北大路機関

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陸上防衛作戦部隊論(第六〇回):航空機動旅団、戦車大隊を置き換える機動戦闘車部隊案

2016-12-27 21:19:33 | 防衛・安全保障
■戦車大隊代替の機動戦闘車
 機動戦闘車機動砲大隊編成試案について前回に引き続き。二個中隊27両編成、機動砲大隊、可能であれば本部車両を含め30両編成とする。

 現在の戦車を持たない第12旅団や第15旅団に、戦車中隊しか持たない第13旅団や第14旅団など自衛隊旅団における戦車中隊の規模と比べますと戦車と機動戦闘車の違いとは言えかなり大型の編成ではありますが、対戦車ヘリコプターや戦闘ヘリコプターを装備する場合でも直掩火力の有無は近接戦闘能力の冗長性を左右してしまいますし、拘束部隊や前衛部隊でもこの種の車両の有無が、旅団だけで独立して作戦を行えるのかが、左右されかねません。

 それでは本題に。大隊は、各中隊から3両編成の小隊を各三個普通科連隊へ派遣します。機動戦闘車は集中運用を行うという視点、戦車ではなく機動戦闘車であり、戦車戦闘、相手の戦車砲弾が砲塔に直撃するような戦闘に用いた場合は確実にその薄い装甲を貫徹される事となりますので、極力火力支援に重点を置き避けられない場合に対戦車戦闘を展開する、という方式を採ります。

 故に中隊戦闘群へ各3両の配属を受けられることを意味します。中隊戦闘群では、中隊長の手元に直接火力戦闘を展開する手段が付与されますので、正面突破を含め必要な打撃力を保持できると共に、保有する中距離多目的誘導弾や軽対戦車誘導弾に合わせ必要な対戦車火力網を構成する事も可能です。ただ、機動戦闘車の責任交戦距離は2000m程度まで、これ以上の距離となりますと留意点が生じるでしょう。

 機動戦闘車の主砲は低圧砲、この主砲の初速は富士総合火力演習に機動戦闘車が実弾射撃へ参加し、射撃から戦車標的へ命中までの時間を計測し計算するまで、低圧砲の初速は不明なのですが、APFSDS弾の高初速を維持できる限界を下回ってしまうのではないか、ということです。直接照準による戦闘を展開する機動戦闘車は、射程の面では8kmという射程を有する中距離多目的誘導弾を下回るものではありますが、対戦車誘導弾は戦車砲弾と比較し制約点が多い事を忘れてはなりません。

 対戦車ミサイルは使い方次第では強力ですが、森林地帯や市街地などの錯綜地形ではその誘導翼が梢や電線に接触破損し誘導を維持できない可能性や近接信管が目標以前で作動し必要な威力を目標に対し与える事が出来ない可能性があり、この為にどうしても運用上の制約が大きくなります。この点機動戦闘車は即座に105mm砲を射撃する事で戦闘を展開できます、瞬発戦闘能力はこちらの方が高い。

 瞬発交戦能力、併せて例えば01式軽対戦車誘導弾では目標の熱源を捕捉するまでの即座とはいえ一瞬の時間を必要とします、105mm砲は戦闘照準2000mで即座に発砲でき、機先を制する事も出来るでしょう。加えて、例えば装甲車両にでも搭載しない限り中距離多目的誘導弾は敵砲兵の曳火射撃などに対し発射装置の脆弱性があり掩砲所などに格納する必要がでてきます、戦車はミサイル攻撃などを考慮し、可能ならば掩砲所構築は望ましいですが、必須ではなく掩蔽陣地などでも代用できる。

 この掩砲所構築は施設科部隊の支援を必要としますが、そもそも航空機動旅団は機動力第一の編成であるわけですから、安易に掩砲所を多数構築する、という運用方式はとられるべきではありません、これが機動戦闘車は曳火射撃等に対して一定水準の生存性を、装甲車両であるがゆえに発揮出来ますし、何よりも直接照準戦闘を実施するという点は必然的に普通科部隊と共同行動をとります、長砲身の105mm砲を備えた機動戦闘車が中隊長の手元に3両揃うという状況は第一線要員の士気を高める事にもつながるでしょう。

 一方、機動戦闘車部隊は基本として機動戦闘車大隊となりますので、中隊単位で運用する状況、大隊単位で運用する状況、指揮官を養成する必要がでてきます。ここで、暫定的に2個中隊と大隊長と指揮官は3名いる訳ですので、三個普通科連隊へ分遣隊長を置き、9両を所管し、各普通科中隊長の指揮下へ小隊を置きつつ、必要な稼働率や整備ローテーションを組むという方式も考えられるでしょう。

 大隊長ですが、各連隊へ配置する車両を3両の小隊のみとして、これは現在の二個中隊基幹の戦車大隊を持つ師団普通科連隊の方式に近い水準ですが、21両を大隊長が所管し大隊戦闘群を構成、機動打撃に充てる、という方式も、例えば旅団が一体となって防御戦闘等を展開する場合には考えられるかもしれません。この当たり、戦車とは違いますが、機動戦闘車ならではの運用体系を模索されるべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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2 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2016-12-28 09:53:28
こんにちは~
機動戦闘車の主砲は低圧砲なのですか?
どこからの情報ですか?
本当に低圧砲なら機動戦闘車の価値は半分以下になりますね。
返信する
機動戦闘車は戦車ではなく機動砲 (はるな)
2016-12-30 22:46:23
軍事オタク 様 こんばんは

既報の通り、防衛技術シンポジウムにて陸装研の方からのお話です

機動戦闘車は戦車ではなく機動砲ですので、価値は半減しません
返信する

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