本日ロシア艦隊が入港しました。台風一過ながら記録的豪雨への厳重警戒下に撮影した写真を紹介しましょう。本日豪雨予報から舞鶴基地最寄の東舞鶴駅を起点とし敦賀に至る小浜線は全線運休、特急まいづる号始め山陰線舞鶴線特急も荒天運休でした。

 航海団長コロレフ-オレグ-アレクサンドロヴィッチ海軍大佐指揮下、 ロシア艦隊は駆逐艦アドミラルトリブツ、駆逐艦アドミラルヴィノグラドフ、補給艦ペチェンガ、以上三隻を以て入港しています。悪天候下ですが海上自衛隊掃海艇の先導を受け無事入港しました。

 アドミラル-トリブツとアドミラル-ヴィノグラードフ、共に1155型大型対潜艦として設計されたウダロイ級駆逐艦で、ソ連海軍時代の1980年より14隻が建造されました。ウダロイ級は満載排水量8500t、全長163.5m、全幅19.3m、駆逐艦としては中々の大型艦です。

 ウダロイ級駆逐艦2隻の舞鶴基地同時入港、1980年代設計の重装備のロシア艦が2隻舞鶴で揃う、こうした機会は中々ありません、実際ウダロイ級が二隻揃って入港は日本では初めてではないでしょうか。台風七号が日本海上に在る中、なんとか時間を捻出しました。

 台風七号、ロシア艦隊入港前日に日本海上において温帯低気圧となりましたが、前線を伴う湿った雨雲の影響で台風一過ながら記録的豪雨、北大路駅のある京都府北区でも現時点で避難勧告が発令されています。そして日本の遥か南の海上では台風八号も発生したという。

 日露捜索-救難共同訓練の実施が今回のロシア艦隊訪日の目的です。台風が日本海上を北上する中、果たしてロシア艦隊が舞鶴へ予定通り入港できるのかは考えさせられましたが、北海やバレンツ海の波浪と共に艦隊訓練を行うロシア海軍ならば大丈夫、と撮影展開へと。

 海上自衛隊は第14護衛隊司令 松味 利紀1等海佐を指揮官としホストシップに艦長加藤 淳子2等海佐指揮下の護衛艦あさぎりを充てています。日露捜索-救難共同訓練は本日5日から10日にかけ、ロシア艦隊が入港している舞鶴港及び若狭湾北方海域において行われる。

 100mm単装砲AK-100艦砲二門にSS-N-14/RPK-3対潜ミサイル、RBU-6000対潜ロケット12連発射機、533mm 4連装長魚雷発射機、SA-N-4個艦防空ミサイル、AK-630CIWS、機関砲にミサイルと艦砲満載、文字通り水上戦闘艦という名の通り重武装となっています。

 ウダロイ級は対潜駆逐艦として設計されており高性能ソナーと戦闘指揮システムを搭載、長距離対潜打撃力と2機のヘリコプターを運用する能力をシステム化し、また当時としては先進的なガスタービン艦として高い整備性を有し、ロシア海軍の対潜戦力中枢を担う。

 ロシア海軍では北方艦隊へヴィツェアドミラルクラコフ、マルシャルワシレフスキー、セヴェロモルスク、アドミラルハルラモフが配備、アドミラルパンテレーエフ、アドミラルトリブツ、アドミラルヴィノグラドフ、マルシャルシャポシニコフ、が太平洋艦隊に揃う。

 海上自衛隊HPには寄港中の予定 として7月 5日1000 時に舞鶴基地入港、1330時より入港歓迎行事 、7月 7日土曜日の1000時より午前と午後に分けて一般公開が行われ、7月10日火曜日の0830時に 舞鶴港出港、との行動計画が示され、一般公開が行われる。

 ロシア艦隊一般公開、土曜日の1000時から1200時までと1300時から1500時まで予定され事前予約などは不要で見学できる、雨天でのロシア艦の艦上見学が行われるかは当方にはわかりかねますが、貴重な機会でしょう。日曜日は行われませんのでご注意ください。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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イージスアショアにSSRレーダー選定,北朝鮮核ミサイル廃止不透明とミサイル防衛事業

2018-07-04 20:06:43 | 先端軍事テクノロジー
■秋田山口イージスアショア建設
 北朝鮮核廃絶の見通しが不透明である中、秋田県と山口県へ整備予定のイージスアショアへ前進がありました。

 イージスアショア陸上型イージス防衛システム用レーダーへ防衛省はロッキードマーティン社製SSRレーダーシステムの採用を決定しました。当初はアメリカ海軍のアーレイバーク級フライトⅢミサイル駆逐艦へ搭載されているSPY-6,海上自衛隊イージス艦のSPY-1後継機種を運用互換性から選定される可能性が指摘されていましたがSSRとなったもよう。

 SSRレーダーは富士通社製半導体素子を採用し、部分的に日本へ経済波及効果が見込めると共に長期運用費用を計算した場合、SPY-6よりも経済性に優れているとの算定があるとの点が決定に影響したと考えられ、防衛省は2023年までに秋田県と山口県の自衛隊演習場内にイージスアショア設置を完了、日本全土へのミサイル防衛体制を完成させる方針です。北朝鮮のミサイル脅威はひと段落したように思われる中、イージスアショアの建設を急ぐ背景はどう云ったものがあるのでしょうか。

 米朝初首脳会談、6月12日にシンガポールにてアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金委員長との間で合意した核廃絶の方針、トランプ大統領は北朝鮮核脅威は消滅したと豪語していますが、具体的な核廃絶計画は皆無で北朝鮮が現在何発の核弾頭を有しているかも不明でした。しかし、現状を見てみますと廃絶とは逆行している可能性が浮かんできます。

 核関連施設を北朝鮮は拡大しミサイル生産の強化を行っているのではないか、2日付CNN報道によればモントレー国際大学院MIIS研究者が咸興市内のミサイル関連部品製造施設をプラネット-ラブズ社の撮影した衛星画像を解析し、拡張工事が行われていると結論を出しました。同施設ではミサイル本体部分や弾頭部分の炭素複合素材部品を製造しています。

 核施設の整備も継続されている、これは6月28日付CNN報道において、アメリカの研究機関38ノースが北朝鮮の寧辺核関連施設衛星写真を解析し発表したもので、これまでの核実験用核物質等を抽出したプルトニウム製造用原子炉の改修や周辺に複数の支援施設増設が確認、上記のミサイル開発と核関連施設の周辺整備の継続、6月12日の米朝首脳初会談における北朝鮮の核廃棄姿勢と明らかに逆行している。

 昨年2017年の毎週のように弾道ミサイルが発射され、日本国内でもJアラートにより空襲警報が鳴り響き、小中学校ではミサイル避難訓練、冷戦時代のキューバ危機の際でも日本では行われなかった程の緊張状態、アメリカ海軍は原子力空母3隻を日本海に展開させ、大統領決断で即開戦、という状況よりは緩和されていますが、核問題は進展していません。

 海上自衛隊は日本海におけるイージス艦ミサイル警戒監視体制を完了させました。イージス艦の常時貼り付けを終了させるものですが、北朝鮮ミサイル危機を受け、射程1300kmのSM-3迎撃ミサイルを搭載し弾道ミサイル飛翔中間段階の迎撃能力を有するイージス艦を常時展開させていました。しかし日本のイージス艦は現在6隻、海上自衛隊は南西諸島において軍事圧力を強め、尖閣諸島近海に公船の侵犯を繰り返す中国に対する警戒監視を継続しなければならずイージス艦の日本海常時展開は負担が大き過ぎました。

 破壊措置命令は継続されます。この為、北朝鮮弾道ミサイルによる奇襲に備え全国の航空自衛隊高射隊のPAC-3迎撃ミサイルは従来通り警戒態勢を維持するとのこと。イージス艦は艦隊防空艦であり、高度な能力の一端をイージスBMDシステムとしてミサイル防衛に供しているもので、本来任務は艦隊防空、ミサイル防衛に専従させられぬ事情がありました。

 現段階では、北朝鮮核廃絶に向けての見通しはいまだ不透明です。こう断言する背景には、北朝鮮はクリントン政権時代の朝鮮半島核危機以来、核開発中止を約束しては反故にした先例がブッシュ政権とオバマ政権と積み重なり、このままではトランプ政権も名を連ねる事となりかねません。イージスアショア、この整備には巨額の費用を要し、例えば島嶼部防衛へ水陸機動部隊の強化や全国の即応機動連隊整備、そして戦闘機更新事業と多額の費用を要する最中で疑問符もありますが、北朝鮮ミサイル脅威の現状からイージスアショアをはじめ、まだまだ日本本土ミサイル防衛体制の整備は必要といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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フランス徴兵制再開断念!マクロン大統領公約の“一ヶ月徴兵制度”は“青少年少女合宿”へ転換

2018-07-03 20:10:23 | 国際・政治
■専門職化進む現代軍隊と徴兵制
 欧州で徴兵制再開の波があり、このままでは日本も徴兵制が敷かれる、一部野党が与党の保守政策に反発し流布されている視点ですが、フランスは再開を断念しました。

 フランスのマクロン大統領は選挙公約に掲げていた徴兵制再開の中止を発表しました。フランスは徴兵制を永らく維持してきましたが冷戦後に廃止しています。フランスの徴兵制再開大統領公約は厳しい安全保障情勢の反映ともいえましたが、驚かされたのは大統領が提案していた徴兵制の徴兵期間が一か月間という、非常に短い期間であった点でした。

 日本にも徴兵制が施行されるのではないか、この視点は近年、民主党系の立憲民主党や国民民主党、そして共産党や社会民主党などで提示されている視点です。具体的には自民公明連立与党の保守政策に対し、徴兵制の可能性があると危機感煽る事で自らの支持に繋げる試み。実際問題、自衛隊と自民公明党は徴兵制に否定的、世界的にも潮流は志願制です。

 徴兵制の時代が終わりつつある、これは2003年イラク戦争を見ても分かる通り、陸上戦闘は機動戦闘へ大きく転換しており、情報共有に基づく集合と分散や火力指向の効率化を目指しているという点です。つまり少数の機械化部隊と空中機動部隊が敵中枢と策源地や通信中枢や物流中枢を分散と集合を繰り返し、敵正面にのみ急速集結し打撃を加えるという。

 高度に専門化した陸上戦闘は、しかし同時に戦闘要員一人一人の負担が増大し高い技術と教育が求められます。すると従来型の大群でも対応出来そうな錯覚に陥りますが、大軍でも指揮系統を破壊されれば何をすべきか遊兵化し、機動力が少なければ大軍でも一点突破で集中攻撃された際に脆弱性は否めません、志願制要員に高度な訓練を行う事が望ましい。

 厳しい安全保障情勢、欧州各国は冷戦後一貫して良好化を辿っていたロシアとの国際関係が突如悪化した事に右往左往している状況です。ドイツ連邦軍は当時ドイツ統合直後にアメリカ陸軍よりも人数が多い状態となっていましたが現状は6万3000名、フランス陸軍も9万名台となっており、欧州で10万以上の陸軍を持つのは現在ギリシャ陸軍ぐらいです。

 クリミア半島へロシア軍が直接侵攻し、ウクライナ政変に便乗しクリミア半島を武力併合すると共にウクライナ東部紛争へ義勇兵を名乗り最初は揃いのジーンズに身を固めた国籍不明の特殊部隊が、続いてロシア軍装備の義勇兵がウクライナへ侵攻したのは2014年でした。ロシアのプーチン大統領はミリタリーショップで軍装は売っていると関与否定します。

 国際情勢の緊張はこのクリミア併合と共に、冷戦終結後の欧州との蜜月関係は終了しつつあり、少なくとも民主主義や平和主義という意味での欧州諸国との価値観の共有は、ロシアとの間では難しい、という現実を突き付けられた瞬間でした。こうした国際情勢の緊迫化を背景に、スウェーデンが2012年に中断した徴兵制の再開を発表、そしてフランスも。

 しかし、一ヶ月で何を教えるのか、フランス陸軍は現在二個機甲師団を基幹としています。機甲師団は機甲旅団と軽機甲旅団に機械化歩兵旅団と山岳旅団か落下傘旅団を基幹とする2万8000名規模の編制で、戦車を乗りこなせる要員か軽装甲車で砂漠を踏破できる要員か装甲戦闘車で市街戦を戦える要員か山岳旅団でアルプスを踏破できる要員、専門性が高い。

 徴兵制中止は、大統領が徴兵制の目的を社会の団結、という軍事以外の視点を掲げた為でしょう、陸軍は専門化しており、一ヶ月ではFA-MAS小銃の分解結合と軍曹の指揮に従って行進するのが限度、体力練成や専門教育等は出来ず、有事の際の予備人員としても招集訓練の期間の方が徴兵期間よりも長くなるでしょう、この為に陸軍は施策に否定的でした。

 合同合宿、マクロン大統領が徴兵制の代案として提案したのはフランス国民に男女ともに一か月間の協同合宿を行う事で団結を強化する、というものでした。合宿ならば事故の危険がある武器教育も不要、間違いも起きない。所管官庁については報じられていませんが、フランス軍は専門職化を期しており、一ヶ月徴兵の教育という負担は回避できたようです。

 本土決戦、勿論、防衛政策を誤りフランス本土までロシア軍が侵攻した場合は国民皆兵制か亡国かの決断を迫られますが、フランス軍専門職化はフランスまで脅威が及ぶ前に対処する事が主眼であり、この点は不変のようです。日本も統合機動防衛力や周辺事態法対処能力を維持している限り、フランスと同様の防衛政策を志向しています。ただ、現在の野党の様に着上陸まで自衛権発動を許さないという施策を採った場合、その限りでもありません、徴兵制はあり得る、という野党勢力が政権を取った場合は、あり得るのでしょう。

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陸上自衛隊が海上輸送力整備検討:統合機動力整備へ即応機動連隊や戦車連隊輸送も視野か

2018-07-02 20:09:03 | 防衛・安全保障
■戦車揚陸艦型等新大綱へ盛込み
 陸上自衛隊の最精鋭、空挺団は機動運用へ輸送機で世界中どこにでも展開します。それでは統合機動防衛力整備事業で創設の精鋭はどう機動するか。

 7月2日本日付の産経新聞報道によれば陸上自衛隊独自の輸送船について“陸自駐屯地を置く南西諸島の離島間輸送を円滑にすることが目的”として年内にも改訂予定となっている防衛計画の大綱へ盛り込まれる方針である事を複数の政府関係者からの情報として報じました。現在陸上自衛隊は沖縄県と鹿児島県島嶼部への警備隊新編等の施策を推進中です。

 報道を視る限りでは、機動力を重視した小型輸送艦を検討している他、LST型の戦車揚陸艦の必要性が部内で提唱されている点を示しており、この事から陸上自衛隊はアメリカ陸軍の輸送揚陸艦を念頭に検討している点が窺えます。現在防衛省では民間フェリー長期チャーター契約を結び海上輸送力強化を進めていますが、これより作戦輸送を想定している。

 多用途防衛型空母、として自民党安全保障調査会が四月に政府提言として海上自衛隊へ現在のヘリコプター搭載護衛艦いずも型の延長線上に当たる洋上防衛の中枢艦整備の必要性を提示していますが、今回報じられている陸上自衛隊独自の輸送艦整備はこれよりも小型で、海上自衛隊の将来輸送艦、おおすみ型輸送艦3隻の後継艦とは別の計画となります。

 陸上自衛隊が検討する海上輸送能力、その整備の目的は単に水陸機動団機動力整備に留まらず、もう少し広い視野で進められているとも考えられます。広い視野とは、第8師団と第14旅団の即応機動連隊緊急展開や、北海道に集約される戦車部隊主力の南西方面への緊急展開を期する統合機動防衛力整備という陸上自衛隊の一大防衛力整備事業とも兼ねて。

 第15即応機動連隊や第42即応機動連隊は、有事の際に南西方面防衛省縁へ緊急展開する、これは第15即応機動連隊改編行事に際し編成官が繰り返し強調していた点ですが、海上自衛隊の輸送艦おおすみ型は即応機動連隊を輸送する十分な能力がありません。おおすみ型は1隻で戦車小隊を含む機械化された増強普通科中隊を輸送する能力しか有していません。

 おおすみ型輸送艦は1998年より就役開始、1992年のカンボジアPKO任務を受け自衛隊の国際貢献任務増大を背景に、当時の輸送艦みうら型、あつみ型の輸送能力では不十分であるとして建造されたもので、冷戦終結直後の当時は陸上自衛隊水陸両用戦部隊の団規模での新編と南西方面における自衛隊の本格的な水陸両用作戦は想定されていませんでした。

 LCACエアクッション揚陸艇、海上自衛隊には最高速度40ノット、96浬の沖合から輸送艦を発進し90式戦車等を揚陸し往復できる性能を有していますが、アメリカからの有償軍事供与の費用は高性能の分、90億円と高く、LCAC1隻で縮小編成の1個戦車中隊を取得できるほどの取得費用を要し、海上自衛隊も輸送艦定数以上の大量取得は行っていません。

 戦車を縮小し予算を節約しても、戦車を運ぶ費用の方が戦車そのものの取得費用よりも遥かに高くつく。この他にも1機400億円程でC-17輸送機を取得可能です、C-17は90式戦車1両か96式装輪装甲車6両を空輸可能ですが、それにしても1機だけでも取得費用は非現実的な水準となっています。結果、北海道の戦車をどう統合機動させるかは大課題です。

 南西方面への緊急展開を掲げつつ、しかし輸送する艦船は無い、南西方面は離島であり鉄道輸送は不可能であり、しかも鉄道は狭軌である為に90式戦車や10式戦車を輸送出来ない。現状では、民間フェリー等を武力攻撃事態法指定協力企業から強力、つまり実質徴用ですが、受ける他ないという状況ですが、それにしても最前線まで輸送は不可能でしょう。

 舟艇部隊を陸上自衛隊が検討するのはこれが初めてではありません、1960年代後半に奄美返還や続く沖縄返還を念頭に、南西諸島防衛へ舟艇部隊での機動を基本とする混成団を創設する構想がありました。特に南西諸島防衛は第1混成団新編で一段落しましたが、当初は南九州と沖縄に空中機動混成団と水陸機動混成団、との先進的な検討が為されています。

 あきつ丸として陸上自衛隊の先輩に当たる旧帝国陸軍は陸軍丙型特種船という全通飛行甲板を有し九七式戦闘機13機を搭載可能な輸送艦を戦前に建造しています。帝国陸軍は上陸用舟艇母艦となる神州丸等も建造しており、実はアメリカ海兵隊が本格的な水陸両用強襲能力を1930年代に整備した背景に、帝国陸軍への対抗という部分が一部あったりするほど。

 現時点で陸上自衛隊に船舶運用の経験はありません。この為、LSVにしてもL-CATにしても陸上自衛隊が導入し運用するには能力整備に時間を要するでしょう。電子戦装備の有無や個艦防空能力をどうするのか、海上自衛隊との協同はどうか、そもそも陸上自衛隊は船舶の停留港を持たず、桟橋を取得するところから始めねばなりませんが、必要な能力整備です。

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