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【京都幕間旅情】建仁寺,最初禅寺は神の実在性が真剣に議論された中世に世界の終焉へ立ち向かった栄西の寺院

2024-05-15 20:00:05 | 写真
■建仁寺拝観日記
 新緑の季節に建仁寺を拝観に向かいますと境内には茶葉の摘み取りお断りという張り紙とともに新茶の茶葉が迎えてくれた。もうそんな季節なのだ。

 建仁寺、京都の祇園から指呼の距離にこれほどの伽藍が、と思わせる寺院です。花見小路の先にその山門が佇んでいる、とこう説明しますと完全な歓楽街ということですからさぞや混雑するだろうとは思われるところなのですけれども不思議とそれ程混雑はない。

 東山の清水寺なんかは四月の行楽日和にゆきました方の凄かったという話がありましたので、そう八坂の塔や高台寺の界隈までは散策に歩み伸ばしますが、ふとかばん屋さんとか甘味処を除いたのちに混雑と知っているところまではいかない、と引き返すところで。

 禅寺、しかしここ建仁寺は意外な程に人の入りは少なく、いやそれでも閑散という寂しさはなくただ知られていないかという程度のある程度の賑わいはあるものの、この静寂さは不思議だなあとおもう。だからといって建仁寺、素通りできないほどの歴史は湛えていて。

 八坂の塔として親しまれ、京都を描くドラマならば嗚呼ここか、もしくは、此処を抑えておけば間違いないだろうと情景の一つとして撮影される五重塔が、調べてみると建仁寺の塔頭寺院、というと驚かれるのではないだろうか、塔頭寺院をみて本山を観ていない訳で。

 最初禅寺、こうも称されるのが建仁寺で、正確には禅寺は大陸から日本に持ち込まれた際に最初に博多にて小さな庵を構えていますから最初の禅寺というのは一考の余地ある表現なのですが、それでも京都最古の禅寺であり、日本で最も初期の禅寺であるのは確かです。

 禅寺、禅宗、新しい仏教なのですが、この歴史を紐解きますと、これも一つの日本の転換点に持ち込まれた概念、哲学、といえるものでして、特に平安朝末期から鎌倉時代初期にかけての日本国内の混乱と不幸か偶然か、哲学上の分岐点が重なった時代に伝わっている。

 欧州などでは神の実在性などが真剣に議論され、きょうかいの分断が民心の分断に繋がり、此処に生まれた権力や哲学と信仰に裏打ちされた民意の空白に乗じた変動から利益を享受、いや毟り取ろうとする勢力の介在が意図して制御不能の騒擾、大戦争さえ生んだ歴史が。

 仏の実在性、日本の場合は信仰の多様性と土着宗教や信仰とともに国家神道というべき原型と伝来した仏教とは折り合っていっけん混沌のような、しかしそれでいて偶然の調和を生んでいる事が、大きな分断を避け、もしくは調和を、無理ならば離隔で共存してきた。

 信仰は科学が未発達な、いや、時間や生命という分野では素粒子学や原子物理学との角度から切り込めばよいかさえ分からぬほどの現状ですから実は科学は判らない事のほうがまだ多い事を率直に認めなければ、今でも安易な新興宗教に簒奪されかねないのですが、ね。

 科学でさえもわからない事があるという事に踏み込めない程にまだ科学と民俗学の境界線が曖昧模糊とした時代ほど信仰の有する重要性は高かった、それが中世といえるようにも。もっとも、中世以前は人が冬を超えるだけで精一杯という時代ではそれさえなかったか。

 禅宗が日本に持ち込まれた時代は、実は真剣に“世界の終焉”というものが考えられていたものでした。もちろんいまの30歳代40歳代の方には1999年のノストラダムス、的な話題はありましたけれども、科学と神秘学の境界が曖昧な時代、終焉は現実の論点でした。

 世界の終焉、といいますと大袈裟に思えるかもしれませんが末法思想という、仏教が世界から忘れ去られる事により生じる現世の遮断というものが、ちょうど平安朝末期に重なる事から、天台宗や真言宗という仏教も世界の終わりを認識していた時代であったのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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