北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【21】元日能登半島地震発生と防衛力整備(2012-10-08)

2024-01-14 20:24:22 | 海上自衛隊 催事
■イエメンから能登半島
 自衛隊観艦式特集の前回に危惧していましたイエメン沖有事は一昨日現実のものとなりましたが前回はまったく想定していなかった事態が起こりました。

 自衛隊観艦式の写真を紹介しつつ結局は時事の話題を、松田優作さんが探偵物語の次回予告に押し込んだように列挙しているのがこの日曜特集観艦式、なのですけれども、今年最初の日曜特集としまして、どうしても外す事が出来ないのは元日の能登半島地震でした。

 舞鶴の連中は凄いなあ、と妙に感心したのは津波警報が福井県と兵庫県に発令されているものの、福井県と兵庫県に挟まれた京都府日本海側は何故か津波注意報でして、角度から丹後半島のあたりは兵庫県異常に直撃を受けそうなものなのですが大丈夫かなと危惧した。

 丹後半島。この地域にはまだ被害はない。こんな字幕付きで紹介されたのは1973年の映画日本沈没その劇中でしたが、一方で懸念したのは舞鶴基地などは、湾の奥にあるとはいえ潮位変化は大丈夫なのかという、海上自衛隊基地故の心配でしたが、現実は真逆という。

 舞鶴基地は災害派遣準備を進めていたのですね、わたしなのは緊急出航し津波を避ける必要がないのかとか、舞鶴航空基地の機体を空中退避させるか艦上に載せてしまう必要はないのか、と考えたのですが津波注意報ということで退避させず災害派遣準備を進めていた。

 警備隊なんかはSB-25を湾口あたりに展開させて潮位変化を監視していたのでしょうか、地形から湾口に入った津波が基地に到達するまで、なにしろ日露戦争でロシア軍の攻撃を想定して守りを固めた湾の奥の基地なのですから、緊急退避時間はあると想定したのか。

 災害派遣を優先した、この様子は津波注意報、能登半島などは大津波警報、発令している最中に災害派遣準備を進める様子が、舞鶴地方隊SNSなどに掲載されています。有事即応というが、正月準備の門松を取っ払っての即応性の高さにはびっくりだの一言につきる。

 情報収集の難しさは、しかし痛感しました。石川県の馳知事は上京中で地震発生と共に首相官邸入りし災害派遣への情報収集を行ったといいます、この点で出来うることはすべてやっているというところなのでしょうが、情報収集の航空機がかなり減っている現状です。

 RF-4戦術偵察機、これも耐用年数限界という事は理解しているのですが、特にRF-4EではなくRF-4EJのほうのポッド式偵察装置を、これはフィルム式で使い難いものだという事は認識しているのですが、新型にせずF-2あたりに搭載することはできなかったか、と。

 RF-2を今更三菱重工に生産ライン再開させてという仰々しい話ではなく、戦術偵察ではなく、例えば教育訓練部隊としてF-2Bを運用している松島第4航空団のF-2B,東日本大震災では津波被害を受けた基地だ、ここに偵察ポッドを搭載する運用は出来なかったのか。

 F-2の生産数削減が在ったのは2000年代の石破長官時代ですから今更ではあるのですが、もっとこう当時の時点でRF-2のような発想で、当時検討されたRF-15の後の計画失敗などは予見できなかったのは仕方ないにしても、なにかこう情報軽視の流れは無かったか。

 OH-6D観測ヘリコプターについても、OH-1観測ヘリコプターの調達中断を受けOHそのものが全廃の流れにあり180機もあったOH-6が後継機無くして全廃となったのは、なにか自身が有ればすぐ離陸した情報収集機だけに、これも問題ではなかったか、と思うのだ。

 H-145M多用途ヘリコプター、ドイツ連邦軍が先日PAH-2戦闘ヘリコプターの後継に金魚のような愛くるしいH-145Mを大量調達する決定を行いましたが、自衛隊の陳腐化というならばOH-6とAH-1の後継にBK-117を同数の270機ほど入れていたら、こう痛感する。

 ヘリコプターのついてはもう一つ、詳しそうな人のヘリコプターの不足を被災地への空輸そのものの事と誤解している方が多いようですが、申し訳ないがあの地形はヘリコプターの発着が地上の二次被害を誘発する、現場にないのではなく適した機体が日本にないのだ。

 被災地にヘリコプターが足りないのではなく自衛隊の方にヘリコプターが足りない、どうも今回の能登半島地震に際してそごうが在ったように思うのは、ある程度自衛隊を見てきた人たちと、今テレビで見てSNSで持論を示す人の同じ言葉と違う意味、同床異夢です。

 自衛隊をある程度観てきた人たちの印象としては、自衛隊行事に自衛隊ヘリコプターの参加が年々減っていて、その上で国有資産台帳や防衛予算等を併せてみている方には、ヘリコプターの調達が鈍っている故に機数が減勢しているという事を知っているわけですが。

 被災地にヘリコプターが足りないと主張している方は、単に政権や政治を叩きたい方が相当数混じっているといいますか、ヘリコプターを増やすには自衛隊の予算を増やさなければならないという認識を持っていない方も交じっているのかな、と印象を受けるのです。

 A-129なんかをイタリアでは偵察戦闘ヘリコプター、と定義していますが、データリンク能力が高い専用の戦闘ヘリコプターに、スタブウイング部分にヘリテレ中継装置を搭載し映像情報収集機として運用、多用途機は輸送に重点化するなど、なにか考えねばならない。

 海上輸送群。今ないものを無い物ねだりする事は出来ないのですが2027年には陸上自衛隊に海上輸送群が新編されます、LST戦車揚陸艦型の輸送船を複数保有するようで、その任務は南西防衛、なのですが、これが間に合っていれば、能登半島への物資搬送に役立った。

 海面隆起という、場所によっては地形が4mも隆起したといいますので、今回海上輸送は困難を極めまして、輸送艦おおすみ搭載LCACエアクッション揚陸艇が活躍した、既に退役した輸送艦のと、など有れば役だったのかもしれないが、両用戦艦艇が全くたりていない。

 輸送艦は8隻必要だ、という“もう一つの新しい88艦隊”という提案を東日本大震災の少し後に特集で掲載した事を思い出しますが、巨大災害への対処能力整備というものをもう少し重点化してかつ具体的に示したうえで、非軍事作戦能力を構築すべきではないのか。

 MOOTW非軍事作戦能力という、軍隊の戦争以外の軍事作戦という明確な任務区分が有るのですが、先ず政治が、有事、戦争以外の有事なので災害、こうした徐強で自衛隊に求める能力、どの程度の物資を度の距離度の時間で運ぶかなどを平時の内に研究すべきです。

 オペレーションリサーチにより、それを行うには今の法律でどこ其処に限界があり、かつ艦艇と航空機がこれだけ不足する、というような具体的な数字を示して、その上で必要な装備を積み増すか、被災地に我慢を強いる前段階としての周知を行うか、必要だとおもう。

 非常事態法制にもかかわるので憲法改正が必要だ、と反論するならば憲法改正を急がなければなるまい、何のための憲法と人権なのかという事になるのだから。超法規を念頭とした例外状態を有事法制として盛り込んで付随的違憲審査権発動まで運用するとしてもいい。

 例外状態を是認した法整備など立憲主義に反するというならばそれこそ憲法改正を急ぐべきか、国の在り方として人命以上に重要なものに憲法を挙げている国はどうなのかという事になる。震災は次必ず来るし、南海トラフ地震という規格外の脅威もあるのですからね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都幕間旅情】榛名さんの... | トップ | 【G3X撮影速報】第10師団創設... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

海上自衛隊 催事」カテゴリの最新記事