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日韓GSOMIA破棄:日韓関係更に悪化,韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定破棄を正式決定

2019-08-22 20:00:05 | 国際・政治
■日米両政府の声は届かず
 日韓関係は韓国による二国間合意の破棄連続と軍事挑発とも取れる非礼を背景に悪化の一途をたどっていますが、更に懸念が。

 日韓軍事情報包括保護協定GSOMIAが韓国側の要望により破棄される事となりました。これにより日韓の新しい防衛協力の試みは2016年から2019年までという短期間で終了する事となりました。北朝鮮弾道ミサイル実験などの情報は2016年以降韓国側からの情報通知を受けていましたが、今後は在韓米軍司令部から横田基地日米調整所経由で得る事になる。

 アメリカ政府と日本政府は日韓軍事情報包括保護協定GSOMIAの継続を希望していました。これは得られる情報の価値というよりも、日本と韓国はアメリカにとり北東アジア地域における数少ない同盟国であり、特に北東アジア地域は北朝鮮の核戦力増強と中国の海洋進出、ロシアと西太平洋地域の安定という点で協調協力を強化せねばならない関係です。

 韓国政府は日本政府とアメリカ政府との要望を受け、GSOMIAの破棄ではなくGSOMIA履行停止を検討していたとの報道もありましたが、韓国国内世論の高まりを受けGSOMIA破棄という結論に至った、報道を見る限りではこうした構図です。三権分立の構造が韓国と日本を含む世界では若干異なる様で、一歩進んだ関係悪化は何処まで進むのでしょうか。

 GSOMIA破棄、韓国政府は日韓関係の悪化を受け本日臨時の国家戦略会議を招集し破棄を決定しました。日韓間には、自衛隊哨戒機への射撃管制レーダー照射や韓国国際観艦式自衛艦参加拒否、戦時徴用工問題日本民間企業資産売却司法判断や慰安婦日韓合意破棄、半導体原材料輸出管理特別優遇停止、日韓航空協定違反国際線路線閉鎖等の問題があります。

 日韓防衛協力、その具体化は1998年に実施された日韓共同救難訓練まで遡るのですが、言い換えれば日本は憲法上の制約から同盟国アメリカ以外との二国間防衛協力に大きな制約があり、韓国側からも日本の憲法を越えてまでの防衛協力を要請する必然性は低く、韓国軍の平時指揮権は当時在韓米軍司令部に在り、防衛上は近くて遠い隣国という関係でした。

 しかし朝鮮半島有事の可能性が顕在化すると共に我が国では1993年頃、周辺事態への自衛隊対処という部分から邦人救出や難民流入と損傷艦艇や航空機の飛来に浮流機雷といった現実的影響が認識され、この検討は橋本内閣時代の日米新ガイドライン、周辺事態法整備により韓国との防衛協力が必要となり協力が模索、日韓共同救難訓練に漕ぎ付いた歴史が。

 GSOMIA破棄は防衛上の影響は無い、と分析する事は出来るでしょう、しかし政治的影響は大きい。弾道ミサイルに関する情報は在韓米軍司令部が有しており、前述の通り横田基地の航空自衛隊航空総隊司令部に日米調整所がありまして、ミサイル情報は共有する枠組みが存在します。北朝鮮と日本は地続きではなくミサイルと工作員以外脅威はありません。

 政治的影響としては、一旦破棄した軍事情報包括保護協定を再締結する端緒となる日韓関係の良好化が必要ですが自衛隊哨戒機への射撃管制レーダー照射や韓国国際観艦式自衛艦参加拒否、戦時徴用工問題日本民間企業資産売却司法判断や慰安婦日韓合意破棄、半導体原材料輸出管理特別優遇停止、日韓航空協定違反国際線路線閉鎖等、何れも打開策が無い。

 自衛隊哨戒機への射撃管制レーダー照射は、韓国海軍水上戦闘艦艇から海上自衛隊P-1哨戒機へのミサイル照準が行われた点で、韓国側は事実関係を否認し、我が国の画像情報始め多くの証拠提示を行った後には自衛隊機による低空飛行をCGにより発表し、このCGを証拠として批判、現在も韓国側は火器管制装置使用を認めず使用を正当化する矛盾が続く。

 韓国国際観艦式自衛艦参加拒否問題は、国際観艦式へ海上自衛隊護衛艦に自衛艦旗を下して参加を求めた事で、自衛艦旗を掲揚しない限り国際法上軍艦として視なされません。同じ要求を各国へ要求しましたが、各国は半旗や戦闘旗掲揚で韓国側を批判、韓国も軍旗を掲揚し関係が悪化すると共にこの影響で自衛隊観艦式へ韓国海軍は招待されていません。

 戦時徴用工問題日本民間企業資産売却司法判断や慰安婦日韓合意破棄については、日韓政府合意が行われた後ですので、日本の東京大空襲訴訟のように韓国政府が自国民へ賠償措置を行うように、日韓合意により漸く補償が完了した問題を更に日本側から再度補償を要求する判断は理解に苦しみ、韓国政府側が自国内で完結させない限り進展は無理でしょう。

 軍事情報包括保護協定、しかし実は日韓関係は冷戦時代においては細い、しかし確実な友好関係が維持されていました、それは共に陸軍士官学校出身という同期関係の繋がりです。日韓は政府間以外に懇話会や表敬訪問という形での防衛協力が陸士同期という強い絆が存在、一之会ハナフェという軍人OB団体との民間交流という定義での関係が存在していた。

 日韓の非公式の連携と友好関係、人と人との関係は有形無形を越えた大きな価値と意味合いを有します。しかし、自衛隊には既に陸士出身者は昭和の内に全て退官しており、韓国軍にも帝国陸軍士官学校や満州軍官学校といった戦前戦中の絆は存在しません、軍事情報包括保護協定はこの民間関係を二国間関係へ昇華させた点で大きな意味がありましたが。

 防衛大学校や幹部候補生学校、富士学校等への留学生受け入れは継続されており、韓国軍からの留学生も在籍しています。日韓の防衛協力はGSOMIA破棄という、ここで絶無となった訳ではなく継続されるのですが。正直日韓関係に良好な要素がありません。冷却期間の必要はありますが、冷却期間が政権交代までか、どれ程長くなるのかも想像できません。

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14 コメント

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Unknown (流線形)
2019-08-23 00:07:22
もう2,3年、状況の推移を見守りたいと思います。

ただ、この基調が続くとなると、先日申し上げた懸念が実現する日がかなり近づいたとも思えます。

後日、Turning Pointであったと指摘されるかもしれない事象の一つであることは間違いないでしょう。なぜなら、その影響が及ぶ範囲が日本だけに留まらず、米韓同盟に間違いなく及ぶし、中華人民共和国の期待を高まらせるでしょう。

米国の労力が、朝鮮半島に吸い込まれることにより、東欧が手薄になり、露の行動範囲が広まることになります。

中長期的な影響が懸念されますね。
日本国内の動きが、朝鮮半島側の動きに追随できない可能性が高まったので、懸念が実現する可能性は高まったと受け止めています。
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Unknown (軍事オタク)
2019-08-23 11:07:47
バ韓国にはへきへきですね。
もうどうしようもない国、泣きついてくるまで拒否し続けましょう。
しかし国が崩壊しそうになったら●下記の重い約束を取り付けて支援しましょう。

約束させること。

1.日韓併合は朝鮮からの要望である。
南下政策のロシアに植民地支配されることを阻止するためには絶対必要だった。
日韓併合時代は荒廃した国土にダム・鉄道・道路等のインフラ整備、大学設立など教育整備、路上で糞尿をしない等マナー教育まで日本が行い日本と同一レベルにしようとした結果大変豊かになり、字も読めるようになり近代的な生活ができて人口は2倍となった。

日本人と同じ教育と給料、強制徴用は無し、従軍慰安婦の強制は無し、従軍慰安婦は大変な高額取り。

第二次世界大戦後は
朝鮮半島に共産主義国家を樹立したいソ連と中国の罠に落ち支援を受けた金日成率いる北朝鮮軍によって国土を焦土化されたが、日本のODAや技術援助等で(当時の国家予算の半分の金額)多額の援助を受けた結果、復活して一流国になったと韓国政府が発表し、
歴史教科書にも永遠に記載する約束させる。
日韓請求権協定は未来永劫有効。日本に対して一切の請求権は無いとする。

2.竹島の返還
3.仏像の返還
4.自衛隊と仲良くすること。
※情報共有再構築・弾薬燃料糧食相互補完関係設定、軍艦の相互訪問、防衛大学校の留学生相互派遣等。共同演習
できればオーストラリア並みの防衛協力関係。
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Unknown (パラベラム9)
2019-08-23 16:59:26
先日19日から予備自衛官の訓練過程に参加していました。
今日で第1段階のAタイプ最終日でしたが、今回教育を担当してくださった教育中隊の隊長が修了式の訓話でこの件を取り上げて
「日本周辺の安全保障環境は厳しさを増している」という趣旨のことをおっしゃっていました。
問題の深刻さがわかります。
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Unknown (流線形)
2019-08-23 17:32:22
軍事オタク様

気持ちは解るのですが、過去にFocusするよりも、将来、何を得るのかという方に力点を置くと良いのかなと思います。

そして、相手の問題以前に、自国の長年にわたる国民的懸案を解決せざるを得ない状況が見えてきました。
次に起こるであろう朝鮮動乱には、日本も主体的に関与せざるを得ない状況に置かれるでしょう。
1950年当時は、そもそも占領下にあり、事実上、国家としての主権が、占領軍の前では無かったわけです。
それに対し、今の日本は、自立し、国家としての主権を行使している状況にあります。
他国へ自国の判断の責任を負わせる事は出来ません。国民が、自ら背負うのです。
ただ、その覚悟が無いままに、判断を迫られる状況に陥っていく可能性が高いと危惧しています。

時間が足らない…。
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Unknown (人民の目)
2019-08-24 00:31:52
“軍事オタク”のような上から目線史観は、典型的日本人のあんぽんたんを表しているでしょう。
なぜアジアの隣国から日本が信頼を得られないのか?
歴史の清算とはどのようになされるのか?
この問いへの真摯な答えがわからないのでしょう。
日本がアジア侵略に狂奔していた時、インドのガンジーは「日本人への手紙」と題した寄稿文で痛烈に日本を批判しています。
日本がアジアを解放しようと主張しながら、ナチスと同盟を結ぶ欺瞞を痛烈に皮肉しました。
日本人こそがアジアを解体させる張本人であると。

今こそこのガンジーの言葉に耳を傾け、日本人が過去の歴史に向き合うことを私は願わずにいられません。
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Unknown (ねこまんま)
2019-08-25 05:11:57
総理大臣のお膝元に、河豚料理の美味しい春帆楼というお店があります。 江戸時代まで海を渡る為に馬の関所があり、馬関(ばかん)と呼ばれていました。
この場所で条約を結んだ頃に似てきましたね。
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Unknown (流線形)
2019-08-25 11:20:51
おお、春帆楼ですか!?
お座敷の正面一杯に広がる関門海峡の眺めは良いですよ!
お座敷で上座に座ると、関門海峡が視界にスーッと入ってくるんです。
大切に李鴻章の書も掛けてあるね。

下関でフグ料理を食べるのであれば、春帆楼に拘る必要は有りませんが…。

個人的には、小倉の銀天街にあるお寿司屋さんで、関サバを頂いた方がコストパフォーマンスは高いと思います。
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Unknown (流線形)
2019-08-25 16:22:28
連投申し訳なし。
人民の目様のコメントを見ていて感じたことがあるので、ちょっと一言。

8/17付けのSydney Morning Heraldというオーストラリアの新聞が次の様な記事を挙げています。
”Anti-Hong Kong democracy protest in Sydney marred by ugly confrontations”
簡単に要約すると、シドニーにおいて、香港のデモで起きているデモ対して北京の意向を代弁するデモが開催されたというものです。
オーストラリア最大の都市であるシドニーにおいて北京の意向を代弁するデモが開かれたのです。最大でも3,000人ほどだったようですが。
言論の自由、表現の自由が認められた国で、それを逆手にとって、言論の自由、表現の自由を否定する見解、立場を擁護するデモが開かれたことについてショックがあったようですね。

まさに人民の目様と同様の動きなわけです。

自由を利用して、その自由を否定する見解、立場を広げ、自由を破壊する動き、それこそ、ナチスが採った行動ですね。

てなわけで、ボン基本法(”法”といいつつ、憲法と同様の規定。統一前に制定されたので、暫定的な”法”として制定された。統一後に憲法を採択する前提だったが、未だに憲法は未制定。)では、”戦う民主主義”が採用された訳ですが、これは、ナチスへの反省だったんですよね。

ただ、何をもって自由と民主主義を破壊する行動か定義が難しく、自由を制約する要因にもなるので、抑制的に適用されているという実態がありますね。

さあ、これから、自由主義、民主主義の国々は、中華人民共和国の影響力が増し、移民により”元”中華人民共和国民増えるに従って、これらの価値観を否定する動きが内側から強まるでしょう。

そこに自由主義、民主主義が、全体主義の前に破壊される可能性があるでしょうね。
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Unknown (Unknown)
2019-08-26 11:38:02
韓国メディアは国内の不正疑惑で大騒ぎだそうで
こっちの方が、よっぽど大問題なのにね
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Unknown (ねこまんま)
2019-08-26 22:28:17
流線形様へ
昔、社員旅行の代わりに食べに行く予定が異動で駄目になり、リベンジと思って定期観光バスで訪れました。
庭から見る海峡も素晴らしく、河豚の話を聞きながら敷地内にある日清講和記念館に案内されました。残念です。

ちなみに講和で隣国は独立国となり関係が生まれます。 明治維新まで振り返る事の意味はありません。
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