◆国境地域は現在も緊張
陸上自衛隊は現在南スーダンにおいてPKO任務に展開中ですが、南スーダンのスーダン侵攻に伴う国境紛争により、現在の第一次派遣部隊に続く第二次派遣部隊の派遣が現在検討となっています。
この南スーダンPKOですが、田中防衛大臣は南スーダンPKOの第二次派遣部隊派遣について、特に南スーダンとスーダン国境において源氏緊張状態が継続していることから、防衛省より調査団を国境地域の情報収集へ派遣し、第二次派遣部隊の可否について判断することとなりました。
この緊張は、南スーダンのスーダンからの独立に際し、南部油田地帯を以て独立する南スーダンに対し、スーダン側は石油輸出に必要なパイプラインを保有しているため、双方とも緊張状態を抱える状態となり、スーダン軍は中国からの援助で導入した比較的新しい中国製兵器を装備しているため、国境地帯での小規模な緊張が即大規模紛争へ展開する危険性をはらんでいたわけです。
南スーダンとスーダンの国境紛争は、国境のスーダン側にあるヘグリグ油田へ南スーダン軍が4月10日攻撃前進を実施、この報復として12日に報復として南スーダンのベンティヴ市近郊の橋梁を空爆、続いて18日にスーダン政府は南スーダン首都ジュバを目標として侵攻を宣言しました。
南スーダンの挑発がスーダン軍の反撃を招いた状況ですが、これに対し22日に南スーダン軍はヘグリグ油田からの撤収をおこなったものの、スーダン軍の航空攻撃は継続、現在国連安保理が停戦を呼びかけている段階にあります。状況は沈静化しているものの散発的な航空攻撃が行われ、完全に戦闘は継続しているということ。
第二次派遣部隊は、このまま派遣任務を継続する場合、今月下旬にも派遣の可否を判断する必要があり、第二次派遣部隊300名は現在派遣準備という状況にありますが、活動地域へ国境の緊張状態が波及する場合、自衛隊の任務は道路整備など建設工兵任務となるため、任務継続はできません。
第一次派遣部隊先遣隊が現地へ到着したのは2月22日で、その後の国境地域での緊張は高まる傾向にありますが、田中防衛大臣の記者会見での発言では、防衛省として現時点では南スーダンPKOを行う前提用件は崩れていないとの理解の上行動しているとのことで、現時点の状況で推移した場合の派遣は継続されるとの見解を示したのでしょう。
しかし、4月7日には南スーダン軍とスーダン軍との間で小規模な戦闘が報じられ、この時点で自衛隊の活動地域まで500kmを隔てていると報じられていましたが、同日当方は相馬原駐屯地祭、この群馬県榛東村と京都市は750kmの距離を隔てており、この一点を考えた場合、500kmの距離はそこまで大きくないという印象を抱いたことを思い出しました。
クロアチアが1995年に実施したクライナ地方電撃戦両作戦“嵐”では、国境と自衛隊が展開するジュヴァと同等の距離を電撃制圧した事例があります。国境地帯での紛争は、500kmという距離を隔てているとはいえ、スーダン軍には中国製99G式戦車をライセンス生産し保有しているため、機動打撃を行われた場合決して距離は充分ではありません。
さて、問題なのは、国境地帯の産油地域の帰属問題という永続的な問題が棚上げされ問題が推移している背景の下、今回の武力紛争が生起しているということで、偶発的なものではなく国境が確定され、永続的合意となるまでその緊張は顕著か潜在かの分水嶺を行き来することとなり、自衛隊の活動においても十分配慮が必要となります。
特に政府は自衛隊の南スーダン派遣を数年間にわたり継続するという方針を示しており、加えて装備品は軽装甲機動車などを除けば非常に軽装備のままとなっています。今後どのように点mン解するのか、情報収集を常に高め、撤退か火力戦闘部隊増強かを含め議論してゆく必要があるでしょう。
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