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【京都幕間旅情】建仁寺,世界の終わりか?十二世紀は末法思想の時代に敢えて新時代の仏教を問うた明菴栄西

2024-05-15 20:20:19 | 写真
■禅宗は末法思想を超えて
 建仁寺の石庭と本坊庭園の新緑が如何にも見事であり春の到来は続く夏の到来へと進む事を確信しつつ拝観の巡行を前へ。ここは栄西さんが開いた寺院だ。

 明菴栄西、まだFateGrandOrderやドリフターズには出ていないな、と安心するのですが、実のところ日本の宗教的退廃に終止符を打ち、その宗教上の混乱が民心の混乱へと拡大する事も防いだことで日本の分断を抑止したという、一人の英雄といえる高僧なのだ。

 日本における臨済宗の開祖であり建仁寺の開山、栄西さんいついては高校日本史では、ああこのくらいを押えておけばよいのか、興禅護国論を著したということくらいまでは聞かれるか、という栄西さんですが、高校教科書でも横の歴史と繋ぐと驚くべき乱世の人です。

 末法元年、世界の終焉の始まり。末法思想はもともとひもとけばこれも仏教の変容の一つだと思う、元々仏陀が悟りを開いた際には宗教という体裁ではなく哲学のような、そういうにも悟りを開くまでの道程が司法試験や国一試験ほど明確ではないのが仏教の特性で。

 釈迦の教えが釈迦の入滅より時を経て忘れ去られ世の中が乱れる事によりこの現世を維持する事が出来なくなり世界の終焉が始まる、これが末法思想です。終末思想というのはキリスト教にもありましたが、これがいつかわからず、とりあえずミレニアムを思い浮かべ。

 欧州では999年には、それこそ終末が来るとか、神の国が近づいたという昔の森総理のような発言が公然と為され、終末トレインに乗ろうにも西武鉄道開業前ということもありますので右往左往していた時代があった、聖書には999年について何も書いていないのだが。

 仏教も変容していまして、こういうのも哲学的なものを独自解釈で広めていたものですので仏教の生まれたインド亜大陸では信仰は判りやすいヒンズー教へと転換してゆく、しかしその最中に仏僧がなんとか信仰を維持しようとヒンズーの神々を仏教に取り入れたり。

 ヒンズー教の信仰の広まりと共にインドの仏教界が示した一つの方向性が末法思想であり、これを示す事により信徒の維持を考えたのだと思う、けれども仏陀の哲学をこのように曲解する事こそも末法なのかなあと2000年を経て思ったりもするのですが、さてさて。

 仏典には末法の到来が西暦何年かは書いていない、そもそも西暦で仏典は書かれていないのですがのそもそも論はさておき、こうしますと独自の解釈を行う、信じる者は救われるのだアーメン、という感じなのかもしれませんが終末が不明というのは隔靴掻痒といえる。

 末法元年、日本では仏教と仏陀について記した“周書異記”を根拠としまして釈迦入滅を紀元前949年と解釈、これは今の歴史研究から大分ずれているのですが、神武天皇よりも前にしないと今の紀元五世紀釈迦生誕説では都合がわるいのか、そこから末法を計算する。

 釈迦の入滅から計算して西暦では1052年、当時の元号からしますと永承7年あたりがそろそろ地球が終わる末法元年ではないかと計算した。末法の到来は人々に恐れられ、貴族は寄進を続け仏僧は修行に諦観が生まれ諸人挙って盛んに経塚造営が行われたという時代だ。

 末法元年、難しいのはここで地球が終わる、と明記したのではなくそろそろここから終わりが始まるというのが1052年、終わりだよこの国、とか、終わりだよこの星、とか、終わりだよこの世界、という社会通念が、明確ではないけれども心の片隅に黒い滴を一滴、と。

 栄西さん、その大きな功績はそもそも世界が終るのではなく、仏教を最澄と空海以来の変革の無い古いままの思想哲学のままだからこそ、終わる様な末法思想が広がっていることを一種の堕落として、新しい禅宗を、持ち込むだけではない、定着させたことにあるのだ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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