北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

沖縄本島南西海域に5月6日出現した中国艦隊情報 五隻が南西諸島沖を抜け太平洋へ進出

2012-05-09 23:06:44 | 防衛・安全保障
◆揚陸艦崑崙山、旅洋Ⅰ型2隻、江凱Ⅱ型2隻
中国艦隊が6日日曜日に沖縄近海に出現していたことが防衛省発表により判明しました。特に艦隊編成に特異な部分がありますのでこちらをみてみましょう。
Nimg_1458 5月6日0600時頃、沖縄本島南西650kmの海域において海上自衛隊第五航空群のP-3C哨戒機が中国大陸方面から太平洋へ航行する中国艦隊五隻を発見しました。今回確認された水上戦闘艦は、旅洋Ⅰ型ミサイル駆逐艦広州(168Guangzhou)、同型ミサイル駆逐艦武漢(169Wuhan)、江凱Ⅱ型フリゲイト巣湖(568Chaohu)、同型フリゲイト玉林(569Yulin)、そして揚陸艦として崑崙山型ドック型揚陸艦崑崙山(998Kunlunshan)の五隻です。 海上自衛隊は今回の五隻を警戒追尾したところ、この崑崙山を中心に航空機運用や艦隊行動訓練を行っていたとのことです。詳細は以下に掲載しますが、水上戦闘艦四隻は共に艦隊防空用艦対空ミサイルを搭載しており、特に二隻の駆逐艦はミサイル駆逐艦です。艦隊防空艦御席を伴い、航空機運用能力を一定の水準で有するドック型揚陸艦と共に行動を行い訓練を実施していたことは、先日五回目の公試を実施した旧ソ連製中古空母の動向からなにか類推してしまうところ。
Nimg_1648 旅洋Ⅰ型ミサイル駆逐艦は、中国海軍が2004年に初めて国産化した防空駆逐艦で、1999年よりロシア海軍から取得した中古のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦に次いで導入された艦隊防空駆逐艦となります。満載排水量は7000tで同型艦は2隻、この二隻すべてが今回艦隊行動を取っていたことになります。搭載する艦対空ミサイルはSA-N-12で射程は35km、同時期に旅洋Ⅱ型ミサイル駆逐艦が建造され、こちらは346型レーダーを艦橋四面に張り付けイージスを模倣したものとよばれ、射程100kmのHHQ-9を搭載しています。中国海軍は翌2005年からソブレメンヌイ級2隻を増強し、2006年より旅州型ミサイル駆逐艦2隻を建造していますが、その後の艦隊防空駆逐艦に増強の動きはありませんでしたが、今年に入り旅洋Ⅱ型ミサイル駆逐艦6隻の建造が発表されています。一説には、回転式レーダーの四倍の数の346型を搭載する同型の建造費は中国海軍にも重荷だったとされていますが、建造が再開されています。
Nimg_9614 江凱Ⅱ型フリゲイトは、旧式化した中国海軍最初の外洋型駆逐艦旅大級の旧式化を補うものとして2008年から2010年にかけ10隻が建造された満載排水量3900tのフリゲイトで、2隻が建造された江凱Ⅰ型の改良型、中国海軍の3000~4000t台フリゲイトとして近代化の中枢を担うことが期待されている艦型です。特色は艦対空用短SAMに垂直発射方式を採用したことで、SA-N-12を中国がコピーしたHQ-16を搭載し、艦隊防空を意識した設計となっており、同時に大出力で遠距離目標を捜索するフレガートMAE-5レーダーを搭載しています。今年中に更に2隻が就役し、同型艦は12隻体制になるとみられています。中国海軍では旧ソ連のコトリン級を模倣した旅大型ののちに、同型艦を1~2隻と一個駆逐隊程度建造したのち新型艦へ建造を移行する、試行錯誤の建造を進めてきましたが、江凱Ⅱ型の量産は、漸く中国海軍としても近代水上戦闘艦の方向性が定まった、と言えるやもしれません。
Nimg_9535 崑崙山型揚陸艦は玉昭方もと呼ばれ、中国海軍が初めて建造したドック型揚陸艦で、2007年に一番艦が就役、この一番艦崑崙山が今回展開したようです。二番艦井崗山は昨年就役したとされ、更にもう一隻が建造されていると伝えられています。このほか中国海軍はフランス海軍のミストラル級強襲揚陸艦に範を採った新型強襲揚陸艦を計画中で、これまでは数頼みの戦車揚陸艦により着上陸を想定していた一方、今後は近代化に進むこととなるのでしょう。崑崙山型は満載排水量17600t、最大搭載量60tで主力戦車の搭載が可能なエアクッション揚陸艇四隻を搭載するほかZ-8型多用途ヘリコプター2機を上部構造物内の格納庫に搭載し、立体上陸任務への対応が可能となっています。特に指揮能力と長期任務への対応能力が高いことからソマリア沖海賊警戒任務へ派遣され、エアクッション揚陸艇を哨戒艇として運用、その母艦としても使用されました。先日大隅海峡を通峡した艦隊と共に中国海軍の太平洋方面での訓練活性化には注意する必要があり、特に小笠原諸島と南西諸島にマリアナ諸島を囲む海域の防衛体制は、より根本的な面からも再構築の検討をそろそろ始める必要はないでしょうか。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする