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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

西日本豪雨(平成三〇年度七月豪雨)特定非常災害!気象庁特別警報発令と災害派遣要請の課題

2018-07-14 20:05:40 | 防災・災害派遣
■北海道南西沖沖地震上回る被害
 京都は祇園祭前祭宵山の宵宵宵山を迎えましたが、本日、西日本豪雨が政府により特定非常災害に指定されました、豪雨災害での特定非常災害指定は指定は初という。

 西日本豪雨の犠牲者は本日1700時のNHK報道では死者201名と心肺停止3名に33名が安否不明、平成時代に入り2011年東北地方太平洋沖地震東日本大震災、1995年兵庫県南部地震阪神大震災、1993年北海道南西沖地震、災害がありましたが今回の西日本豪雨は25年と2日前に発生しました北海道南西沖地震の犠牲者を上回る被害となるように思われる。

 気象庁は特別警報発令と共に通常の気象警報以上の即座の対応を求めていますが、最大の問題は市町村単位で全域避難指示発令となった場合の大量の避難民移動や避難所収容能力で、例えば千人単位の避難者を確実に収容でき、且つ二次災害の懸念を局限化できる安全な公共施設が各地に十分確保されているのか、という防災政策上の問題があるでしょう。

 西日本豪雨災害、今回の豪雨被害は土砂災害やダムの緊急放流等に際し避難勧告が示されるのみで避難指示が発令されるまで時間を要した事が批判されています。しかし、今回の豪雨災害、平成最大の豪雨災害を前に教訓として豪雨災害が見込まれる際には、かなり早い時期に避難指示が発令すべく転換するのではないかと考えられます、早い方が良い、と。

 避難所の確保の課題、2011年台風15号に際し名古屋市108万名避難勧告、避難所の観点で思い出すのは名古屋市内を流れる庄内川が同市守山区志段味で氾濫、名古屋市は守山区と北区の8万名に避難指示を出すと共に市内12区100万名に避難勧告を発令し、そもそも名古屋市内に108万人も避難者を収容可能な公共施設があるのか、と考えさせられました。

 広域避難、平成27年9月関東-東北豪雨、2015年に発生し鬼怒川堤防が決壊した事で茨城県常総市等が大規模に浸水した際に、市外への広域避難、という概念が識者により大きく採り上げられました。水害被害は常総市全域に及ぶ懸念があり、実際決壊地点から11kmを隔てた常総市役所が一階床上浸水の被害を受けており、市内に安全な場所が無かったため。

 しかし、名古屋市108万名避難勧告の避難所収容能力の問題と同様に常総市広域避難の命題は道路交通量の上限、広域避難を行うのに徒歩で特別警報下の豪雨の中で氾濫する鬼怒川橋梁を渡る事は非現実的である為に自動車を用いる必要がありますが、現実的に一つの市町村が丸々避難する場合の交通量を受け入れる程、冗長性のある道路は中々考えにくい。

 加えて、避難用自動車をどのように収容するのか、という点も重要な問題です。避難所に充分な避難者収容能力があるとしても、避難者が自動車で避難する場合、避難所周辺が大量の自動車により交通マヒとなる可能性は否めず、現実的な問題として、2011年の東日本大震災では大津波警報下にて自動車渋滞が多くの避難者の生命を左右する事となりました。

 浸水地域に孤立する懸念を踏まえれば、広域避難の必要性は当然ともいえるのですが、反面、現実的に可能なのか、特に広域避難を行った隣町が被災地にという懸念も払拭できません、避難指示を行うにも限度があるのではないか、寧ろ一定以上の危険性が生じた場合には避難指示の上に外出禁止指示を設定、無理な避難を回避する事の方が重要ではないか。

 拠点避難所を孤立が想定される地域であっても確保しておく。例えば今回活躍した総務省岡崎消防配備の水陸両用車レッドサラマンダーのような両用車輌をもう少し広範に配備する、自衛隊にもBV-206全地形車両のような車輌を現在の航空自衛隊への一部への限定配備に代えて広範配備する等、無理な避難ではなく避難所を救助する体制も考えられましょう。

 防災設備強化、堤防の際限なき強化はもちろん必要ですし、大規模災害を考えるならば防災道路として幅広い道路網と橋梁整備は必要です。しかし、公共事業を行うにも限度があり、一辺倒に避難所退避を促し渋滞や路上での冠水に見舞われる懸念も留意しつつ、垂直避難として浸水に耐える中層建築物の指定制度と救助能力強化へ転換すべきとも考えます。

 自衛隊災害派遣について、京都市水害に関する京都府の災害派遣に疑問が残る点を一つ付け加えます。京都府は京都市水防に関する災害派遣として福知山駐屯地の第7普通科連隊に対し災害派遣を要請、深夜一時過ぎながら初動部隊は一時間で出発、続いて連隊主力の第一陣一個中隊を派遣した後、水位が低下したとして京都府が撤収要請を出していました。

 第7普通科連隊の災害派遣主力第一陣はそのまま駐屯地に引き返したものの、京都市はその後再度水位が上昇としたとして再度災害派遣要請を出しています。京都市は確実な情報収集を実施していたのか、活動内容は土嚢作成と構築であり水防団で対応出来なかったのか、そもそも派遣要請を出した京都府知事は府内福知山駐屯地の位置を理解していたのか。

 京都府内では綾部市や園部町に舞鶴市と次々に災害派遣要請を出す非常事態となりましたが、京都府の警備隊区としている部隊は第7普通科連隊のみ、本部管理中隊と五個普通科中隊に重迫撃砲中隊から、要員を抽出し災害派遣を行います。勿論、桂駐屯地の中部方面後方支援隊と大久保駐屯地の第4施設団はありますが、方面隊隷下で全般支援が任務です。

 水防団の拡充を含め、京都市はもう少し本格的な防災対策を考えるべきではないのか、第7普通科連隊への災害派遣の二転三転、そして水防という災害派遣内容の中の数百個の土嚢配置等は、災害派遣を要請する水準の災害であったのか、直後の福知山や園部と綾部での災害へ、当然連隊の人員には上限があり、京都市内派遣による初動への影響は否めません。

 自衛隊の規模には限りがあり、陸上自衛隊が18万名であった時代は1990年代に、つまり20年前に終わっており現在は13万名規模でしかありません。災害派遣を行うにも、もう少し計画的に行う事は出来ないか、土木系公務員の拡充や消防及び水防団の機能強化、都道府県単位で危機管理機構を、知事に助言する幕僚機構の拡充が求められるように思います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (7)
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