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航空防衛作戦部隊論(第四五回):航空防衛力、長期的な防衛任務へC-2輸送機の戦域間輸送

2016-12-26 20:32:44 | 防衛・安全保障
■C-2輸送機の戦域間輸送
 C-2輸送機はその長大な航続距離から、従来の国内での戦術輸送の枠を超え、アメリカ本土から航空部隊が必要とする予備部品や弾薬などの消耗物資の緊急供与を受ける際の輸送手段に用いられる、こうした視点を示しました。

 中国海軍の空母遼寧が初の西太平洋地域での艦隊行動を実施、先週実施された初の空母からの艦載機による実弾演習の実施に続き、ミサイル駆逐艦三隻を随伴し西太平洋に進出、中国の中古空母ワリャーグ取得以来懸念された日本列島太平洋側からの空母艦載機による軍事示威という懸念が着々と顕在化しつつあります、今後この脅威が更に現実化するのであれば、更に多方面からの脅威への対処が必要となるでしょう。

 C-2,非常に長大な航続距離を有しますので、アメリカ本土までフェリー航続距離で一度に飛行でき、満載状態でもホノルルなど一カ所を経由するだけで飛行可能、弾薬などは容積の割には重量がありませんので満載でなければ西海岸からであれば無着陸で飛行できる能力があります。戦闘機が一回飛行する場合の莫大な物資消費ですが、燃料が占める部分は大きく、航空燃料であれば日本国内に膨大な部品があります、しかし弾薬備蓄と予備部品モジュールの備蓄が必ずしも十分ではありませんので、この空輸体制を確保する事には意義がある訳です。

 アメリカとの後方連絡線構築を考えますとC-2輸送機の必要数は確実におおきく、現状の装備計画について再考の必要、特に部隊数の増強という必要性が出てきます。一方、戦闘機を米空軍と同型としたものを装備する事で、例えば国内に最終組み立て施設を有するF-35戦闘機などは、有事の際に胴体部分などを分割しアメリカ本土から調達し日本国内で組み立てるなどの施策、アメリカ空軍の運用機体をそのまま転用する。

 単純に戦闘機を増勢するのではなく稼働率を高める、これには予備部品の充実や運用基盤の強化、運用基地の複合化や基地機能強化と予備発着施設の充実などが施策としてあることをこれまで本特集で提示しましたし、予備の操縦要員を充分確保する事が出来れば、これは航空教育体系の強化も必要とする措置ですが、単純に戦闘機を強化するよりも重厚な防衛力を構築可能です。

 この方法は1973年の第四次中東戦争においてソ連軍の物資支援を受け攻撃を加える中東諸国の前に劣勢となりつつあったイスラエル空軍へアメリカ空軍が運用しているF-4戦闘機をそのまま国籍表記のみ切り替えて供与した事例がありました。F-35のみであればそのまま搭乗員を展開させ本土へフェリーさせるという選択肢はありますが、その際に必要となる整備治具や機材などの空輸にはC-2輸送機の支援が必要となります。

 従来の日本本土防空を大陸方面の軍事圧力に対抗して実施する場合、日本国内の航空自衛隊弾薬備蓄、在日米軍との弾薬相互供与や教導防空作戦の展開によりかなりの部分を対処する事が出来ましたが2010年代に入り、日本本土を戦闘行動半径に含める戦闘機や戦闘爆撃機の増大は経空脅威の見積もりを根本から改める事を強いました、更に日本本土を射程に収める巡航ミサイル脅威が1000発単位で浮上しており、安全な後方が無い。

 日本国内の航空作戦物資では、例えば大陸内陸部の敵航空拠点無力化を含めた航空撃滅戦を展開させなければ、早々に我が方の防空作戦能力が払底する事を意味します。航空作戦を長期的に展開すれば、弾薬や予備部品も消耗しますが、航空機そのものも消耗します。現時点では戦闘機定数の厳格な上限の下で戦闘機定数を画定していますが、その上、本土へのミサイル攻撃や航空攻撃が展開される場合には基地施設そのものの消耗も意識しなければなりません。

 これを踏まえて初動において航空部隊を分散させる臨時分屯基地案を提示しているのですけれども、長期化すれば航空整備施設や整備補給施設、港湾設備や物資輸送の基点としての鉄道拠点や主要高速道路に橋梁等も標的となる事でしょう。安全係数を十分取る為に、東日本大震災や熊本地震ではこれら交通基点の復旧に多くの時間を必要としたことを忘れてはなりません。こうした国内施設の継戦能力の限界、相手の航空戦力に対する規模の格差によって事前備蓄だけでは限界がある為、同盟国からの物資供給をこうした空輸体制に依拠し、長期の航空作戦に対応させる、という方策も十分検討されるべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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