北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:基幹部隊をみる3 偵察中隊、草創期の編成を自衛隊現用装備へ置き換える仮定

2015-01-21 23:23:28 | 防衛・安全保障
◆草創期の偵察中隊
 現用装備に置き換えるならば、というところで偵察中隊の編成を見てみます。

 軽装甲機動車/半tトラック28両・高機動車/1t班トラック5両・96式装輪装甲車4両・10式戦車/機動戦闘車戦車7両・81mm迫撃砲4門、この装備でも一方面の独立した小規模な戦闘は展開できる、ということになりますので、仮に自衛隊が人件費の観点から人員を縮小する場合には、戦車と装甲車両の増勢を代案として行う、これは選択肢として検討すべきやもしれません。

 偵察中隊は156名と小所帯であっても独立した戦闘が展開し得る,偵察中隊凄いじゃないか、という視点にまとまりかけたところを水を差すようで恐縮ではあるのですが、問題点はあります。戦車の不足で防衛大綱下の戦車定数300では、と思い浮かべる方がいるやもしれませんが、勿論それは一つ挙げられるのですのですけれど、他に重要な点があります。

 それは戦車小隊という戦車部隊の最小単位をあまり考慮せず、編成しているところで、これは他に、自衛隊が管区隊編成時に参考とした米軍歩兵師団が戦車大隊を有していたところにあります。あくまで偵察中隊の戦車は威力偵察のためのものであり戦車部隊と遭遇した際には後方から戦車部隊を応援へ呼ぶ、この時点までが偵察中隊の任務だった、ということ。

 戦車は偵察中隊では火力支援や威力偵察の火力として用いられていたものであり、厳密には戦車を有していますが戦車部隊として運用していたのではありません。戦車同士の戦闘は回避や自衛戦闘等に限られ、本格的な対機甲戦闘は師団主力の対機甲防御戦闘の範疇にあり、そして師団戦車大隊の任務だった、というもの。

 戦車班という、戦車小隊以下で単車ではない戦車部隊が存在していた、というところでしょう。戦車班、小隊を考えますと中隊全体で7両の戦車が装備されていましたので、7両は戦車小隊を組むのではなく戦車班も数が多いため小隊陸曹が指揮を執る、というものでもないのでしょうか。

 7両の戦車小隊を3名の小隊陸曹と補佐に補佐代理を立てて指揮、少々考えにくく、文字通り戦車小隊長ではなく偵察小隊長が指揮を執る、というかたちなのでしょう。自衛隊では小銃分隊を小銃班として呼称し、実質的に班は分隊を示すような印象がありますが、戦車班は少々意味が異なるようです。

 こうしますと、偵察中隊型の編成、現用装備に置き換えるならば、軽装甲機動車/半tトラック28両・高機動車/1t班トラック5両・96式装輪装甲車4両・10式戦車/機動戦闘車戦車7両・81mm迫撃砲4門、というものを各方面に整備し、これで十分対応できる、という論理には成り得ません。

 しかし、偵察中隊に本部機能を強化させ、戦車を保有し独立戦闘を展開可能な戦闘部隊という位置づけでの偵察隊を創設し、それを隊区ごとに広く数個偵察隊を分散配置させ、これら偵察隊の独力戦闘能力において対応できない状況へ、戦車大隊と大型の普通科連隊を組み合わせる戦闘団を一個置き、一種の機械化混成団として編成する、という方策はあり得るでしょう。

北大路機関:はるな
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ISIL(イスラム国)戦闘員、邦人人質2名に2億ドルを要求!我が国人道支援に反発

2015-01-20 22:11:50 | 国際・政治
◆日本の人道支援へ反発
 本日、シリア領内において武装勢力ISIL(イスラム国)が邦人人質二名の身代金として日本政府に2億ドルを要求するビデオ声明を発表しました。

 ISILは、我が国がISILの残虐行為や虐殺及び略奪行為により発生した大量の難民に対する医療支援や住宅支援などの人道支援に対し、イスラム教徒を殺し家を破壊していると反発、昨年十月に拉致したジャーナリストや自称民間警備会社社長など邦人2名を72時間以内に2億ドルを支払わなければ殺害する、と脅迫したわけです。動画ではイスラム国の戦闘員とみられる覆面の男が二人の人質へ刃物を突き付け、身代金2億ドルが72時間以内に支払わなければ殺害するとの脅迫を行っています。

 中東歴訪中の安倍総理は今回の事態を外務省より報告を受けるとともに、東京の菅官房長官へ情報収集などの対応を命じ、ヨルダン政府やイスラエル政府といった歴訪諸国政府との連携とともに、万全の対応を行うと共に、拉致邦人の速やかな解放を強く要求する声明を発表しました。併せて、ISILがいかに反発しようともISILの残虐行為により発生した難民への支援を継続する姿勢を示しています。現在政府では外交ルートを通じ情報収集を行うと共に公開された動画情報などから、この動画の信憑性などを分析している、とのこと。

 日本政府の人道支援は難民支援であり此処に既に1億ドルを拠出、更に1億ドルを追加拠出するとした姿勢、ISILは通常の語学力を有しているならば、難民への医療支援や食糧及び住宅支援は非難されるいわれは無く、これに反発し邦人人質から2億ドルの身代金を要求することは理解し難く、ISILの正義の価値観、異教徒への虐殺行為や徴税と称した銀行襲撃に加え女性の奴隷市場設置や外国人誘拐をイスラムの名の下で正義とするISILの価値観からは、難民への医療支援や住宅支援は彼らの価値観からは反発する要素があるのかでしょうか。他方で、今回の身代金要求動画は、あたかも我が国が自衛隊を派遣し、シリア及びイラク領内のISILへの攻撃に参加している印象を与えるものですが、前述の通り我が国の行動は難民支援を行っているものであり、この状況を理解できる要員がいないのか、報道などを理解できないのか、やはり理解できません。

 一方で、ISILは現在、広報動画などから鹵獲したイラク軍運用のアメリカ製装備がほぼ姿を消し、掠奪により弾薬や武器を調達した関係上、高度な専門性を要する兵器を整備できる要員が枯渇し、徐々に旧東側製携帯火器や日本車など民間車両を主体とした装備体系へと大きく弱体化しています。また当然ですが、イラク領内やシリア領内で相当数の空軍機を鹵獲していますが、これらを整備し運用し飛行させ管制させる能力を全く有していないため、米軍を筆頭とするNATOや中東の有志連合の空軍による航空攻撃に対し全く無力で、行動を劇的に制約されています。更にその資金源を占領地からの原油掘削と密売や、住民からの強奪や銀行強盗などによる外貨獲得に依存し、この資金を以て外国人戦闘員を獲得してきたのですが、資金の枯渇や外国人戦闘員の渡航への各国法執行機関による阻止などが大きく影響し、急速に弱体化すると共にこれを補うべく、資金により民心を獲得できない部分を更に残虐行為を強める事で補う行動をとっている様子が覗えるでしょう。

 今回の事案は、交渉までの時間を設定するには72時間という非常に困難な時間を設定すると共に2億ドルという非常識な金額を要求し、加えて受け渡し方法などを設定しておらず、あきらかに2億ドルを要求するという建前を採った殺害予告動画としか言いようがありません。一方で、ISILは自らの残虐行為により発生した難民への人道支援を行う我が国に対し、拉致邦人の殺害を予告するという非常識極まりない行為を行うことは、更に世界からの孤立を招くと言わざるを得ません。教養としてコーランをよんだ際にはISILの正義の価値観、異教徒への虐殺行為や徴税と称した銀行襲撃に加え女性の奴隷市場設置や外国人誘拐の根拠となる文脈は読み取れません。更に、人道支援を行いイスラム教徒を含む難民への支援を行う平和国家に対して、恫喝と2億ドルの身代金を要求するところは、今まで以上に理解できない異質な思考体系に堕落しているのだろうと思える次第です。

北大路機関:はるな
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欧州非常警戒態勢、パリ連続テロとベルギー連続テロ未遂事件へ治安出動

2015-01-19 20:45:41 | 防衛・安全保障
◆欧州で治安出動、我が国の影響も懸念
 今月7日に発生したフランス紙シャルリーエブド本社襲撃テロ事件を筆頭とする連続テロ事件は欧州に2001年の9.11同時多発テロ以来の緊張を強いています。

 ベルギーでは15日にイスラム過激派テロの準備拠点を警察が強制捜査、銃撃戦となり2名を射殺、このテロ計画に関与した容疑者が欧州全域に緊急手配されるとともに、ベルギー軍は2001年の9.11米本土同時多発テロ以来の陸軍部隊による治安出動を開始しました。仮にこの種の事態が我が国において発生した場合、自衛隊はどの程度対応できるのでしょうか。

 パリでの7日に発生したシャルリーエブド本社襲撃テロ事件は12名が襲撃したテロリストにより射殺され、これに連動し別のイスラム原理主義過激派によるパリ市内にてユダヤ系食品店人質事件が発生、買い物客や従業員4名が殺害、同じくパリ市ではモンルージュ警官襲撃事件が発生、シャルリーエブド本社襲撃テロ事件実行犯は逃走先の印刷工場にて突入したRAID:フランス国家警察特別介入部隊により射殺、食品店立て籠もり犯はGIGN:国家憲兵隊治安介入部隊により射殺されました。

 フランス国内ではパリ市警に内務省国家憲兵隊や内務省国家警察が出動し警備に当たっていますが、上記部隊に加えGIPN:国家警察特別部隊やCRS:共和国保安機動隊等を加えた警備部隊では非常に広い国土の警備に限界があり、フランス陸軍のフランス緊急対応軍団隷下部隊や外人部隊落下傘部隊等が首都警備へ参加しているところが報道映像から読み取れます。イスラム原理主義勢力によるテロは昨今、欧州出身者がシリアイラクでのISILイスラム国戦闘員参加者となり、帰国後テロを計画する事例が多く、我が国でも中東地域でのイスラム武装勢力戦闘経験者がおり、加えてISILへの参加を企て出国前の水際にて逮捕される事例があり、対岸の火事ではありません。

 アメリカABCテレビなどによれば、ベルギーテロ未遂事件にて容疑者を欧州全域での手配を行っており、日本時間本日1100時までの間にベルギー国内で13名を拘束もしくは射殺、フランス国内で14名拘束、ドイツのベルリン市内で2名拘束、アイルランドのダブリン市内で1名とイギリスのロンドン市内で1名がそれぞれ拘束され、更に本日ギリシャ警察がアテネ市内にて2名の容疑者を高速しました。ベルギーテロ未遂事件では、ロシア系軍用小銃や爆薬等が押収されており、数時間から遅くとも数日以内にベルギー首都ブリュッセルでの公官庁同時襲撃計画が準備されており、辛うじて警察が間に合った、という非常に危機的な状況にありました。

 幸い我が国はイスラム原理主義武装勢力による直接の脅威には曝されていませんが、アメリカの同盟国でありISILイスラム国によりテロ攻撃の対象国家として名指しされている数十の国家の一つです。日本国内では2012年10月17日の特定危険指定暴力団工藤會による対戦車ロケット弾発射器RPG-26隠匿の摘発や昨年にも大阪市において山口組系暴力団がロケット弾発射器を隠匿した事例があり、少なくともこの種の武器を日本国内へ持ち込めないわけではありません。ISILイスラム国の戦闘員がこの種の武器を我が国に備蓄することは、基盤が薄い以上非常に困難ではありますが、可能性は残るところ。

 日本国内でのテロ事件と言えば、1995年の地下鉄サリン事件を筆頭とするオウム真理教により一連の連続テロ事件を思い出し、化学兵器サリンやAK-74小銃の密造などを行っていたことが記憶に浮かぶところではありますが、ISILによるテロ事件の特色は明確な指揮系統では無く小規模なグループが別稿に計画し一つの蜂起を契機に行う計画性と無計画性の並立にあり、その兆候を法執行機関が捜査により把握することは非常に難しい、とのこと。

 加えて、上記の通り欧州でのテロ事件には軍用小銃や爆薬が用いられ、重要設備ではなく防備の薄い場所等が標的と成り得ます。結果、我が国において同種の事態が発生した場合、警察力での対応が困難となり、自衛隊法に基づく自衛隊の治安出動、という任務が想定されるでしょう。他方、自衛隊では2001年の9.11米本土同時多発テロを契機として、重要施設警備を自衛隊の任務へ追加、市街地近接戦闘を想定した訓練を積みかさねています。

 自衛隊は全国に隊区として警備管区を設定し、普通科連隊などを配置しているため、万一の事態が発生し、政府により治安出動命令が発令された場合、各師団及び旅団が作成する年次防衛計画に基づき隊区の重要施設へ警備部隊を配置、原子力発電所や空港に特定重要港湾などへの市街戦訓練を行った部隊の警戒配置が可能です。この種の事態は起きなければ幸いなのですが、政府が確たる対応を行う限り、万一への備えは準備されている、と言えるでしょう。いっぽうで、欧州では予めのテロ抑制政策を法執行機関以外の分野で対応が不十分であったため、テロが発生、テロ対策の拡大が基本的人権との境界線を曖昧なものとしているのではないかという、行き過ぎたテロ対策の懸念が散見されるようにも思います。これはテロ発生後では致し方ないところではありますが、平時からの警備強化を行いテロを防ぐことで、我が国ではこの種の事態が発生しての状況に直面しないよう、法執行機関の能力強化と警察力の強化、自衛隊の任務への対応能力強化など、求められるでしょう。

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榛名防衛備忘録:基幹部隊をみる3 偵察中隊、独立した戦闘を展開可能な最小規模

2015-01-18 22:51:52 | 防衛・安全保障
◆偵察中隊の戦闘能力
偵察中隊について、その編成から今位置に参考となる点を今回も見てゆきましょう。

 偵察中隊は中隊本部に三個偵察小隊を隷下に置く編制で、詳細は前回までに記載しましたが、当時の陸上自衛隊普通科部隊は徒歩機動が前提、トラックにより競合地域、つまり的が少数でも存在する地域に隣接する地域まで起動し、其処からトラックを降車、徒歩機動していた時代です。

 偵察小隊はその時代に機械化していた点だけでも有力視するに十分なものですが、加えて装備はかなり充実しているものでして、現在の装備に偵察小隊を置き換えますと、軽装甲機動車8両と96式装輪装甲車1両に10式戦車/機動戦闘車2両、偵察中隊の中隊本部は現用装備に置き換えますと、輸送支援用に3t半/73式大型トラックと高機動車を充てる、というところでしょうか。

 この編成をみますと、偵察小隊は映画“レマゲン鉄橋”の第27機甲偵察中隊、ジョージシーガル演じるハートマン中尉とベンギャザラ演じる小隊軍曹のエンジェロ軍曹が指揮する先遣小隊の部隊が、装備面から非常によく描かれていることが分かります。物凄い俊敏な印象を見せつけるM-24軽戦車は直協せず、M-8装甲偵察車が出ていましたが、ね。

 偵察中隊の装備定数は、ジープ28両・中型トラック2両・2t半トラック3両・M-3半装軌装甲車4両・M-24軽戦車7両・81mm迫撃砲4門、これを現用装備に置き換えた場合、偵察中隊を見ますと、軽装甲機動車/半tトラック28両・高機動車/1t班トラック5両・96式装輪装甲車4両・10式戦車/機動戦闘車戦車7両・81mm迫撃砲4門、となる。

 偵察部隊は機甲科に属する、という部分、実は戦車部隊の射撃競技会などでは自衛隊において偵察隊員が機甲科職種である関係上、審判などの公正を期する分野では戦車部隊の参加が多く、他戦車部隊の支援を受けられない方面隊競技会の場合偵察隊員が行う事もあるのですが、偵察隊が機甲科隊員、その背景に元々戦車を偵察小隊が装備していた、ということが挙げられるでしょう。

 この編成について、注目すべき点は幾つかありますが、参考点として大きなものは、偵察中隊は人員156名の機械化混成部隊ですが、この小規模な部隊でも火力が大きく、一定程度の戦闘を独力で行える、言い換えれば火力が大きければ人員の規模が少なくとも独立した戦闘を行える、というもの。

 偵察は敵勢力の概要を知るもの、敵勢力の有無を知るのは斥候、と用語は分かれています。つまり、斥候の上で発見した敵勢力に対し実際に戦闘を展開する、ということが偵察小隊の任務であり、この為に偵察小隊にその先頭を行き敵勢力の有無を確かめる斥候班を隷下に置いている、ということが分かるところ。

 そして偵察中隊は管区隊や混成団の先遣として先頭に立ち、敵勢力との間にて一定の交戦を行い、師団にあたる管区隊及び混成団主力を以ての火力戦闘を行う場合まで、小規模な敵前衛や前哨陣地程度ならば突破する能力を、この156名が装備する火力と車両に含めていた、ということ。

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鎮魂 1.17兵庫県南部地震/阪神大震災から20年

2015-01-17 23:48:10 | 防災・災害派遣
◆阪神大震災20年
 1995年1月17日、兵庫県南部地震から20年が経ちました。

 未明の激震、直下型地震の衝撃は住宅街を襲い、我が国屈指の大都市神戸を蹂躙しました。戦後五十年という節目の年、伊勢湾台風を始め多くの災害に見舞われながら我が国は非常事態というものの存在から幸いにして距離を置いていた頃ではありましたが、備えは万全というものは無い、というものを突き付けた巨大災害となりました。

 初動に関する様々な視点は、今回敢えて記載することを避けますが、多くの尊い人命の犠牲とともに教訓を得、その後の巨大災害への備えとなったように思います。一方で、多くの犠牲が無ければ諸政策や防災機構等の仕組みが有事を想定したものと転換することが出来なかったのは残念の至りで、次を如何に避け、想定外という表現、何分初めてのもので、という為政者の言葉を避ける体制を確保出来る事が望ましかったのですが。

 一方で、阪神大震災の犠牲者を追悼すると共に、東日本大震災というさらに大きな国難に直面する災害を教訓に加え、改めて想定外という言葉を為政者から踏襲することとなったのは重ねて残念の限りです。追悼、とはその最後の瞬間を繰り返さないことにあると考え、更に南海トラフ巨大地震の脅威が叫ばれる今日、祈念の追悼とともにその時への備えを怠らないよう努める事も、追悼の一形態だろう、と思い、当方も本日改めて防災用品の確認をしました次第です。

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平成二十六年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.01.17・18)

2015-01-16 23:18:12 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 毎週金曜日の自衛隊関連行事特集ですが、今週末は自衛隊関連行事がありません。

 海上自衛隊基地一般公開ですが、舞鶴基地は土曜日日曜日ともに北吸桟橋が開放されていまして、広報担当艦の護衛艦甲板が一般公開されます。ただ、この時期の日本海側は悪天候に見舞われる場合があり、積雪などの状況では一般公開が中止されることもあるのでご注意ください。

 呉基地日曜日一般公開は18日、護衛艦うみぎり公開が予定されています。係船堀桟橋が開放され、1000時と1300時と1500時の三回に分け受付が行われます。時間が区切ってありますので、足を運ばれる方は時間厳守でお願いします。呉駅から徒歩は遠いのでバスを利用するのが良いでしょう。

 佐世保基地週末一般公開は護衛艦さわぎり一般公開の予定、午前の部は0900から1030まで受け付け、午後の部は1300から1500時までの受付となっています。天候などの関係で変更される場合がいずれの場合もありますので、足を運ばれる方は遠方の場合は一度各基地へ広報展示予定のご確認をお勧めします。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭・ 今週末自衛隊行事予定は無し

◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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平成27年度予算案閣議決定、一般会計総額過去最大96兆3420億円

2015-01-15 23:44:00 | 国際・政治
◆防衛費4兆9801億円
 政府は14日の閣議において平成27年度予算を閣議決定した、とのことです。

 来年度予算は一般会計で総額過去最大96兆3420億円規模となりますが、消費税率引き上げなどによる歳出増加を背景に税収が54兆5250億円へと増大し、国債の新規発行額は36兆8630億円となり、30兆円台への引き下げは6年ぶりに達成されたとのことです。

 この中で、本Weblog読者の最大の関心事の筆頭に挙げられます防衛費ですが、4兆9801億円で、これは5兆円を下回るものの防衛費としては過去最大の予算となり、我が国防衛費の数倍を更に広げる中国の軍拡及び沖縄県及び鹿児島県への軍事圧力増大を背景として防衛費も比例し増加することとなりました。

 特に島嶼部防衛へは、陸上自衛隊が516億円という巨額を投じMV-22可動翼機を5機取得すると共にAAV-7両用強襲車30両を203億円で調達、航空自衛隊関連では滞空型無人機RQ-4グローバルホーク導入とE-2D早期警戒機導入による警戒監視能力強化や、遅れているF-35戦闘機取得へ6機分1032億円が盛り込まれる、とのこと。

 島嶼部防衛へ偏重し、陸上装備体系へ少なからず影響が生じ、一種喫緊の課題と言える次期多用途ヘリコプターや戦闘ヘリコプターなどの継続調達や延命措置などは棚上げされ、、MV-22の導入に重点が置かれているかたち。一方、装甲車両の取得も両用強襲車に偏重し来年度予算に盛り込まれませんでしたが、大規模災害などへの対応の観点から26年度補正予算により緊急調達のかたちで配備を継続するもよう。

 海上自衛隊関連では注視されていました多年度分一括取得方式が実現の方向で調整され、P-1哨戒機20機を3504億円で調達する方針です。これはインフレ率計算などを誤れば生産企業が撤退乃至破産に陥るリスクがありますが、この点への留意はどうなされているかきになるところです。更にイージスシステム2セットの調達も行われ、これにより海上防衛力は調達面から変革を迎える事となりました。

 今回決定されたのは閣議決定で、これにより決定したわけではなく政府による閣議決定を経て衆参両院へ提出されることとなります。14日の閣議決定の後、衆参両院での論議を経て成立する見込みで、政府は年度内での予算成立へ注力してゆくこととしています。

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榛名防衛備忘録:基幹部隊をみる① 偵察中隊、火力と機動力が充実した陸上自衛隊草創期の偵察部隊

2015-01-14 23:59:12 | 日記
◆戦車を持つ偵察中隊
 前回に続きまして、陸上自衛隊草創期に師団に当たるかっくタイや混成団におかれていました偵察中隊について引き続き見てゆきましょう。写真は当時の駐屯地祭に当方は足を運べませんでしたので現用のもので代用となりますが、ね。

 中隊本部は、ジープ4両、M-3半装軌装甲車1両、中型トラック2両、2t半トラック3両、M-24軽戦車1両、81mm迫撃砲1門を運用していました。中隊本部は輸送車両を保有し、偵察小隊の支援を行うと共に小隊が損耗を受けた際に予備装備の補填、という任務に当たっていたことが分かります。

 偵察小隊は、まず編制面から見ますと、小隊本部、斥候班、小銃分隊、支援分隊、戦車班、という編制を採っており、斥候班は2個分隊を基幹として班本部を置くという編制です。小隊隷下は分隊などが幾つか分かれて保有していますが、三単位編成のようなものは無く混成編成が特色といえるでしょう。

 小隊本部はジープ一両を以て小隊長と小隊陸曹が就きます。斥候班は班本部がジープ一両と1分隊と2分隊はそれぞれジープ2両に分乗し機動し全体でジープ5両を運用しています。小銃分隊はM-3半装軌装甲車の1両に全員乗車していまして、開放戦闘室と複数の機銃を搭載していまる。

 支援分隊は迫撃砲班にあたりジープ2両と81mm迫撃砲を装備します、ジープ2両ですので前進観測と迫撃砲運用車両、として充てる事も出来ますし、弾薬輸送支援なども行えます、最も当時の迫撃砲は今のL-16迫撃砲の三分の一程度の射程となりますが。そして戦車班にはM-24軽戦車2両が置かれていました。

 三個の偵察小隊が有する能力はかなりのもので、戦車班の戦車2両を小銃分隊が装甲部隊として支援、また支援分隊は1門とはいえ81mm迫撃砲を装備していますので現在の陸上自衛隊では81mm迫撃砲は普通科中隊の迫撃砲中隊に集約されていますが、小隊毎に迫撃砲による火力支援が可能となっており、柔軟性が高い。

 混成編成を採用していますので、偵察中隊は敵前衛程度の脅威であれば威力偵察の際の火力戦闘での排除をある程度までは実施できると考えます。また敵主力と接敵し、戦闘を偵察中隊から連隊戦闘団へ移行したのちは、一旦部隊を引き下げたのちに、これだけの装備水準ならば、連隊戦闘団の戦線形成後、師団に当たる管区隊や混成団の重要な予備戦力ともなりうるでしょう。

 斥候班はジープ5両ですが、ジープには当然軽機関銃を装備し、防御力は考慮していませんが機動力と火力を一応は両立しています、斥候し目標の有無を確認し次第にM-24軽戦車が75mm砲を射撃し威力偵察を展開、迫撃砲もこれを支援しまして抵抗が小さければそのまま装甲車の小銃分隊とともに制圧、大きければ後方の主力より支援を受ける、というかたち。

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榛名防衛備忘録:基幹部隊をみる① 偵察中隊、陸上自衛隊草創期の管区隊と混成団

2015-01-13 23:32:19 | 防衛・安全保障
◆偵察中隊:人員156名の機械化混成部隊
 自衛隊の将来を考える上での基幹部隊の在り方について、今回から数回に分け考えてみる事としました、自衛隊草創期の偵察中隊、現在の偵察隊の概要について今回から数回観てゆきましょう。

 陸上自衛隊、将来戦闘を如何に対応させるかという視点、北大路機関では昨年度末から今年度初頭にかけての特集におきまして、装甲機動旅団と航空機動旅団を基幹とする一万名規模の広域師団という必要性を提示してまいりましたが、この基幹部隊についてを考える際に幾つかの参考点を。

 偵察中隊、中隊で現在の偵察隊とは少々編成が異なり、そして詳しくは後述しますが大きな部分で異なる編成ですが、今回は陸上自衛隊が警察予備隊と保安隊を経て創設された草創期の陸上自衛隊、その基幹部隊である管区隊と混成団に配属されていた偵察部隊について、見てみましょう。

 偵察中隊、これは現在の師団にあたる管区隊や混成団の情報収集部隊として位置づけられたものです。混成団、と言いますと今日的には2000名規模の小規模部隊を想定されるかもしれませんは、草創期の普通科連隊は3000名規模で隷下に普通科大隊と戦車中隊までもを有していました。

 普通科連隊隷下には4個普通科大隊と戦車中隊に重迫撃砲中隊と管理中隊から衛生中隊まで、大所帯でしたが、師団の増勢にたいし、舞台の増勢に対応する水準での人員増勢が認められなかったこともあり、割り込むという形にて縮小されてゆくこととなります。

 もともと陸上自衛隊は30万規模の体制までの拡大を想定していたものの、実際には人員をそのままに部隊数のみを拡大する方法が採られたため、規模は縮小してゆき、戦車中隊は普通科連隊ごとに中隊を分散させるのではなく戦車大隊として演習場近くの駐屯地に集約する方が妥当、として戦車大隊編制へ向かいます。

 この中で、管区隊や混成団の情報収集を担う偵察中隊は、人員156名、中隊本部、三個偵察小隊、を基幹とする編成をとりました。現在は偵察隊編成となり、隊本部とその隷下に三個斥候小隊と電子偵察小隊を置く、という編制をとっています。基幹編成は、共通点がありますが偵察隊と異なり偵察中隊は火力面が比較的充実していました。

 装備面から偵察中隊を見ますと、ジープ28両、中型トラック2両、2t半トラック3両、M-3半装軌装甲車4両、M-24軽戦車7両、81mm迫撃砲4門、という体制です。そして人員は156名と。当時はまだオートバイ斥候は行われず、専らジープ、小型トラックではなく米軍供与のジープが重宝されていたもよう。

北大路機関:はるな
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榛名防衛備忘録:“高機動車”信頼される装備と難しいその後継装備について

2015-01-12 23:51:02 | 防衛・安全保障
◆四輪駆動軽装甲車案の傍論
 信頼される装備が開発され、普及しますと、それを後継として置き換える装備の開発というものは非常に難しいようです。

 高機動車とUH-1多用途ヘリコプター、自衛隊の方と話をしてみますと、この二つの装備への絶大な信頼に驚かされるところです。北大路機関では昨年度末から高機動車を置き換える装甲高機動車というべき四輪駆動装甲車というものを提唱していますが、これは聞けば聞くほどに難しい。

 高機動車、10名を野戦機動できる汎用車両ですが、これは装甲防御力を欠いてはいるものの、普通科隊員の長距離移動を楽にした立役者として、この移動をどの程度低い疲労度にて行えるかは戦闘加入の際の能力とも直結するものですが、この点を強調するところ。

 軽装甲機動車も続いて配備されていますが、やはり装甲車両の四輪式は転覆限界や整備性の問題などで一考の余地はあるようで、加えて96式装輪装甲車に至っては、整備が現実的ではなく、手に負えないというひょうげんが、実態、ということ。

 しかし、高機動車は機械化部隊として戦車に随伴する場合は不整地突破能力に限界があり、基本的に降車戦闘を競合地域において想定、地形防御を重視する伝統的な歩兵戦争を行うための車両で、機動戦を念頭に置いた装備ではありません。

 近年は従来の航空機からのナパーム攻撃を先進化させ携帯火器などからの運用が可能なサーモバリック弾や、我が国が廃止したものの周辺国のすべてが運用するクラスター弾薬など徒歩歩兵への脅威は非常に高く、装甲化しなければ生き残ることはできないのですが、なかなか高機動車にかわる装備、というものが開発されません。

 特に防衛計画の大綱は従来の地形防御に依拠した基盤的防衛力から統合機動防衛力への転換を提唱していますので、陸上戦闘は機械化が求められています。そして、第一線火力の増大と多様化は、生存に装甲車両が必要であると共に、地形防御に依拠する場合でも脅威対象が運動戦を指向する以上、装備体系がこれに対応できる防御力、掩体に秘匿した装甲車を防塁や火力拠点として、塹壕の交通壕にあたる機動力を徒歩機動から装甲車両による機動への転換を行うなど、施策は必要になるでしょう。

 すると、必要な装甲車両は相応の高い整備性と軽量で安価ながら十分な防御力と機動力が求められるわけで、これら装備についても信頼性を得るには相応の時間と実際の実用性が必要となります。今年度末も昨年度末同様の特集を予定していますが、傍論として高機動車の後継は高機動車の使いやすさの後継とならなければならない、という視点、重要ですね。

北大路機関:はるな
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